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第二章 二十三




「戦闘能力に天性の才能を持つものは、戦場にかけて未熟な一兵が、一瞬にして熟練の将校にまで昇り詰めてしまう。彼女は恐らくソレにあたるな」


「ああ、そうだな」


 横にいた水波女蒼蓮の言葉に白夜は同意をする。


「ものの見事に戦況がひっくり返ったな。ルシアスが彼女らを甘く見て、油断した可能性は否定できないが、それでも戦闘能力に向上が見られるな。このまま戦場で活躍すれば、彼女は母親や父親を越えるかもしれない」


 ルシアスを追って人間界に降りた水波女蒼蓮と白夜は、エクレールに案内を頼み、〈錬成異空間〉に入った到着したのだが──そこでは、一人の少女の肉薄によって、一気に危機的状況を覆されたところであった。


 ルシアスは【謀反者討伐隊トレトール・シャス】十四もの総攻撃を受け、リリスはシルベットの連撃によって地に倒れた。血が噴水のように噴き出して地面に染めている。治癒力が〈原子核放射〉によって快復の妨げとなっているらしく、傷口が塞がらないためか、一向に逃げる気配はない。


「あれでは当分、自力での快復は望めないな。少しでも動けば傷口の回りだけ食い止めている被曝が一気に全身に広がってしまい、生命維持に支障が出てしまいかねないからな」


「ああ。間違いないな。あれはルシアスが唯一、死滅させる力だからな」


「ただ、それは我々でも例外ではない。うっかりすれば、聖獣である我々でさえもこの世から消し去ってしまいかねない力だ」


「下手をすれば、世界を壊滅させてしまう力が、ルシアスらを捕縛して、残りの【創世敬団ジェネシス】らを一気に捕らえるには最適といえる」


 聖獣たち二人が会話する横で金髪のツインテールを風にそよがせる少女──エクレールがいた。ルシアスとリリスが捕縛されているところを見据えながらエクレールは顔を顰めた。それはとても、大変に、大いに、嫌いな人の名前を思わず耳にしてしまい、不愉快をあらわにした表情である。


 唇は若干への字にし、その眼光は鋭く、その名前の者の話題をこれ以上するなと無言の警告を発すると、聖獣二人は素知らぬ顔で現場に向かう。


 気持ちを切り替えるように息を吐いてから彼等の後を追いながら、エクレールは〈錬成異空間〉内部を見渡す。


 実際の住宅街の半分以下の大きさに調整されている〈錬成異空間〉内には生々しい戦争の傷跡があちらこちらと見られる。


 吹き飛ばされた家屋や建物、至るところには黒煙が上がっている。極めつけは鍋の底のようなクレーターだろうか。巨大な隕石が墜ちてきても、地面があそこまで削られることは滅多にないだろう。


 そのクレーターの近辺には、十数人ほどの人影が確認できた。ちらほらと見知った顔が見受けられる。その中には、ドレイクやシルベット、蓮歌、如月朱嶺といった自分の【部隊員チームメイト】がいて、第八百一部隊のスティーツ・トレスと厳島葵がいた。彼等は、赤黒い水溜まりで横たわる二つの人影──ルシアスとリリスの周囲を囲んでいた。




      ◇




「……ルシアスとリリスの生死を確めた後に捕らえるぞ! 最後まで気を怠るな!」


 スティーツ・トレスは、ルシアスとリリスの生死を確めるべく自らが先行して隊員達に指示をする。


 隊員達は喚声をあげて周囲に警戒を向ける。厳島葵が生死確認をするために彼等に警戒しながら近づく。〈高温感知〉の術式を行使をして、彼女は口を開く。


「〈高温感知〉した限りでは、二人とも体温は下がりつつあります。ですが、魔力の流れが傷口に集中させています」


「それはまだ、死んではいないということだな」


「はい」


「幾度も蘇り、【謀反者討伐隊トレトール・シャス】に戦争を仕掛けてきた二人だ。少しでも彼等に力を残っていたとしたら不意討ちもあり得る。油断するなよ」


「はい」


 厳島葵はさらに近づき、容態を窺う。ルシアスとリリスは、動く気配はない。全身の各所に穿たれた傷口から涌き水のように血が流れて横たわったままだ。


 足下を容赦なく血に染めながら少しずつ距離をつめていく厳島葵。およそ五十センチメートルまで近づいてもなお、ルシアスとリリスは立ち上がることはなく、やはり横たわったままぴくりとも動かない。それどころか身悶えることなく、呼気も虫の息程しかない。


