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第一章 五十




 戦により荒れ果てた地形にただ一カ所だけある自然を、花や草木を潰さないように気をつけながらも折りたたみ式の床几台を組み立て、その上に鮮やかな赤い敷物──毛氈を広げる。それをもう二つ組み立てると、これまた鮮やかな赤の優美な野点傘を広げると、傘立台に入れて床几台の横に立たせると、即席の茶会の会場が出来上がった。


 ゴーシュは魔方陣を展開し、そこから漆塗りの箱を二つ取り出す。


 まずは一つの箱を開く。中には茶道具一式があった。茶箱と呼ばれる茶道に必要な道具を持ち運びするための箱である。水無月龍臣とゴーシュは道具を吟味しながら取り出す。手慣れた調子で着々と茶事の準備を進めていく。


 ゴーシュは茶碗を人数分四つと桶、竹水筒、茶釜、皿を取り出す。まずは桶に竹筒から水を入れると、茶釜、茶碗、皿を軽く濯いで洗う。


 そのうちに水無月龍臣が風炉に炭を入れ、火を点けるとゴーシュが濯ぎ終わった茶釜を受け取り、茶釜に水を入れて、お湯を沸かす。


 お湯が沸く間に、もう一つの箱を開ける。包装されていることから、和菓子のようだ。水無月龍臣は手際良く、皿に盛りつける。


 二人の無駄のない手慣れた動きに美神光葉は目を見張った。


 美神光葉は、諜報に必要なすべての課題を叩き込まれ取得している。その中にお茶の作法も含まれていることもあり、彼らの手際の良さに素直に驚く。


「随分と手慣れてますね」


「妻と子供たちとよく庭先でお茶を嗜むものでな。用意するのは力仕事である拙者とゴーシュが主なのだ」


 水無月龍臣はそう言って微笑んだ。


 同期生であるゴーシュの意外な一面に美神光葉とメア・リメンター・バジリスクは驚くものの、何となく手伝っていた意図を理解する。


「我が愛しいの義妹────シルベットがいるお茶会だからね。ホントならば、着物の着付けもしたいくらいだけど、男性禁制だし、残念ながらボクは着物の着付けが出来ないからね。お茶会の準備くらいはちゃんとしなきゃね」


「やっぱり……」


「そんなことだろうと思いましたよ……」


 彼女たちはゴーシュの言葉に尽く呆れ果てた。


 義妹をこよなく愛する彼のことである。義妹が絡みであることは彼女たちの予想の範疇といえる。


 彼の義妹好きは重症だ。何をしでかすかわからない。今も時折、胸ポケットにある写真を出しては眺めては、ほお擦りするまたは口づけしては心底嬉しそうな顔を作る彼に義妹の着物の着付けしょうとしたところを止めた者に賞賛を贈りたい。


「では、お茶の席が出来たところで始めると致そう」


 ぽん、と水無月龍臣はゴーシュと美神光葉のやり取りが一段落したところを見計らって手を打ち、


「まずは立ち話も何だが腰を掛けて休もうとしょうではないか」


 と、ゴーシュたちをお茶会の場に呼び寄せた。


 上座に位置する床几台には正客であるメア・リメンター・バジリスク、立会人である美神光葉は、横に設えた床几台に案内される。


 警戒と緊張をあらわにするメア・リメンター・バジリスクと美神光葉はなかなか座ろうとしなかったが、それを目ざとく気づいたゴーシュが近づく。


「どうしたんだい? 何か問題でもあったかい?」


 近づいてきたゴーシュは誰にも聞こえないように耳打ちで伝える。


「この茶事は、急拵えにしては本格的で用意が良すぎるのですが……………」


「何をわかりきったことを聞くんだい。そんなこと最初からメア・リメンター・バジリスクと話し合いをするために決まっているじゃないか」


「さも当たり前に言っているんですか。もしも相手が乗ってこなかったら話し合いどころではありませんよ」


「まあ。仕方ないさ。うちの義父が考えることなんてうちの母親くらいにしかわからないさ」


「その言い回しでは、あなたにもわかっていないのですか…………」


 美神光葉の言葉にゴーシュは微笑みで返す。その微笑みからは読み取れなかったが、この茶会は水無月龍臣主導であることが分かった。


 確かに、【謀反者討伐隊トレトール・シャス】は【創世敬団ジェネシス】や敵組織に対話や説得する義務があるがほとんどは形だけで、交わすのは大体は宣戦布告のようなものだ。真面目に説得するのは窮めて少ない。ましてやお茶会を開いて、がっつりと対話する場を設けるといったことをするのは水無月龍臣ぐらいである。


