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第一章 四十二




 ──〈錬成異空間〉に創られし四聖市──




 殆どが廃墟と化している住宅地から真南川を挟んで、向かい岸の市街地にて光の粒子が一塊に集まり、毒々しい濃い紫色の靄が形成されていき、ゆっくりと大きくなっていく。二メートル程で止まり、ある形へと変化を遂げる。


 それは龍だ。龍といっても芋虫に龍の頭部と鋭い背鰭を生やしたいびつな龍────毒龍だ。


「……どうにか命を長らえたようだ……」


 毒龍────ラスマノスはゴーシュの一閃を浴びて散華したのは間違いない。


 あの戦いの前に万が一のことを考え、依り代を用意した恩寵だろう。銀龍────シルベットや炎龍────ドレイクによって手負いとなったことにより念のために用心したかいがあったと言わざるをえない。時間はかかりはしたが、かろうじて蘇生できた。


 とはいえ、何度もできるほど簡単ではない。三十回に一度しか成功しないという至難の秘儀。今回はゴーシュの一閃を浴びる直前に魂を依り代に移すことに成功しなければ、死滅していただろう。依り代を用意したとしても魂の転生が上手くいかなければ何の意味もない。


 これは大きな賭けといえる。ラスマノスはその賭けに勝った。だからこそ魂を繋ぐことに成功したといえる。


 成功に導いてくれたのは僥倖と、手のひらに浮かぶ〈ルシアスの加護〉及び〈ルシアスの呪い〉に違いないだろう。ラスマノスは忌ま忌ましげに〈ルシアスの加護〉及び〈ルシアスの呪い〉を見据える。


 〈ルシアスの加護〉及び〈ルシアスの呪い〉は【創世敬団ジェネシス】の幹部全員に刻印されている。それにより、ルシアスの庇護下であるが支配下に置かれている。叛逆行為と見なされる言動をしても〈ルシアスの呪い〉は発動はしない。


 だが、行動を起こせば、魔力や体力を吸われていき、致死量の猛毒を打ち込まれる。だからといって、ルシアスは強毒と瘴気を司っているため、何ともないのだが……。


「反逆者には、〈ルシアスの加護〉は一切発動もしないはずだが……。まだ利用価値があるというわけか」


 ラスマノスは手のひらに浮かぶ〈ルシアスの加護〉及び〈ルシアスの呪い〉の刻印を握りしめる。


「まあ。依り代のおかげで躯は生まれ変わった。あの老体も堪えていたところだ。まだ人間どもを絶滅させるまで生きなければならんからな」


 蘇生できたとしても、魂と躯の定着には時間がかかる。


 なんとか竜らしき形を保っているが、依り代としていた使った躯は、軍曹であった紫龍のものだ。毒龍と紫龍の先祖が同じであり、遺伝子の配列が似ている。躯を元の形を変えているだけ、甦った躯は生まれたての赤子のようなものだ。心金は脈動するたび、耐えがたい激痛を発している。指一本動かすだけでもぐったりと疲れてしまう。


 まだ組み換えただけの躯は、血と魔力と滋養が足りていない。最大限に動きまわるようにため、魔術で体のサイズを縮小させて一計を案じたが、それでも満足に動けるわけではない。


 全長二メートルから、百八十センチ程度へと縮小させて、変身の魔術も行使する。これらは魔力をあんまり消費はしない。むしろ巨大な躯で動き回るよりは最低限な魔力と体力で済むから効率は上がる。


 だが、それでは不十分だ。しばらくは本格的な戦闘はできない不足している血と魔力と滋養を補充し休養するには、人型が適してる。しばらくは人間の街で雌伏する必要があることも考慮も含めて。


 ラスマノスは現在、十五、六歳程の美青年であった。殆どは依り代であった軍曹のものだ。糸まとわぬ逞しい躯はよく鍛え上げられ健康体といえる。これなら、しばらく休養を取れば、戦うこてができる。


 ラスマノスはひとまずとして生まれ変わったことに忌ま忌ましげながらもルシアスに感謝することにした。


「完全復活を遂げたら、我が覇道の成就で必ず晴らさん。特に、あの忌々しい銀龍一族の兄妹から────ん!?」


 と、執念と熱情を込めてガラドは誓うと同時に顔を上げる。視線を真南川の向こう岸にある住宅地に目を向けて、ラスマノスは気づいた。燃え盛るような灼熱の色に染まる天空にある人影を。


 朱雀。南方大陸ボルコナにて守護者であり支配者。連帯責任だといって、失言した部下たちを判決を待たずに焼き殺したという逸話がある残酷な独裁国家の帝王が人間界に降臨していることにラスマノスは目を細める。