 魔力さえも治癒力に回していて、最低限の生命維持をしているのだろうと見て、厳島葵は彼等に駆け寄ると、リリス、ルシアスと無数に傷をつけられた躯──心臓がある胸元に耳を寄せて鼓動音を確認。包帯で止血した後、また油断を誘って奇襲を仕掛けてくることも考えて、最低限度の生命維持が出来る少ない魔力だけが働く程度に〈封印〉の術式を行使して確保した。


「確保しました。これでもう動きたくとも動けないでしょう」


 忌々しげに厳島葵はルシアスたちを見て、スティーツ・トレスに報せる。


「そうか……」


「当分は、戦闘不能状態であることは間違いありませんし、傷が治り魔力が治癒以外の術式の行使に流れたら、自動的に魔力も〈封印〉の対処として認識するように施したので、完治しても〈封印〉は解けないでしょう」


「そうか。それなら安心だな。残りの【創世敬団ジェネシス】を一掃するために洗いざらい吐かせるために捕縛、封印しするためにハトラレ・アローラに連行しょう」


 スティーツ・トレスは少し息を吐いてから声を上げる。


「よし! 【謀反者討伐隊トレトール・シャス】人間世界方面日本支部派遣部隊、第八百一部隊はこれにて人間界の任務を終了とする。皆、最後の戦場での任務ご苦労様だった。だが、ルシアスとリリスを向こうに引き渡しをするまでは気を抜くなよ」


『オー!!』


 【謀反者討伐隊トレトール・シャス】は鬨の声を上げた。




「何だあやつら、人間界にいるのが最後なのか…………」


 第八百一部隊の様子を見ていたシルベットはスティーツ・トレスの“最後の任務”という言葉に首を傾げる。そんな彼女に蓮歌が声をかけた。


「シルちゃん、わすれたんですかぁ? 先日の戦いで、シー・アークさんという輩が【創世敬団ジェネシス】に唆されて、別動隊の東雲謙と一緒に謀反を起こして、シルちゃんに攻撃してたじゃないですかぁ」


「ああ、あれか……。あれがあやつらが人間界から去る理由と何の繋がりがあるんだ?」


 顔を上に向けて思い出したシルベットだったが、いまひとつ理解していないのか、彼女は蓮歌に顔を向けて訊いた。蓮歌はその言葉に呆れ顔を浮かべる。


「ありますよぉ。シルちゃんはそれ……本気で訊いてますか?」


 蓮歌はジト目でシルベットを見据える。学舎に通えず【謀反者討伐隊トレトール・シャス】に置けるルールを教官であるドレイクは教えている。そこに勿論、連帯責任についても教えられており、特に単独行動が【部隊チーム】の中で一番に多いシルベットには耳にタコが出来るほど叩き込まれたはずだが──


「訊いているぞ。私はいつだって真面目だ。で、なんでそうなった?」


 両手を腰にあてて言ったシルベット。ドレイクの教えが頭に入ってなかったことに蓮歌は、大きな息を吐いた。


「忘れたんですかぁ……。まず連帯責任についてはわかりますよねぇ……」


「【部隊チーム】の一人が不祥事を起こせば、【部隊チーム】全員が責任を負わされるあれだろう。耳からタコが出てくるのではないかというくらいに赤ジジイと金ピカからしつこいくらいに教えられているからな。理解しているつもりだ」