「まあ。話しは後で訊くから座りなよ」


 ゴーシュに促され、ゆっくりと鮮やかな赤い敷物──毛氈がかけれた床几台に腰を掛けた。


 メア・リメンター・バジリスクにも近づき、同じように座るように手で制しながら薦める。


「どうしたんだい? 何か問題でもあったかい? 座ってくつろぎなよ、ここまで殺戮つづけて疲れたろ」


 近づいてきたゴーシュに不信感をあらわにしてメア・リメンター・バジリスクは耳打ちで伝える。


「この茶事は、今から始めるにしては用意が早い上に、準備が整いすぎな気がするのですが……、いつもこんな感じでお茶会というのをはじめているのですか?」


「キミも美神光葉と同じようなことを訊くんだね。そんなこと勿論そうだし、最初からキミと話し合いをするために決まっているじゃないか」


「もしも私が乗ってこなかったらどうするんですか……」


「そんなことわからないさ。うちの義父が考えたことさ。知りたいなら義父にでも聞いた方がいいよ。この茶会はそういった席でもあるんだからさ」


「その言い回しは、あなたにもこの茶会の意図がわからないということですね…………」


 メア・リメンター・バジリスクは美神光葉と同じ問答を繰り返し、ゴーシュは微笑みで返した。


「いいから座りな」


 再度座るように促され、メア・リメンター・バジリスクは納得がいかない顔で鮮やかな赤い敷物──毛氈がかけれた床几台に腰を掛けた。


 敵地に招かれた茶会で安らげるわけがない。戦場で敵と開かれる茶会に緊張と警戒をなかなか解くことが出来ず、彼女たちは居心地の悪さでなかなか落ち着くことが出来ないまま、数分経った頃、そんな彼女たちの元に手慣れた所作で煎れたお茶と茶菓子を半月盆に乗せた水無月龍臣が歩み寄る。


「抹茶を用意をした。携帯用の茶ゆえに即席しかなかったのが、実に申し訳ない。だが、味は保証するぞ。もう少し御手前を披露し、口に合うか試したいところだがな、こればかりは仕方ない、ははは」


 言いながら、両手に半月盆に乗せたお茶と茶菓子をまず上座にいるメア・リメンター・バジリスクの目の前に一つ、横の席にいた美神光葉に一つ渡した。


 水面色をした湯飲みに澄み切った翡翠色をしたお茶が注がれている。ほのかな香りが鼻腔をくすぐり、緊張で強張った躯に解す。飲まずともわかるいい茶葉だということがわかる。


 純白の細長い小皿には、色とりどりの和菓子が五つほど盛られている。淡い撫子の花に紫みのかかった撫子色、草原にみられるような新鮮な緑と同じ瑞々しい若草色、ライムの実のような鶸色、一斤の紅花で染めたような淡い紅色。どれもが花や水を象った精密かつ繊細な技術が要求される練り菓子だ。


 これぞ職人の技というべき練り菓子と抹茶に、美神光葉はおろか、上座にいるメア・リメンター・バジリスクもあまりに美しさに目を見張っている。


 見た目もさることながら、練り菓子の甘い香りとほのかな香りの抹茶の匂いと相まって実に幸せな気分にさせてくれる。


「……これ。どうやって作ったの?」


「作り方については詳しくは知らぬが、相当な腕でなければ作れんだろうな」


 ゴーシュと自分の分のを取りに戻った水無月龍臣がメア・リメンター・バジリスクの何気ない言葉に答えた。彼は美神光葉の隣にいるゴーシュに一つ渡して、上座の向かいに自分の分を置いてから、皆に行き渡ったことを確認してからゆっくりと座った。


「さて、んじゃ、いただくとしょう」


 水無月龍臣が手を合わせてそう言うと、ゴーシュは慣れた調子でそれに倣い、合掌する。続けて、美神光葉が。メア・リメンター・バジリスクが水無月龍臣達の仕草をを真似るように手を合わせる。


「頂きます」


「いただきます」


「い、いただきます……」


「…………い、いただき、ます……」


 四者四様の頂きますをし、ペコリと頭を下げて、戦場で急遽茶会が始まった。


「まずは、拙者が先に口に致そう」


 茶会の主たる水無月龍臣が彼女たちが警戒して和菓子と抹茶に手を出さないことを考慮し、先陣を切った。


 器を少し持って礼をし、お手本を見せるかのようにゆっくりと懐紙に一つ淡い撫子の花に紫みのかかった撫子色の練り菓子を取る。楊枝を花びらの形をなるべく崩さないように器用に動かし、一口の大きさに切り分けると、刺してつまみ上げて口に運び、入れる。


 その様子を彼女たちはひとつひとつの所作を怪しいところがないかよくと観察している。水無月龍臣は観察されながらも厭な顔を全く見せずに、じっくりと味わうように咀嚼し、飲み込む。


