決意
その日から俺達は冒険者ギルドに行き、傭兵のような依頼は避け、魔獣退治の依頼を中心にこなした。
まぁ、それも特に語ることもないほど余裕だったのだが。
そして街では一通り装備をそろえた。
「すみませ~ん。剣や槍をくださぁ~い。」
(以下略)
「すみませ~ん。魔法の杖と魔法使いのローブをくださぁ~い。」
(以下略)
「すみませ~ん。盾と鎧をくださぁ~い。」
(以下略)
そういえば、魔法使いのローブってなんか意味あるんだろうか?普通に軽装の防具付けてた方がよくない?
体のラインも見えないし。見えたほうがいいだろ?
ある日、俺達はセシリアが修道女見習いの仕事に行っている間に、セシリアの部屋でこっそり作戦会議をした。
「弟が魔王を殺して新しい魔王になったのは本当の様だ。」
「いままでと違う町を襲いだして上納金を要求しているのも本当みたいだけど、かなり小規模みたいよ。」
「軍隊が出動してるのも本当だけど、それで大規模な戦闘になったて話はなさそうだし、増税もみんなまたかって感じで反乱も小規模だったみたいだよ。」
「セシリアの様子も俺が知っているセシリアと違った。」
「それは短い間にいろいろあったからじゃない?」
「それにしても、何かおかしくないかい?」
コツコツコツ
「しっ!」
(セシリアが帰ってきた。)
(セシリアさんが帰ってきわよ。)
(セシリアさんが帰ってきたよ。)
俺たちは平静を装う。
そしてセシリアが帰ってきた。
と思ったら、ふっと倒れるセシリア。
「セシリア!」「セシリアさん!!」
俺達が駆け寄ろうとしたところに、セシリアの体からすっと何かが立ち上がり、白い光に包まれた。
「め、女神様」
「ごめんなさい。嘘をつくつもりはなかったの。ただあなたたちに目的を果たして欲しくてつい。
本当にごめんなさい。」
「な、なぜ?」
「今の魔王はMP不足の魔の精剛のせいで子供を残すことができません。
魔王が跡継ぎを残すことができなくなれば魔族は滅び、この世界のバランスは崩れてしまいます。
それはこの世界を司る女神としてはなんとしても避けねばならないのです。」
「でも、魔王を殺しても、魔族に次の魔王になる条件の魔の精剛を持った奴はもういないんじゃないか?」
「それがいるの。この子のお腹に。」女神がセシリアを指さす。
「あなたが魔族だったころに種付けした子が、この子のお腹の中に魔の精剛を持って宿っています。
今は私の力で成長を遅らせてるけど、いつまでも遅らせることはできません。
このまま人族の世界で、それも教会で魔の精剛を持った子供が生まれたらどうなると思いますか?」
「それは生かしてはもらえないだろうな…」
「はい。間違いなくそうなります。ですので、目的さえ果たしてもらえれば、この世界を司る女神として私の力で責任をもってお腹の子を次の魔王にしてみせます。」
「わかった。いずれにせよ前世の記憶がある俺にとって奴は仇だ。魔王を倒してみせる。」
こうして俺達は聖都カークウーゾの町から魔王の国へ旅立った。
「それにしてもなんで女神様は自分の口から直接魔王を倒してくれって言わなかったんだろう。
最初もセシリアさんから出てきた時も目的を果たしてほしいなんて回りくどい言い方してたよね。」
「この世界の司る女神としては、魔王を殺してくれと直接は言えなかったんじゃないか?」
「多分、そうね。あの女神様、気苦労が絶えなそうだし。」
「それにしても、あの女神様、セシリアの体なのに、差し出してたぞ。」
「よほどお兄ちゃんのアレに興味があったんだよ。」
「ねぇ、お兄ちゃん、自分の子が魔王になるのってどんな気分?」
「自分の子って言っても前世の子だろ。実感わかないな。だいたいさ、今の俺の子を産むのはお前たちだろ?」
「いやだぁ~お兄ちゃんたら♡」
「亮太♡」ポッ
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