「教えられていることは理解しているつもりじゃなくって、ちゃんと理解してくださいよぉ…………」


 蓮歌は、第八百一部隊が人間界を去らなければならない理由について、懇切丁寧に教えた。それをシルベットが相槌を打ちながら聞き終えると頷く。


「大体、わかった。ありがとうだ」


「今度から忘れないでくださいねぇ…………。一から説明するの楽じゃないんですからぁ」


「うむ。心得ておこう」


 シルベットは蓮歌に向いていた視線を第八百一部隊に移す。


「しかし、人間界を去るには惜しいな。実に勿体ない」


「勿体なくとも仕方ありませんよ。【部隊員チームメイト】が起こした【部隊チーム】は連帯責任として、同じく罰則を受けますから。シルちゃんも不祥事を起こしたら、蓮歌やエクちゃん、朱嶺さんにドレイクさんと迷惑がかかりますから気を付けてくださいね」


「わかったぞ。なるべく迷惑かけないように気をつけよう」


「…………ホントですかぁ?」


 シルベットを蓮歌はジト目で見据える。


「ホントだが……。何だその疑った目は…………?」


「シルちゃんは毎回、何かと忘れたりするじゃありませんかぁ。信じろと言われても、疑ってしまうのは仕方ないんじゃないですかぁー。ちゃんと、覚えた試しが今のところないんですから。それよりも覚えている覚えてないの記憶力が極端過ぎて、ちょっとシルちゃんの頭の中が心配なんですよぉ……。何か変な術でもかかってたりするんじゃないんですかぁ? 少し調べてもらった方がいいんじゃないんですかぁー?」


「大丈夫だ。私が巣立ちしてから、そのような術などかかった覚え…………ん?」


 ふと、シルベットの脳裏にある光景が浮かんで出しかけた言葉をやめた。それは山間にある田舎の屋敷で人間の少年と一緒にいるという“見覚えがない”光景である。


 ──ん?


 ──なんだこの記憶は…………。


 ──私は生まれてから巣立ちするまで人間界に行ったことなど…………。


 自らが思っていたことでシルベットは首を傾げる。


 ──何故、私はあの景色は人間界のものだと思ったのだ?


 ──私はハトラレ・アローラはおろか、屋敷を出たことはないというのに……


 シルベットはさっきの光景が一体何だったのかと考え込んでいると、蓮歌は怪訝な顔で声をかけた。


「どうしました……。大丈夫ですかぁ……」


「何かさっき脳裏に過ったものがあってな」


「え……何が過ったんですかぁ…………?」


「あり得ないことなのだが…………」


 シルベットはさっき脳裏に浮かんだ光景を細かく教えた。


「私は巣立ちの式典に行くまで人間界はおろか、ハトラレ・アローラから、自分の屋敷からも出ていないのだから、あり得ない」


「あり得ませんね。人間界に行くには〈ゲート〉を通らないといけませんし、〈ゲート〉はナベルにしかなかったと思いますし。屋敷から出たことがないシルちゃんがナベルまで行かない限りは無理です。それよりも、そんなあり得ない映像が何で今浮かんだんですかぁ?」


「知らん」


「そんな即答しなくとも…………、少しは考えてくださいよぉ…………」


「そうだぞ。諦めるな。諦めたら、そこで試合終了だと人間界で有名なバスケ漫画に出てくる教諭が言っていたぞ」


「そんなことを言われても身に覚えがないのだから仕方な────誰だ貴様? いつの間にそこにいた?」


 さっきまで誰にもいなかった隣から声をかけたのは、波立つ海のように蒼い頭髪の男性だった。


 突如として音も気配もなく現れた彼は、勇敢と獰猛さが相容れた碧の双眸を向けて微笑みを浮かべている。敵意は全くない。優しく彼女たちを身護るかのような感じがある。男性の顔に少し見覚えがあるのだが、どこで会ったのかも名前さえもシルベットは思い出せない。