「うむ。実に美味だ」


 そう言って、水無月龍臣は頷き、残った練り菓子も同じように切り分けて口に運んだ。


 残った草原にみられるような新鮮な緑と同じ瑞々しい若草色とライムの実のような鶸色の練り菓子も同じよう味わいながら食べて、咀嚼しながら茶碗を手に取り、自らが煎れた抹茶を口にする。


「抹茶と合って実に上手いぞ。皆も遠慮せずに」


 そう水無月龍臣は三人に薦めた。


 だからといって、すぐに美神光葉とメア・リメンター・バジリスクは和菓子と抹茶に手を出すこと出来ない。まだ警戒心は解くことが出来ず、水無月龍臣が出した練り菓子や抹茶を口に運ぶことが出来ないでいる。


 それを感じとったゴーシュが口を開く。


「では、みんな緊張しているようだし、ボクが先にいただくとするよ」


 水無月龍臣と同じようにゴーシュは器を少し持って礼をし、懐紙にまずは一斤の紅花で染めたような淡い紅色の練り菓子を取り、楊枝でひとつまんで、口に運ぶ。味わいながら咀嚼して飲み込む。


 ライムの実のような鶸色の練り菓子を楊枝でひとつまみだけ口に運び、じっくりと味わって食べるを繰り返す。


 そうやって、残りの淡い撫子の花に紫みのかかった撫子色と草原にみられるような新鮮な緑と同じ瑞々しい若草色の練り菓子をも平らげてから茶碗を手に取り、味を確かめるように一口する。


 茶会を楽しむ彼らを美神光葉は観察する。ゴーシュは日頃から水無月家で茶事が行われてるだけあって、茶道を心得ている。美しい所作でお茶を飲み干した。


「結構なお手前で」


 そう言って、ゴーシュは隣にいた美神光葉を見る。


 次はキミが飲め、とあからさまに聞こえて来そうな視線に、いらっとしながらも、同じように頭を下げる。


「……じゃあ、お先に頂きます」


 そうメア・リメンター・バジリスクに言ってから、美神光葉は水無月龍臣が煎れたお茶を眺める。


 間諜及び軍人たる者、信用しない相手もしくは敵から出された食物や飲物を口にしてはならない。【戦闘狂ナイトメア】はともかく、水無月龍臣とゴーシュは味方側ではあるが、油断してはならない相手であることには変わりはないからだ。


 彼らには美神光葉が【異種共存連合ヴィレー】、【謀反者討伐隊トレトール・シャス】、【創世敬団ジェネシス】の多重諜報を行っていることを感づかれている。毒物が入っている可能性を少しでもある限り用心した方がいいだろう。


 彼らを観察したところ、食べる順番にバラバラであり、共通するところは見受けられない。練り菓子に毒と解毒剤が交互に入っている可能性は低い。それでも不安である。術式を要して調べながらもどれから口にするか吟味する。


 美神光葉は慎重に警戒しながら、楊枝を手に取り、まずはライムの実のような鶸色の練り菓子を一口をつまんでから、口に運んだ。


 口に入れた瞬間、ほのかな甘酸っぱさが口に広がり、カッと目を見開く。


「…………お、おいしい……」


 ふと口にした言葉に、美神光葉は恥ずかしそうに水無月龍臣やゴーシュ、メア・リメンター・バジリスクに目を向ける。あまりの美味しさに、本音が出てしまったことに冷静さを失ってしまっていた。


 常に冷静で行動をしなければならない間者にとってあるまじき本音に、動揺が隠しきれない。そんな彼女に水無月龍臣とゴーシュは、ぐっ、と親指を立ててる。


「口に合って何よりだ」


「……そ、そんなことは、あるかもしれませんが……、ん、まあ……、まあまあ、でした」


 そういって、顔をトマトのように真っ赤にして恥ずかしそうに目を逸らし、抹茶を一気に飲み干す。


 あまりの動揺に、練り菓子を全部食べてから飲まなければならない茶会の作法を破ってしまったことに、少し過ぎてから気がつき、それを隣席のゴーシュが指摘する。


「ふふふ、キミにも間違いはするんだね」


「ゴーシュ……」


 美神光葉は悔しさに歯噛みした。


 どちらにしろ、正式な茶事と違い、飲む順番が違うのだから、仕方ないと彼女は自分に言い聞かせて、


「……結構なお手前でした」


 そう言って、美神光葉は前横斜めにいるメア・リメンター・バジリスクを見た。


 あなたのためのお茶会なのだ飲みなさい、という圧を込めて見つめてから頭を下げる。


 その視線を受けたメア・リメンター・バジリスクは、美神光葉の理不尽な八つ当たりに呆れる。茶会は水無月龍臣が勝手に開き、ただ招かれただけで、作法を間違えたのは彼女──美神光葉自身である。間違えた恥ずかしさをぶつけないで欲しい、とため息を吐き、楊枝を手に取った。


