魔王の国へ
俺達は魔族の国に入った。
俺が知っている頃の魔族の国も略奪が娯楽兼主要産業というありさまで、わずかな農耕や狩猟以外にろくな産業がなく殺伐としていたが、それ以上に殺伐というか閑散として薄気味悪かった。
略奪はかつてより増えたはずなのにどうしてだろう?
「薄気味悪いわね。亮太、魔族の国ってこんななの?」
「ん~。前から殺伐としてた気がするけど、今は閑散としてるね。」
「ねぇねぇ。ミキ知ってる!こういう時って、魔王の四天王とかが出てくるんでしょ?
で、で、倒されると『俺を倒しても第二第三の…』とか言いながら死んでいって、他の3人が『奴は四天王最弱』とか言うんだよね。」
そんな四天王どころか一兵卒すら出てこない。
出会った魔族はみんなやせ細り、俺達を見ても見ぬふりして素通りさせたり逃げ出すのだ。
なんなら野営にちょうどいいタイミングで空き家があるんだ。直前まで魔族が住んでた気配がある空き家が。
おいおいどうなってるんだ?このままじゃ、もうすぐ魔王城だぞ?
--- そのころ、魔王城では ---
「もっと食い物持ってこい!!ブワッハハハハッ!!」
アランは人族どもから巻き上げた金品に囲まれ、まるでオークのように肥え太った体で窮屈そうに謁見の間の王座に腰かけ、やせ細った家来たちに命令していた。
「魔王様。もう城には食料はありません。」
新しく宰相になった男が魔王に返答する。
「そんなものは、適当な人族の町から奪ってくればいいのだ!!」
「魔王様。近隣の町や村には攻め込まない約束をしております。」
「なんだと!口答えするな!役立たずめ!!」と、椅子の裏に置いてあった斧を取り出し、宰相を叩き殺す。
「攻め込まない約束をしていようがかまわん!旨いものを奪ってこいい!」と、別の家来に血で染まった斧を見せながら命令し、王座に座りなおす。
「はは~」家来は弱弱しく返事する。
「役立たずどもが!」
「魔王様!大変です。何者かが攻めてきました。」
駆けつけた先ほどとは違う家来が報告する。
「勇者か?それとも人族の軍隊か?何千人、何万人だ!どこまで来てる!!」
「1人です。もう魔王城の中に侵入されています。うわっ」
魔王の家来が炎に包まれる。
そして現れた一人の妖艶なエルフ。
「な、なにやつ!」
「わたしよ!あなた達に裏切られ、殺されたアリッサよ!エルフに生まれ変わってあなたを倒しに来たわ!」
「アリッサだぁ?バカ言え。アリッサはアンデッドにならないようにリードの死骸と一緒に燃やして川に流してやったわ!ブワッハハハハッ!!」
「人の話を聞きなさい!!生まれ変わったのよ!」
「まぁいい。お前もこいつと同じようにしてやる。」とアランが宰相の死体を指さす。
「お、お父様。」
「どうした?怖気づいたか?」
「ば、バカね。こいつは自分の出世のために私を捨て駒にしたのよ。怖気づくわけないじゃない。生まれ変わって火魔法と剣術を身に着けた私と勝負しなさい。」
「ふん。いいだろう。かかってこい。」とアランは斧を持って前にでた。
アリッサがファイヤーボールを放とうと暗唱しはじめた瞬間、アランが斧を振り下ろす。
アリッサは暗唱を中断し、斧を剣で交わす。
「先手取らせてくれるんじゃないの!」
言うや否やアリッサの剣がアランを襲うが斧で交わさる。今度はアランの斧が再びアリッサを襲う。
今度は交わすことができず、剣で受け止めるアリッサ。しかし斧と剣の質量差は如何ともしがたい。
「くっ。」
「どうした、最初の威勢はどこいった?」
「そこそこやるようだが、剣術のレベルは2ってところか?」
「そ、そうよ。くっ」
「その程度で、斧術レベル3の俺に勝てるわけがないだろう。」
アランの力がじわじわとアリッサの体力を削り、弾き飛ばしたアリッサを斧で一刀両断にした。
「私は何度でも生まれ変わるわ。あなたを倒すまで…」
アリッサ、生きてました。というかエルフに生まれ変わってました。あっさりやられちゃいましたけど。
アリッサの生まれ変わり再登場はノクターン版にはありません。