「ほう。蘇生している間に面白いことになっているではないか」


 ラスマノスが朱雀に直接会ったことは数えるほどしかなく、手合わせを二、三度程しかない。その時の彼女の印象は、荒々しかったと覚えている。


 噂話では、周囲の意見など聞かず、求めることをしない。自分の意見に反論をしたら切り捨てる。自分一人で決めて、実行に移す。そんな独裁者の部分ばかりが独り歩きしていたが、手合わせして気づいた。彼女は噂とは違い、他者のことを慮る独裁者とは正反対の性格であることに。


「どういった経緯があった元老院が流した噂話かは知らんが、あんな支配者という仮面を付けた守護者が何しに、人間界に降臨したのか、想像できる」


 炎のように扱いづらい性格である朱雀が人間界に降臨した意図を汲み取り、ラスマノスは彼女がどのような行動を起こすか見物することにした。


「さあ。四聖獣の中でもっとも人間のために考えてなさそうで、実は一番に考えている朱雀よ。どうするのか見物よ」




      ◇




「────どこら辺まで水無月龍臣から訊いているのか、教えてくれる年増のオバハン」




 ゴーシュの言葉に、周囲が静まり返り、冷たく不穏な空気が流れた。


 朱雀────煌焔は何十万兆かは定かではないが、長い間生きてから生まれ変わり、何度も繰り返し生を保ってきた身。なので、老体ではないが、魂は既にハトラレ・アローラの大陸が分けられる前──地球で例えるなら、恐竜が栄える前の創世期──最古からである。女性ゆえに歳を少し気にしている。不死鳥にもかかわらず。


「──と、言った」


 煌焔は静かに呟いた。その声はあまりにも小さく、ゴーシュには届いてはいなかった。躯は怒りでふるふると震えている朱雀に対して畏れることなく、彼は言葉をかける。


「どうしたんだい? なんだか訊こえないじゃないか。云いたいことがあるなら、もっとハキハキと相手に聞こえるように声を出しなよ」


 何が癇にさわったのかは知らないが、彼の言葉は刺々しい。


 投降した場合は、義妹を助けてくれるという煌焔の条件は、捕虜されるものの、義妹を恋人以上の好意を持ち、義妹のためなら何でもするという彼にとっては条件は良いといえるが。


 学舎の頃からゴーシュとの付き合いがある美神光葉は推測する。恐らく条件は出したものの、自らの力を見せつけて相手を従わせようとしているやり方が気に喰わなかった、もしくは、このまま終わらせるのが面白くなかったかのどちらかだろう。美神光葉は後者と見る。禁句を発言する時に、笑ったからだ。


 ──本当、余計なことばかり……。


 わざわざ怒らせるように、何を言われても動揺しなかったゴーシュにしては珍しく、発破をかけるために、あからさまに言葉遣いが乱暴だ。


 それがきっかけと言わんばかりに、煌焔の周囲を噴火するときに伴うドロドロとしたマグマが噴き出してくる。


 そして──


「今なんと、言ったと聞いているんだよ。この義妹大好き変態野郎ッ!!」


 活火山の如く、怒り狂ったと同時に、マグマのような火の塊が地上に降り注ぎ、周囲を火の海に染め上げる。


 溢れる怒りと殺気を放つ朱雀にゴーシュは、やれやれ、と刀を構えた。


 血のように深紅の月。その月が照らす空を蹂躙するのは、燃え盛る炎の大軍。その大軍を率いて、大地を紅く照らす月を背にして、逆巻く炎のような髪と焔眼を持つ朱雀────煌焔は見下ろして、口端を上げて、白い牙が覗かせて嗤う。


「ほう。妾と戦う気か? いい度胸だな」


「ボクとしては、戦うつもりはさらさらないんだが……」


「わざわざ怒らせて、そうは見えないが……」


「そうかい。ボクとしては、元老院の糞ジジイ共に嫌がらせされて百年。それからハトラレ・アローラから出ていないところ、自国から一歩も出ていないあなたがボクの義父と接触する機会はあったのか、訊きたくってね。接触していたら、ボクのことは知っているだろう」


「ああ。知っているよ。だから投降して、血迷った行動をしないように監視しょうとしたんだ」


「余計なお世話さ」


 ゴーシュにしては珍しく苛立ちながら言葉を紡ぐ。


「言ったろ。ボクの原動力は愛しい義妹──シルベットさ。彼女無しではもう生きてはいけない」


「そろそろ義妹離れした方がいいと思うぞ。義妹が迷惑がって嫌われても妾としては仕方ないといわざるを得ない」


「誰に言われてもやめないよ。五年──追われる立場となって五年そこらでも胸が苦しい。これまで毎日のように付けていた我愛しの義妹────シルベットの成長日記を見るだけで愛しいのさ」