 何はともあれ、水無月龍臣が出した和菓子に興味がないわけではない。女性が甘味な食べ物には目がないのは、亜人も同じである。


 メア・リメンター・バジリスクは、一斤の紅花で染めたような淡い紅色の練り菓子をひと刺しにして、口に運ぶ。


「…………!」


 するとメア・リメンター・バジリスクはカッと目を見開いて、顔が綻んだ。


 とても幸せそうな顔となった後に、美神光葉と同じように我に返ったように、ゆっくりと水無月龍臣や美神光葉に目を向ける。そんな彼女に水無月龍臣とゴーシュは、ぐっ、と親指を立ててる。


「口に合って何よりだ」


 そう微笑み、水無月龍臣は二杯目のお茶を啜り言った。


「さて、メア殿。茶菓子をお気に召したところで、話しをしょうではないか」


 それに周囲に緊張感が走る。別段、彼が意図的に声色を変えて、緊張感を与えようとしているわけではない。ただ単に、メア・リメンター・バジリスク、美神光葉が本題に入るという水無月龍臣の言葉に緊張しているだけに過ぎない。


 必要以上に緊張する彼女たちに、様子を窺っていたゴーシュはやれやれと肩をすくめる。


「美神光葉。メア・リメンター・バジリスク。そんなに必要以上に緊張してはせっかくの場が無駄にしてしまうよ。龍臣もいくら緊張させようとする意図がなくとも言葉を選んだ方がいい。彼女たちが緊張してしまうよ」


 そう言って、ゴーシュは双方を嗜めると、お茶を飲み干した。


「そうか。緊張させてしまったか。すまんな。では、話しをしょうではないか」


 素直に自分の非を認めて謝罪すると、かっかっ、と豪快に笑い、改めて本題に入った。


「メア殿。始めに告げておくが拙者は、おぬしのことは知っている。メア殿の父君と面識がある」


「お父様と……?」


「ああ。まだこの世界に来て間もない頃に一度だけ世話になってもらったのだ」


 そういって、水無月龍臣は語り出した。


 日本で侍をしていた出来事、戦で散った仲間のこと。


 銀色の髪をした美しい女性と出会ったこと。


 女性が人間ではなく龍人で、異世界の住人だったこと。


 女性が村人に襲われた時、助けなくとも死ね心配もなかったにもかかわらず、盾となって護ろうとしたこと。


 殺されかけたが決して離れずに一緒にいたこと。


 その後、女性と結ばれたが周囲から反対され、連れ子と一緒にあっちこっちと巡ったこと。


 その際、メア・リメンター・バジリスクの両親に助けられた恩義があるということ。


 そのおかげで、最愛なる女性と一緒になれたことやその連れ子と、旅の途中で身籠もった子と暮らせていることを感謝していることを【戦闘狂ナイトメア】────メア・リメンター・バジリスクに話して聞かせた。


 彼女はただ聞いていた。どのような心境で聞いていたかは表情からは計り知れない。


 たまに、視線を逸らして、歯噛みしていることから若干の嫉妬を覚えたのかもしれない。特に妻との馴れ初め辺りは、人生を暗く生きている者には眩し過ぎるものがあった。


 それでも聞かす辺りは、水無月龍臣は人が悪い。無意識で聞かせているのならば、天然と言わざるを得ない。


「余計なお世話かもしれないが、メア殿がこれ以上、自分を偽って殺戮をさせたくはないのだ。幼い頃のメア殿を拙者は知っている。それに、此処であったことは……────」


「知っているのなら、構わないで頂戴」


 メア・リメンター・バジリスクは視線を鋭くさせ、水無月龍臣が紡ごうとしていた言葉を遮るかのように言って、抉るように見つめる。よっぽど、言ってはほしくはない案件なのだろうが、刺すような視線に水無月龍臣は動じず、なおも続ける。


「そうはいかぬ。拙者はあの時に、不知火諸島であったことを止められなかったことを。恩人を助けられなかったことを悔いている。だからこそ、恩人の娘をこの先に、荒波が起こるとわかっていて、航海に出ようとするところみすみす放っとくような大人ではない。拙者は、止めたい。助けたい。どんな拒絶でも拙者は諦めないどうしょうもない人間なのだ。勝手なことを申し上げるがな」


 朗らかだった顔を鋭くさせて、文字通り真剣な表情でメア・リメンター・バジリスクを見据える。その顔には、固い意志が感じられ、彼女は吐き出そうとした言葉を飲み込まざるを得ない。


