頼み
「ふぅー。」と一息つくと、さっきまでダウンしていたセシリアが上体を起こしパンと手を叩いた。
「そう言えば、大事なことをお伝えするのを忘れてました。
リードさん。いいえ亮太さん、魔王が殺されてあなたの元弟が魔王になったの知っていますか?」
「え?魔王が殺されたんですか?他の勇者に殺されたんですか?」
「違います。現魔王であるあなたの元弟が殺したんです。
おそらくあなたを殺したことではないかと思うのですが、噂では、あなたを殺した後の偽装工作の詰めが甘く前魔王に問い詰められ、逆上して殺したようです。
前魔王も息子に殺さされるとは思ってなかったようで、不意打ちで油断してたんでしょうね。
それからが大変でした。
新しく誕生した魔王は近隣の村だけに飽き足らず離れた町まで襲い、上納金を要求しました。
国としては税金をとってる手前そんなことを許すわけにはいかず、軍隊を出動させ町に常駐させました。
そして軍事費が増加した結果、国は人々から集める税金を高くしました。
これがまた悪循環で魔王の脅威にさらされてない町が増税に反対して反乱を起こしました。
混乱が混乱を呼び、今この国では女神様に祈りに来る人さえ皆無です。」
「へ~。俺達のいた日本では増税ラッシュでも反乱なんておきないし、宗教なんて決まった日にしか行かないところだから実感がわかないな。」
「元凶である魔王を除かないとこの混乱は収まりません。
でも勇者である私はこの体たらく。
亮太さん、勇者の代わりに魔王を倒していただけませんか?
倒していただけるのであれば、この体、いかように使っていただいてもかまいません!」
「いや、俺、アレなことするのは大好きだけど、なんか相手の意に反するのとか、交換条件でとか、そういうのあんまり好きじゃないんだ。」
さっきまで、もう止めてと叫ぶセシリアに酷いことしてたどの口が言う?という顔をして姉妹が見つめる。
「それに魔王を倒すにしても、いくらステータスが大幅に伸びてるとはいえ、初心者用の武器と防具でってわけにはいかないし。
しばらくはお金をためないといけないしな。」
「なら、この部屋を宿代わりに使ってください。お二人とされるときに、わたしも自主的に参加します。」
そういうとセシリアは修道女見習いの仕事に戻って行った。
結構な時間さぼらせちゃったけど、怒られないといいな。
「お兄ちゃん、なんか今の話、うそくさくない?」
「そうね。たしかにレバーシュの町は軍人さんが多かったけど、そんな殺伐とした雰囲気ではなかったわ。」
「そうだな。ただ、元弟が前世の父上である前魔王を殺したのが事実であるなら、俺にとっては仇になるわけで、その辺の聞き込みを含めてこの町でお金を貯めて装備を整えよう。」
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