魔族の王子の弟
ガチャ、ガチャ、ガチャ
彼は昼の中庭で半裸で横になりながら、心地よい脱力感とともに裸のカロルの髪をなでていた。
そんな心地よい午後を過ごしているところに、重そうな鎧を身にまとったむさ苦しい男たちが入ってきた。
いかにも魔族といった体格をした弟アランとその両脇にアランの取り巻き達だ。
リードがそれに気付いて立ち上がろうと体を起こした時、カロルは彼の耳元で「あの右端の魔族、父と会っているのを見た事があります」とささやいた。
たしか右端の男はベルムとかいったか?有力貴族の息子で、アランの忠実な僕であることだけが取り柄の男だ。
いつものように、アランがリードをからかう。
「兄上、たまたま上手く女をさらうことが出来たからって、まだそんな女とやっていたのですか?
人族の女など何度か犯したら殺してしまえばよろしいものを。あ、兄上には戦闘系のスキルがないのでしたね。そのようなか弱い女も殺せませぬか?」
言うや否や、彼は手に持った斧で、いきなりリードの隣で裸体を手で隠しながら半身を起こしていたカロルを打ち殺した。
至近距離でカロルの返り血を浴びたリードが叫ぶ。
「な、なにをする!」
アランは斧について血を振り払いながら高らかに笑う。
「ブワッハハハハッ」
アランはリードの一つ違いの異母弟だ。
魔族の世界には正室・側室といった制度や生まれの貴賎という考えはない。
ただ一応年長者が跡継ぎになることが多いという程度の風習はある。
そういった意味では年長者のリードが次期魔王とみなされても良さそうなものだが、リードに戦闘系のスキルがないことはそこそこ知れ渡ってしまっているため、貴族たちは長男のリード派と弟だが戦闘スキルを持つアラン派に分かれて争っていた。
とは言っても、アラン派の方が圧倒的に優勢なのだが。
さらにリードの母親は、人族との休戦の証として嫁いできた名目上人族の王の娘となっている女性でリードを生んですぐ死んだ。一方、アランの母は魔族の有力者の娘であり、その後ろ盾の分もアランに有利な状況ではあった。
アランはそんなリードを完全に見下しており、次期魔王はアランに決まったものとして、そんなアランに取り入ろうとするもの達を引き連れ我が物顔に振舞っている。
他人のスキルは特殊な魔道具がないと見ることが出来ないが、父である魔王から聞いたアランのスキルはこんな感じだ。
・魔の精剛:魔王の一族共通のスキル
・斧術 レベル 3:斧の使い方が上手くなるスキルだ。レベル 3ともなるとそこそこの上級者だ。
・闇魔法 レベル 1:精神的なダメージを与える魔法が使えるがMP消費量が大きいようで、アランが使っているところを見た事がない。
・瞬発力強化 レベル 1:MPを使い瞬発力を一定時間底上げする。
父から聞かなくてもアラン自身が自慢しまくっているので間違いは無い。
「金にならない人族など生かしておいても仕方ないでしょ?それとも兄上、魔族のくせに人族に情けをおかけになるのですか?」
「だ、だが、いきなり殺すことはないだろ!」
「不服があるなら勝負しましょうか?いつでもお相手しますよ。ブワッハハハハッ」
「くっ…」戦闘系のスキルを持ったアランにリードは何も言い返せず拳を握るのだった。
(すまない、カロル。俺に力がないばかりに…)
「あらアラン、またそんなところでお兄さんをからかってるの?」
幼馴染で、俺の教育係だったた魔族の孫でかつ次の宰相を狙う有力貴族の娘アリッサがやってきた。
攻撃的な魔族の衣装に身を包み、魔族一とも言われる妖艶な美貌を誇示しながらアリッサが言う。
「リードもお兄さんなんだから勝負しなさいよ!スキルがすべてじゃないってところを見せなさいよ!!
その女も自分でさらってきたんでしょ!人族の村から女をさらってくるなんて滅多にない快挙じゃない!
それにアランもアランよ!まだ次期魔王に決まった訳じゃないのよ!!」
そんなアリッサの言葉を聞いても何もできないリードだった。
次は早くも勇者襲来!
誤字チェックが終わり次第、次も連続投稿します!