「出会いと別れは、時として幸にもなり不幸にもなる。全ての出会いや別れが幸や不幸にあたるわけではないが、そういった成り立ちが積み重なって今がある。メア殿の今を拙者は否定も肯定もしない。決めるのは自分自身であって、他の者が決めていいものではない」


「……今まで、幸せだった人間なんかに言われたくない!」


 メア・リメンター・バジリスクはふっと、鋭い視線で水無月龍臣を射貫いてきた。次第に表情が不機嫌そうに曇っていく。


「そこまで御存じならば、何であの時に……────いえ、あの時はどう足掻いても人間が関与しても何もできませんでしたから、仕方ありません。それよりも私には、もう……、戻れる場所がないことも知っているはず」


「ああ。知っているとも。ここで殺戮を犯していることが赤羽綺羅殿のためであると考えて、ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーという者の特殊能力――〈堕天〉と〈反転〉によって、【戦闘狂ナイトメア】に堕とされてしまったことも」


「……そ、そこまでわかっていながら何故……」


 メア・リメンター・バジリスクが困惑したように言った。同席していた美神光葉も驚いたように目を見開き、同じ反応をする。


 ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアー。


 美神光葉はその名に聞き覚えがあった。


 赤羽宗家に仕える使者という肩書きの持ち主だが、それ以外の情報は不透明だ。素性、種族、経歴、性別さえもどんな情報網を駆使しても詳細な情報が出てこない。そのため、ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーは、諜報部からも要注意人物として挙げられる名である。


 ふっと現れては姿を消す。神出鬼没という言葉が似合う者が、ここまで似合う者はいないだろうと言わしめた人物だ。


 その者が要注意人物として挙げられるもっともな理由として、特殊能力である〈堕天〉と〈反転〉を持っていることがある。


 亜人には、時には特殊能力を持った者が産まれるとされている。それはある条件を満たした時によって、能力が必ずしも備わってくるわけではない。


 ある程度の条件は必要だが、備わるかどうかは殆どが運任せである。銀龍族と人間とのハーフにのみ稀に産まれてくる〈原子核放射砲〉が有名な例といえるだろう。


 〈原子核放射砲〉の場合は、銀龍族と人間との混血種であることだが、禁忌とされるこの能力は稀である。産まれながら備わっている可能性は低く、産まれてから後から備わる記述はない。


 だからこそ、特殊能力というのは、その貴重さゆえに重宝されるが〈原子核放射砲〉のように世界を破壊しかねない力は禁忌とし、忌み嫌われてしまうのが現状である。


 禁忌とされる能力は、〈原子核放射砲〉の他にも数々存在し、〈堕天〉と〈反転〉もその二つであるが、もっとも恐れられている能力といっても過言ではない。


 〈堕天〉とは、文字通り相手を堕とすこと能力だ。精神的に、物理的に、地に堕とすことが出来るとされているがそれがどんな現象を起こすかは詳しくはわかってはいない。〈反転〉も陰を陽に、陽を陰に。光を闇に、闇を光に変換することができるとされているが〈堕天〉の能力と同じように詳しく解明されていない能力の一つといえる。


「ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーだと……」


「美神光葉────キミもご存知のようだね」


 隣席のゴーシュが水無月龍臣とメア・リメンター・バジリスクの対話から目を離さずに言った。


 美神光葉も二人の対話を眺めながらも返事をする。


「ええ。私も奴が怪しいと前々から考えていましたから」


「まさかの美神光葉と同意見とはね……これが、我が愛しいの義妹だったら大歓喜だったよ」


「その場合は、文字通りの狂喜乱舞するのでしょうね」


 美神光葉はチクリと言った。


 ゴーシュの場合は、噎び泣きながらも狂った笑いを上げて踊りかねない。


 その言葉に、ゴーシュは肩を竦める。


「そうだね。その時は、ベートーヴェンの交響曲第九を聞きながら舞い踊ってみよう」


「やめなさい。同期生として恥ずかしい。義妹と意見が合っただけで、そんなに喜ばない」


「ボクは恥ずかしくないよ」


 ゴーシュは腰に手を当てて、胸を張って言い切った。


 義妹の気持ちになって考えろ、と美神光葉は口にしょうとしたが出かかった言葉を呑み戻した。ゴーシュの場合は、義妹の気持ちに考えようとしても手遅れだろう。これ以上、何言っても無駄な者にかけることはないと呆れ果てながらも話を戻す。


「ハトラレ・アローラやあらゆる世界線に置いて、知り得る情報だけですが、〈堕天〉と〈反転〉を持つとされている者は限られています。ルシアスと、────ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーしかいないでしょうから、メアを【戦闘狂ナイトメア】に堕としたのは、〈堕天〉と〈反転〉の可能性は高いのは明白でしょう」


