喪失
両親が他界して1週間ちょっとが過ぎた。
美佐や美樹ちゃん、時には二人と、誰もがうらやむであろう魔の精剛が無かったら俺どうなってたんだろうとつくづく思う幸せな生活をおくっていたある日の夕方のことだった。
いつものように美恵さんの手料理の夕食を食べて、いつものように美恵さんの目を盗んで3人で風呂に入ろうとした時、
「お邪魔するよ。」と荒木圭太と厳つい男たちが了承も得ずに家に上がってきた。
「ちょっと、おじさん、呼び鈴くらいならしてください。」
「そうよ、夜分に失礼じゃない。」
「突然だが、君にはこの家から出てってもらう。金目のものは全ておいていけ。ぐびびびび」
笑い方がいやらしい。何を言っているのだこの男は。
「な、何を言ってるんですか?」
「そうよ!どうゆう事よ!」と叫ぶ美佐。
「あなたはただの代理人のはずですが、どういう事でしょうか?」と美恵さん。
「この家は私のものだと言ってるのだ。ぐびびびび」
「わけわかんない。そんなわけないじゃない!この家は亡くなられたご主人様と奥様の家で、その子供であるお兄ちゃんの家よ!」と美樹ちゃんが叫ぶ。
そこに厳つい男たちの後ろから父の会社の弁護士が現れる。
「弁護士さん、どうなってるんですか?」
「亮太さん、社長の資産はすべてここにいらっしゃる荒木圭太様がご相続することとなりました。
会社も荒木圭太様が継ぎます。つきましてはあなたには即刻ここから退去をお願いします。」と冷たく言い放つ。
「そう言う事だ、遺言書もある。」
どういう事だ?そんなはずはない。
父は間違いなく言っていた。会社は継がせないが家を失わない程度の財産は残すと言っていた。父が嘘をつくはずはないんだ。
俺は初めて会ったこいつらをそのまま信じて騙されたのか?
この世界でも騙されたのか?
前世で騙されてるのに、なぜ学習しなかったんだ。
「そうそう、メイド達は安心したまえ。君たちはこのまま雇い続けてやる。ぐびびびび」
「いいえ、おぼっちゃまがいらっしゃらないのなら、私達もお暇させていただきます。」
「そうよ!お前なんかのために働かないわ!」と美佐が言い放つと、美樹ちゃんが荒木圭太の股間を蹴る。
股間を抑える荒木圭太《叔父を名乗る男》を横目に、「亮太、行きましょう。」と美佐と美樹ちゃんに手を引かれ、美恵さんとともに家を出た。
そうだ、前世よりはずっとましだ。殺されてない。なにより一緒についてきてくれる3人がいる。
(亮太、わたしはずっと味方だよ。)
(お兄ちゃん、わたしもずっと味方だからね。)
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