勇者襲来
「リード様、アラン様。こんなところにいらっしゃいましたか。」
そんな兄弟にもとに、魔王の側近の1人やってた。
そして、すぐさま登城するようにとの父上からの命令を伝える。
いつも魔王の呼び出し突然だ。外出していても伝書魔鳩で呼び出すのだ。
とはいえ、多忙を極める魔王の職務の合間を縫って少しでも息子たちに会おうとしているのだから、理解せねばならない。
リードはさすがに血だらけの姿で登城するわけにもいかず、カロルの返り血を離宮の中庭の池で落とし上着を着る。
魔王に謁見する際の衣装などはこの国では誰も気にしない。服にしみついた多少の血の跡ですら。
彼は先に向かったアランを追って本城へ向かうが、どうも本城の方が騒がしい。
「どうした?衛兵がいない」
リードは焦げ臭い匂いを感じ、城を見上げる。
「本城から煙が上がっている!アラン、急ぐぞっ」リードは先をのんびり歩くアランに声をかける。
「お、俺に命令するな!」
2人が本城に繋がる通路を駆け抜けると、倒れた無数の兵の遺体の中にまだ息のある兵が倒れているのを見つける。
「ど、どうした!?」
「リ、リード様、勇者が…勇者が攻めて参りました…」
死んでいる兵の装備や懐から金目の物をあさっているアランに向かいリードが叫ぶ!
「何をしてるっアラン!父上の元へ急ぐぞ!!」
「お、俺に命令するな!」
本城の中も焦げた匂いと倒れてる兵だらけだ。まずい父上が危険だ。急がねば。倒れている勇者の仲間と思われる人族を見つけとどめを刺しているアランに向かいリードが叫ぶ!
「そんなことをしている場合かっ、アラン!父上の元へ急ぐぞ!!」
「お、俺に命令するな!」
2人が魔王の後宮につづく謁見の間に踏み入れようとしたところ、
ピカッ!!
謁見の間から眩い光が解き放たれた。
その光はすぐに消え、2人が謁見の間に踏み入り周辺を見渡すと、そこには無数の兵の遺体と傷だらけの魔王が一人立っていた。
リード「父上!ご無事で!」
アラン「父上、ゆ、勇者は?」
「無事じゃ。勇者は移転の魔法でどこかに逃げた。お主ら2人の他に誰か、誰かおらぬか!」
辛うじて動ける親衛隊の1人が、謁見の間に入って来て、2人の後ろに膝をつく。
親衛隊員「はっ」
「勇者は半死半生の状態で移転した。遠くへは逃げておらん。急ぎ探し出しとどめを刺せ!」
「はっ」
親衛隊員が立ち去った後、魔王は2人に言った。
「さてリード、アラン、よくぞ参った。くだらぬ横やりが入ったが、おまえたちを呼んだのはほかでもない。来年の闇の日に次期魔王を決める。心しておけ。以上だ。」
アランが異議を唱える。
「ちょ、ちょっとお待ちください、父上。次期魔王はこんな戦えないスキルしかないリードより、私の方がふさわしいのは誰の目に見ても…」
「黙れ!これはわしの決定である。以上だ、わしも少し疲れた、下がれ。」
謁見の間を退出し離宮に戻るアランが高笑いする。
「父上も老いたのか。来年の闇の日も待たずとも、さっさと決めれば良いものを。兄上もそう思いませんか?ブワッハハハハッ」
リードは何も言い返せなかった。
せっかく襲来していただいた勇者ですが主人公と会えませんでした。
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