「少なくとも、亜人を【戦闘狂ナイトメア】に堕とすには、〈堕天〉と〈反転〉の能力が必要不可欠といえる。少なくとも精神汚染からの洗脳では、光と闇が反発し合って、それに伴って副作用が起こるだろうし」


「そうですね」


 ゴーシュの言葉に美神光葉は首肯する。


「光と闇は相容れないものですからね」


「ただ──」


 ゴーシュは人差し指を立てる。


「不可解な点が少しある」


「不可解な点?」


「ああ。今のメアの状態を〈魔彩〉でスキャンすればわかるよ」


 そう言われて、美神光葉は相手の魔力が色彩として観て取れる〈魔彩〉を行使し、メア・リメンター・バジリスクの魔力の色を視る。


 メア・リメンター・バジリスクは、赤龍族系統の種族。魔力と司る力の属性は火。色彩は赤銅色である。しかし、現在のメア・リメンター・バジリスクの魔力の色は、黒みがかった赤へと変質していた。


 それは、【戦闘狂ナイトメア】に堕とすには不十分の状態といえる。


「気付いたかい?」


「これは一体……」


「精神汚染からの洗脳では【戦闘狂ナイトメア】には堕とすのは不十分だ。【戦闘狂ナイトメア】とは、絶望や恐怖、憎悪といった負の感情により、精神に急激的な負荷によって引き起こされる心的外傷の一種ではあるけれど、経緯が少し違うからね」


「ええ。魔力や司る力さえも闇に染まらなければなりませんから。でも……今のメアは完全に黒に染まっているわけではありません」


「ああ。明らかに中途半端だ。元に戻る可能性は十分にはあるけれど、このまま中途半端な状態が続けば、光と闇の魔力がぶつかりあって逆流が起こってしまう」


「それでは、このままだと、逆流を防ごうとした故に防衛本能が働いてしまい、精神はおろか身体までも壊れかねないのは明白です」


「ああ。だからこそ、ボクらはメアと話し合いをして、原因を探って、元に戻す必要があるということさ」


 そう言って、ゴーシュは水無月龍臣とメア・リメンター・バジリスクを見護る。美神光葉もそれに倣って二人を見据えた。




 メア・リメンター・バジリスクは、ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーという名を聞いて、明らかに動揺をした。


 それは無理もない。ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーは、彼女にとって切りたくとも切れない糸のようなものだから。


 メア・リメンター・バジリスクはしばらくの間は、困惑状態だったがすぐに眉をひそめる。


「……ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアー。何故その名を知っている?」


「それは簡単だ。拙者はこれまで、ゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーについて、ひと通りの調査を続けてきた。それによって、彼が反転した力を受け入れる意思を待たせるための〈堕天〉、陽の力を陰に変換する〈反転〉をせずに、人間や亜人を【戦闘狂ナイトメア】へと堕とす実験を聞かされた。その被験者にそなた────メア殿の名があり、今すぐ止めなければと奔走した次第だ」


 さて、と水無月龍臣は一旦区切る。


「実験場を駆けつけた時には、既に遅く。メア殿が自分の故郷である不知火諸島を襲撃していた。何とかして止めたかった拙者は、既に不知火諸島にいたゴーシュに話し合いの場を設けようと無理難題を頼んでしまった。うむ。メア殿が茶会を受け入れたことはせっかく用意をしてくれたゴーシュも報われたことだろう」


「ボクは死んでないけど急遽、準備したかいがあったよ」


 ゴーシュは笑った。それをすかさず、


「すまないな。でも、でかしたぞ息子よ」


 と義父────水無月龍臣は謝った後に誉め称える。それをゴーシュはまんざらでもないように微笑みながら頷いたのを確認し、水無月龍臣は話を戻す。


「【戦闘狂ナイトメア】についてはまだ不可解な点が多い。解明されていないところが多いと聞かされている。拙者は人間であり魔術に関してはからっきしだ。詳しいことはわからないが術式の云々は、そこに精通したゲレイザー殿に少しばかり調べてもらった。それによって、今の状態のメア殿ならば助かる必要があることがわかった」


「助かる?」


「ああ。このままでは、光と闇の力が反発して危険だ。早く解かなければならぬ」


 そう言って、前のめりになって続ける。


「メア殿。おぬしを【戦闘狂ナイトメア】に堕としいれたのは、自分を犠牲してまで愛する相手を助けようとする気持ちなのではないか?」


「──ッ!?」


 水無月龍臣の言葉にメア・リメンター・バジリスクは息をつまらせた。その反応だけで、〈反転〉や〈堕天〉を用いらずに【戦闘狂ナイトメア】に堕とす方法に“メア・リメンター・バジリスクの恋心”を利用されたことを諭った。