 思い出そうとしているシルベットの横で、蓮歌が驚きの色を含んだ甲高い声を上げる。


「パパぁ!?」


 蓮歌は目をひんむくくらいの勢いで驚き、視線をパパと呼んだ男性から視線を外さない。そんな彼女に軽く手を上げる。


「やあ。元気かい? ルシアスが人間界に逃亡したとして追いかけてきたんだ。よくぞ捕縛するまで追いつめた。何だかんだ言って、任務を遂行していて良かったよ」


「パパが直々に人間界に降りてくるだなんて、そんな大事だったんですかぁ……」


 蓮歌は褒められて少し照れくさそうにはにかみながらも父親である水波女蒼蓮に訊いた。


「まあね。ルシアスは、【創世敬団ジェネシス】を纏める長だ。それを取り逃がすわけにはいかないからな。これ以上、好き勝手できないように食い止めてもらえて助かった。直に援軍と憲兵がルシアスとリリスをハトラレ・アローラに連行するために到着するだろう。それまでにも、彼等にはいろいろと訊きたいことがあるんだ」


 水波女蒼蓮は、蓮歌に答えると隣のシルベットに声をかける。


「やあ。巣立ちの式典ぶりだね」


「貴様など知らぬ」


「即答で答えなくともいいじゃないか」


「それよりも、水臭いのがぱぱと呼んでいたが…………貴様は水臭いの父なのか?」


「ああ」


 蓮歌の父は応える。


「俺の名は、水波女蒼蓮だ。君と会ったのは、生まれた時に一度だけと巣立ちの式典だ。生まれた時は仕方ないが、巣立ちの式典で会っているのだから覚えて欲しかったな。思い出せない上に、名前も覚えてもらえなかったことに少し残念だ。水波女は覚えなくともいい。ただ、蒼蓮という名は覚えてもらいたい」


「覚えられているのならそうしょう」


「ちょっとシルちゃんっ! 父ですよぉ。青龍族の水波女蒼蓮と言えば結構、有名なんですよぉ。聖獣なんですよぉ。言い方が悪いですし、パパに失礼ですよぉ。親の前で水臭いという変な渾名で呼ぶのホントに、やめてくださいよぉ…………」


 水波女蓮歌はすかさず注意と渾名について抗議をした。しかし、その抗議はあっさりと無視される。


「聖獣だからといって、言葉をわざわざ改めるほど、私は器用ではない。覚えるもんは覚えるし、覚えないもんは覚えない。知らんものは知らない。言い方については、今後ともだな」


 悪気はない、と胸を張ってそれで済ませようとするシルベット。そうはさせまいと蓮歌が口を開く。


「ちゃんと覚えてくださいよぉ。上官には丁寧な言葉遣いを使いましょうよぉ…………」


「巣立ちの式典で暴言を吐いた貴様に言葉遣いについて、とやかく言うとはね。成長したのかな」


 水波女蒼蓮が蓮歌に対して分が悪いことを口にした。それを蓮歌は煩わしげに睨みつける。


「少し黙ってくださいパパ…………」


「ハイハイ。わかったよ……」


 凄みを利かせる顔で蓮歌は蒼蓮に言うと、蒼蓮は手を降って引き下がる。


 それから蓮歌は、シルベットに説教をしたが水臭いのという渾名は使い続けた。


 見かねた蒼蓮がたまらず声をかける。


「シルベット。ところで、その“水臭いの”というのは蓮歌の渾名かい?」


「ん? そうだが…………」


「そう呼んでいるのは、シルちゃんだけですよぉパパ」


 すかさず蓮歌は勘違いしないように補足をする。


「そうか。彼女だけか。まあそうだろうね。シルウィーンも変な渾名を付けていたからな。流石はシルウィーンの娘と言わざるを得ない。そこが似ちゃったということだろうな…………出来れば、そっちは龍臣に似て欲しかったな……」


 昔を懐かしむように苦笑する水波女蓮歌の父──水波女蒼蓮。そんな彼にシルベットは訊く。


「母を知っているのか?」


「ああ。古い友人さ。龍臣のこともゴーシュのことも知っているよ」


「そうなのか」


「ああ」


 蒼蓮は頷く。


「君の母──シルウィーンは昔、名前を覚えるのが苦手なんだ。いつも誰彼構わず変な渾名を付けては、それで呼んでいたよ。君のようにね」


 蒼蓮の言葉にシルベットは首を傾げる。


 シルベットは、これまでシルウィーンと過ごしてきたことを思い出す。シルウィーンがこれまで一回も名前を思い出せずに勝手に渾名を付けた様子はない。何かの思い違いなのではないかとシルベットは蒼蓮に口を開く。


