嫉妬
ある日、俺は担任の先生に放課後の空き教室に呼び出された。
俺の担任の先生は去年大学を卒業して先生になったばかりの若い熱心な先生だ。
「荒木君。あなたのやっていることは悪いことよ。」
「え?何のことですか?」
「しらばっくれても先生知ってるのよ。」
「だから、何のことですか?」
「荒木君、あなた隣のクラスの宮島 美佐さんの弱みに付け込んで、無理やり言うこと聞かせてるそうじゃない。荒木君は随分大人びた子供だなとは思ってたけど、まさかそんなことするなんて…」
「先生!ご、誤解です。」
「嘘はダメよ。こないだだって、荒木君が忘れた体操着を宮島さんに家まで取りに行かせてたでしょ?」
「いや、ですから、あの時も僕は隣のクラスの前年に同じクラスだった子に体操着を借りるつもりだったのに…」
「言い訳はダメよ!いくら宮島さんのお母さんがあなたの家の家政婦さんをしてるからって、あなたの家政婦じゃないのよ!」
「先生、だから違うんですって。聞いてください!」
ガラガラ
そこに早くも半べそ状態の美佐ちゃんが入ってきた。
「せ、先生、違うんです。」と美佐ちゃんが泣きながら訴える。
「宮島さん、いいのよ。大丈夫、先生が守ってあげる。」
「だ、だから、ち、違うんですぅ~」
「荒木君、こんな健気な女の子を泣かせて、あなた平気なの!そんな悪い子なの!」
「だ、だ、だから違うんですぅ~」
「荒木君!」「違うんですぅ~」
ガラガラ
また教室のドアが開くと、そこには美樹ちゃんが前の年に俺たちの担任だった先生を連れてきてた。
「先生、違うんですよ…」
:
俺の疑いが晴れるまで小一時間。
「荒木君、ごめんなさい。」
「先生、良くあることなんですよ。宮島と仲良くなりたいのに仲良くなれない男子生徒が、宮島と仲良くしている荒木を貶めようとあることないこと言ってくるんです。」
「荒木君、本当にごめんなさい。」
「先生も熱意余ってのことだと思いますのでいいですよ。でも、生徒の反論を聞こうともしない姿勢はよくないですね。」
「本当にごめんなさい。」
俺の疑いが晴れて、俺たちは一緒に下校した。
「美佐ちゃん、美樹ちゃん、二人ともありがとうな。」
「ううん。わたしなにもできなくて。」とまだ半べそをかいている美佐ちゃん。
「俺、もっと強くなって、今度は俺が二人を守れるようになるから。」
「ねぇ、ねぇ、ミキも?ミキも守ってくれるの?」
「もちろんだよ。」
「お兄ちゃん、大好き!」
「美樹、ずるい…わ、わたしも…」
この話はノクターン版にはありません。
明日は投稿が少し遅れるかもしれません。