「愛することは、実にいいことだ。拙者もその質だから文句は言わない。だが……現在メア殿が行っているこれは違うのだ。────赤羽綺羅殿はホントにそれを願っていたのか?」


 メア・リメンター・バジリスクは、驚いたように目を見開く。


「──ッ!?」


「それは、本人の口からではなく、誰かにそう聞かされただけではないのか。その者から【戦闘狂ナイトメア】になって邪魔者を一掃して、綺羅殿の役に立たないか、と頼まれただけではないか」


「……そ、それは……」


 メア・リメンター・バジリスクが困惑したように言う。視線を彷徨わせ、否定する言葉を探す。そんな彼女に、水無月龍臣は構わず、口を開く。


「それはもはや、御主の自己犠牲愛を利用した悪辣でしか他ならぬ」


 水無月龍臣の言葉に、メア・リメンター・バジリスクが肩を落とす。


 それは無理もない。今の彼女にとって、水無月龍臣の言葉のひとつひとつが重すぎる。今まで綺羅のためだと使って、代償を引き替えに得た【戦闘狂ナイトメア】の力を使い、大量殺戮を行っていた後では後悔は図り知れない。


 誰もが恐れる殺戮者に仕立た者は、間違いなくゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーだ。


 赤羽綺羅を慕うメア・リメンター・バジリスクにゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーに【戦闘狂ナイトメア】となるために実験体となれば赤羽綺羅の役に立つと唆されたに過ぎない。


 だが。


 それだけでは、メア・リメンター・バジリスクはゾォゥズフゥー・キャリーディスペアーの言うことを信頼しなかったはずである。魔術を行使できない水無月龍臣は、ゴーシュにメア・リメンター・バジリスクに他の術式――特に〈催眠〉系の術式を行使された跡はないかを事前に探ってもらっていた。そのため、〈催眠〉の術式が施されていることは確認済みである。


 それは、人格形成の保つギリギリまで練られていたが、ゴーシュが遠隔で術式の解析と編み込まれていた術式を解体を美神光葉と戦っている辺りで解かしていた。


 おかげで正気を戻りつつあるが、肝心な芯の部分の〈催眠〉が解かれてはいない。これからはゴーシュが遠隔で解術しながら、水無月龍臣が話し合いをもって、メア・リメンター・バジリスクの心に働きかかなければならない。


 だが。


 時間はかけられない。


 何故ならば、水無月龍臣とゴーシュはお茶会に近づく不穏な影が迫っていることに気付いている。


 ──この気配……奴か……。


 ──早く彼女を【戦闘狂ナイトメア】から解き放たなければ…………。


 水無月龍臣は、焦る気持ちを落ち着かせて、メア・リメンター・バジリスクと真っ直ぐと向かい合い、


「赤羽綺羅は、愛するおぬしを危険な目を合わせるような男ではなかったはずだ」


 諭すように言う。




「少なくとも、大事な友を殺させるような男ではないはず、とメア殿もわかっているはずだ」




 【戦闘狂ナイトメア】については、絶望や恐怖、憎悪といった負の感情により、精神に急激的な負荷によって引き起こされる心的外傷の一種であり、それに伴い、陽の力を陰に変換する反転と闇の力を受け入れるための堕天により引き起こされる事象。それ以外の構造や解明は全くされてはいない。


 メア・リメンター・バジリスクのように力の色に淀みが見受けられるが完全な黒ではない状況は元に戻すには容易い。しかし、あたかも不完全な堕とし方に疑問を抱かざるを得ない。


「これが誰かの策略、もしくは実験だとしても、メアを元に戻さなければならない。彼女がある程度を受け入れているとしていたら、何とかして目を醒まさければならないのは間違いありません」


「キミは、イイヒトだね。間者にはとことん向かないよ美神光葉」


「急にいきなり何ですか。からかうのはやめてください」


 ゴーシュの言葉に美神光葉は怪しい目を向ける。


「率直な感想さ。同期生に対して躰を張って止めたり、説得したり見護ったりしたり、キミは自分が思っているよりも、ボクよりも性格がいいよ」


「何ですかその評価は?」


 あなたは他者を評価する立場ではない、と美神光葉は言わんばかりの冷ややかな態度を示す。


「あなたが義妹以外の誰かを誉め出すと怪しさが倍増します。何を企んでいるのですか?」


 美神光葉の問いにゴーシュは肩をすくめ、「ははは、ボクは信頼されてないだね」と、言ってから答える。


「単なるキミに対しての感想さ。キミは間者にしては優しすぎると感じたからさ。もうちっと、自分が感じているよりも、間者らしく冷酷にした方がいいよ」


「何を言っているのかは図りかねますが、忠告として聞いておきます。あなたが感じた通りに、私はあなたに対して一ミリの信頼など抱いていませんから、何か企んでいたら斬りかかりますから、そのつもりで」