「そうなのか……だが、母はちゃんと、名前で呼んでいるぞ」


「それは、龍臣のお陰さ」


「父のお陰?」


 龍臣のお陰、と訊いてシルベットはまたもや首を傾げた。名前を思い出せずに渾名を付けないことに龍臣はどう関係してくるのか、と蒼蓮の言葉を待つ。


「ああ。話が長くってね、短く纏めれないからね。触りだけでも教えるのならば、シルウィーンが龍臣に出逢って、一目惚れして、ちゃんと名前を覚えるようになった。それから他も覚えるようになっていった…………みたいな、要約を纏めるとそんな感じだ。あとは、事が済んでからにしょう」


 後で答えることを約束して、水波女蒼蓮はルシアスとリリスの下へと向かった。


「巣立ちの式典でも思ったが、シルウィーンと龍臣によく似ているな」


 ふと、頭上から声がした。顔を上げてみれば、灰色の髪を風に揺らして、颯爽と降りてくる筋骨隆々の男性がいた。


 灰色に近い白と黒の道着を纏っている身体は、内側から押しあげるように発達した筋組織で盛り上がっており、如何にも武道派という出で立ちである。


 灰白色の髪は短く逆立っていて、鋭利なサファイアのような美しい蒼眼をシルベットと蓮歌に見据えていた。


「え……白夜……さん?」


 蓮歌がゆっくりと地上を降りてくる男性に名前を口にする。その名前に聞き覚えがあったシルベットだったが、声には出さないで身護ることにした。


「上手くやっているか蒼蓮のワガママ娘」


「ワガママ娘は余計ですよ…………」


 蓮歌は頬を膨らませると、白夜は、ハハハと笑う。


「すまないな。だが、どこの【部隊チーム】からもお呼びがかからなかったところを無理矢理にシルベットとエクレールの【部隊チーム】に入れてもらったのだからな。ワガママというしかあるまい」


「それが余計なんですよぉ…………」


「ですが、あなたは余計ですわよ」


 蓮歌と白夜の会話に割って入るかのように声がした。その声はシルベットにとっては耳障りで、聞き覚えがあったことからすぐに声の持ち主がわかった。


「エクちゃん!」


 蓮歌は上空からした声にいち早く反応して名前を呼んだ。


 ゆっくりと空から降りてきたのは案の定、エクレールだった。シルベットは、仇敵の出現にジト目で睨み返す。


「遅かったな…………何を遊んでいたんだ」


「遊んでいませんわ。助けを呼ぶのに少しばかり時間がかかっただけですわよ…………。それよりも派手にやりましたわね。あなたこそ、遊び過ぎではなくて…………」


「これが、遊んでいるように見えるのなら、貴様の目は節穴だ」


「その言葉、そっくりそのまま返しますわよ!」


 ふん、とシルベットとエクレールは同時にそっぽを向いた。


 依然として、シルベットとエクレールの関係牲に変化は見られない。最初にリリスと戦った時の連携が嘘のようである。


 腕を組み、顔を見合せようとしない二人に、白夜は口を開く。


「今は任務中だ。まだルシアスとリリスを連行するまでは気を抜くことは赦されない。それよりもシルベットとエクレールよ。お互いに何が起こったのかという経緯を報告したらどうなんだ。【部隊チーム】の中での情報交換は大切だ。特に今回みたいに、ルシアスとリリスに大打撃を与えた戦略を訊いておくのも重要だと思うが」


「………………………わ、わかりましたわ……」


「………………………わ、わかった…………」


 二人は渋々と、嫌々と、仕方なく、これまでの経緯について、わかる範囲での情報交換を行った。


「これまでの経緯について報告を致しますわよ。軽くですが…………」


「わかった。こちらも【創世敬団ジェネシス】と戦った時のことを軽めに話そう。まだ終わったわけではないからな」





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