旅立ち
なんやかんや地味な仕事をこなしつつ、美佐の魔法の練習もこなし、冒険者らしく遠征の装備なんかもそろえた。
美佐がある程度、魔法の加減とコントロールを身に着けたのが一番の収穫というところか。
「この革の鎧、いらなくない?臭いし。」
「いやいや、万が一ってこともあるし。」
「お兄ちゃ~ん、盾も使う場面がないんだけど、いる?」
「えっと、せっかく女神様が盾術くれたんだしさ。」
「ねぇ、ウォーターボールって効果あるの?」
「ん~。火属性の魔獣には効果あるんじゃないかな?」
「どの属性が属性にどうのとか、どの魔獣が何属性とかって覚えるのめんどくさいんだけど、気にしなくていいよね。ファイヤーボール一発で倒せちゃうし。それからストーンウォールってのも使い道わからないのよねぇ~」
そ、そうですね。そんな強力なファイヤーボールを撃てるのはあなただけです。
「そろそろこの町を出ようか?」
「そうね。この町、軍人さんが多いからかもしれないけど、冒険者には大した依頼はないみたいだしね。」
「お兄ちゃん!商人の護衛で聖都カークウーゾまでってのがあるよ!」
「商人の護衛なら馬車にも乗せてもらえるし悪くないね。」
俺達はその依頼をうけることにした。
「こんにちは。冒険者ギルドから来ました。今回の護衛を担当させていただきます。宜しくお願い致します。」
「はいはい。よろしくお願いします。今回の護衛はあちらのパーティの方と一緒に護衛していただきます。リーダーを紹介しますので、少々お待ちください。」
「おう、こないだの坊主とお嬢ちゃん達じゃねぇ~か。お前たちの腕なら大歓迎だ。よろしく頼むぜ。
そう言えばちゃんとした自己紹介がまだだったな。
おれは『レバーシュの守り手』のリーダーで、エグバートだ。この町を中心に活動している。よろしくたのむ。」
この町に来るときにゴブリンに襲われてた護衛の冒険者たちだったようだ。
「亮太です。」「美佐です。」「美樹です。」
「なんだお前たち、冒険者なんだろ?パーティ名は付けてないのか?」
「あ、はい。パーティって何ですか?」
「おいおい、ギルドのババア、また説明を省きやがったな!パーティてのはな…」
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「ありがとうございます。」
(ま、いっか。俺たちにはあんまり関係なさそうだし。)
「そういえば、もう怪我は大丈夫ですか?」
「おう。もうこの通りよ!」と体を動かして見せる冒険者パーティの面々。この町にはヒーラーや神官はいないって聞いたが、回復力すごいな。
「じゃぁ、みなさんお揃いですので、出発しますね。」
「お前たちは最後尾の馬車の荷台から後方を警戒してくれ。」
「わかりました。」
商人の最後尾の馬車の荷台に乗り込み、後方を警戒しながら旅をつづける俺たち。
「お兄ちゃん、馬車って揺れるねぇ~。キャッ!キャッ!」
「亮太ぁ~ひまねぇ~。」
「そんなこと言ってないで、索敵、索敵。」
「ゴブリンだ!」
先頭の馬車の御者台で声を上げるリーダー。
美佐が馬車から飛び降り、先頭まで駆け出す。
「まだ距離はあるが、あれだ!」
リーダーが指さす前方の森が途切れた場所にゴブリンと思われる集団を見つけた美佐は、張り切ってファイヤーボールを放つ。
どっか~ん。
一発でゴブリンは全滅した。
そして道に大きなクレーターが…
「すみません。これじゃ馬車、通れないですよね。」
俺たちはクレーターの淵を均し、板を渡して慎重に馬車を進めた。
後日、このクレーターから温泉が湧きだし一大観光名所となったとかならないとか。
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