 美神光葉は一切の信頼を抱いていない目で見据えて牽制した。が、ゴーシュはその牽制に動じることなく、無駄な爽やかな微笑みを向ける。


「わかったよ。……でも、やはりボクの中心はシルベットさ。それに仇なすつもりなら、遠慮せずに企ませてもらうし、反撃を仕掛けるからそのつもりでね」


「……無駄な義妹愛ですね。その義妹からも信頼はされてないと思いますよ、きっと」


 ジト目でゴーシュを見据えて言った美神光葉は、すぐさま話を元に戻す。


「それよりも今はメアです。このままでは、彼女が堕ちてしまいかねないのは明白です。下手に精神的に追い詰めても元もこうもありませんよ」


 美神光葉は何とか水無月龍臣にこれ以上の追求をさせまいと口を開こうとした時、隣にいたゴーシュが手で制した。


「いいから黙って見てなよ」


「ですが、このままではメアがどうなるか目に見えます」


「だからといって、オブラートに包んでも【戦闘狂ナイトメア】はもう彼女を縛りつけている。殺戮を行うことに狂喜を抱くケモノさ。それを本人がある程度を受け入れているのならば、それをなくさなければならない」


「それでも精神的に病んだら既に取り返しのつかないことになりますよ」


「ああ。精神的に負荷をかけないように時間をかける必要があるだろう。真実を伝えなくとも彼女が堕ちていることには変わらない事実なんだ」


 そう言って、爽やかな微笑みをそのままに視線を鋭くさせて、美神光葉を見据える。彼の険悪な雰囲気に美神光葉は、思わず唾液を飲み込み、刀に手をかけて臨戦態勢と移った。


 今にも斬りかかりそうな彼女にゴーシュはせせら笑う。


「随分とイイヒトだね。やはり間者として失格なんじゃないのかな」


「莫迦にするのも時と場を────」


「いいから座って行く末を見守りなよ美神光葉」


 声を荒げる美神光葉の言葉を遮り、ゴーシュは動じることなく、落ち着かせようと言葉を綴る。


「和らげな言葉で肝心なところを隠しても、本人のためにはならない。真実を知っているボクらがまたこうして茶会を設ける機会なんて殆どないかもしれない。数少ない出会いの中で、奴の監視をわずかに逃れている今なら伝えられることがある」


「奴の監視…………?」


「ああ。奴の監視さ。今はあらかじめこの庭園に監視されないように〈妨害〉の術式を幾重にも張り巡らせている。ついでに悟られないように〈幻術〉で相手には見せかけの映像を見せているからひとまず安心して構わない」


「いつからそんな準備を……? あなた方は【戦闘狂ナイトメア】が殺戮を開始して報告を受けてから駆け付けたわけではありませんね。少なくとも、報告を受けて準備を行っては間に合いませんから」


「ふふふ」


 ゴーシュは瞼を閉じて微笑んだ。


「それは肯定と受けとっていいんですね」


「どっちを取るのかはキミの勝手だよ。それが真実かどうかは別としてね」


「相も変わらず、相手を翻弄させることが好きなんですね変態ですか」


「そちらに関しても、キミがどう取るのかはキミの勝手さ。それが本当かどうかはまた別の話さ」


 ゴーシュはそう言って、相も変わらず相手を翻弄しょうとする。そんな彼に美神光葉は苛立ちが募る。何とか苛立ちを抑えて、美神光葉は注意深くゴーシュたちを観察しながら考えを巡らす。


 〈妨害〉と幻術を同時に展開する際、かなりの時間と魔力を浪費する。


 それは範囲によって様々だが、百ミリメートルだけでも相当といえる。ざっと見回しただけだが、茶会を開いている庭園は少なくとも三十二畳ほどの広さはある。魔術が得意な亜人ならば造作もないかもしれないが、魔術がそこまで得意ではないゴーシュでは、編み込むには時間がかかることは予想される。魔力量が少ない人間である水無月龍臣では到底不可能だ。


 彼らだけでは、この空間は創り出すことは出来ない。


「あなた方の他に誰かいるんでしょうか? あなた方だけで、この庭園全体に術式を半日で編み込むことは不可能ですから」


「さあ。かなり見くびられている感じだけど、話が少し逸れはじめているよ。今はあっちが大事だよ」


 そう言って、はぐらかしたゴーシュは前方を指し示す。


「今は、数少ない出会いの中でどのくらい彼女に伝えて、わかってもらえるかの瀬戸際だよ」


 ゴーシュは美神光葉を前に向けさせた。


 そこには依然として水無月龍臣とメア・リメンター・バジリスクの会話が続いている。




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