「つけていたのか、義妹の成長日記……」


「ああ。この世から生誕してから五年前まで毎日書いていたさ。写真も映像もね。雨の日も風の日も嵐の日も欠かさず、義妹の成長日記を付けていた。屋敷になかなか帰れなかった寮生活の時も、遠隔術式を用いて、〈転移〉して義妹の姿を焼き付けるために会いにいった。授業中も突然会いたくなって、こっそり抜け出した時もあったね」


『…………』


 白銀の青年──ゴーシュの何気ない一言に煌焔は引いた。後ろで従う緋色の和服を纏う少年少女の双子──鳳凰も、周囲に包囲網を敷く千ほどいるボルコナ兵もだ。学舎から一緒だった美神光葉でさえ知らなかったが、時折寮や校内から姿を消す理由に合点がいき、呆れ果てている。黒の間者と炎の化身達を凍りつかせてもなお、義妹への異常な愛を語る彼は微笑みを絶やさない。


「日々の身長、体重。座高、上腕、前腕。バスト、ウエスト、ヒップといったスリーサイズは勿論。視力や握力、血圧、血糖値、尿酸値。趣味や嗜好。お気に入りの洋服や和服。鍛練で得た必殺技。生誕から最初に覚えた言葉に至るまで網羅している」


 一瞬の静寂が訪れる。その場にいる皆が、うえ……、といった顔をしている。それも無理もない。


 誰もがゴーシュが義妹大好きな変態だと知らされていたものの、此処までここまで重症とは思わなかった。そのため、朱雀────煌焔は怒りを忘れてドン引きである。


 朱雀──煌焔に兄弟姉妹はいない。彼女は炎から産まれてから、ひとりだ。勿論、血縁関係の家族はいない。美神光葉も兄弟姉妹はおらず、ひとりっ子である。もし居るという前提で、自分の成長日記を家族の誰かが盗聴、盗撮して付けていたとしたらと考えただけで気持ち悪い。鳥肌ものだ。考えるだけで、怖気が走る。


 身長や体重はまだわかる。趣味や嗜好とか、お気に入りの洋服や和服。鍛練で得た必殺技はギリでよしとしょう。


 座高、上腕、前腕とか、バスト、ウエスト、ヒップといったスリーサイズ。視力や握力、血圧、血糖値、尿酸値とか成長日記を記録する意味があるのか。記録するとしても、義兄ではなく、両親なのではないか。それでも座高、上腕、前腕とか、バスト、ウエスト、ヒップといったスリーサイズ。視力や握力、血圧、血糖値、尿酸値は少し重い病にかからない限りは付けたりはしない。


 被害者である義妹────――シルベットがゴーシュを毛嫌いするのも頷ける。


 朱雀────煌焔は、神に等しき存在である聖獣として、ゴーシュに諭すように言う。


「もう止めておけ。嫌われても仕方ないぞ」


「既に嫌われている。もう止められはしない」


 ゴーシュは煌焔の忠告を訊かない。誰かに言われて訊くような男なら、ゴーシュは真っ当な人生を歩んでいただろう。


 そんな彼に呆れ果てると、煌焔は美神光葉に、こんな奴と逢い引きしているなんてすまない、と目線を送った後、〈念話〉で伝える。


『…………条件と作戦は変更だ。美神光葉────貴様には密偵の仕事をやる。報酬は、貴様が助け出した人間の少年少女を救い出す。次いでに、【創世敬団ジェネシス】側にいたことを内密してやる。こんな変態と少しでも恋仲だと言った詫びとして、妾たちとは無関係を装ってやろう』


『無関係……? 今ここで対面していては無関係にはなりませんが……』


『なに。ゴーシュがやらかしているんだ。わざわざ妾を怒らせるために手をうってきたのだ。無関係とは言わないまでも、少なくとも、妾たちの戦いに巻き込まれたという名目はできる。あとは、貴様の口の上手さだがな──────』


 そう言って、任務を伝えると〈念話〉を切った。


「いくら義妹を必要以上に愛しているからといって、妾にと……、と、年増の……お、おば、オバハンといって赦されるとでも……」


 年増のオバハン、という年齢を気にする煌焔にとって二重の禁句ワードをとても言いにくそうにしながら口にする。


「聖獣ならば広い心で赦すべきさ。仮にも、聖獣は神に等しき存在。神というのは、広い心がなくてはならないものだ」


「それは、貴様がさっきの失言を悔いでいるのならば、だ。ゴーシュ──明らかに、妾を怒らせようとしているだろう」


「年の功というものは恐ろしいね。一度、切れてしまったら、もう止まらない。老害とは、即ち、心が狭くなってしまう病なのさ」


「喧嘩を売っているのか貴様は!」


「そうですよ。女性に年齢に触れるのは御法度ですよ!」


 美神光葉も思わず声を出す。これ以上、煌焔の機嫌を損なえば、自分に飛び火するかもしれない。それに個人的に年齢について言うゴーシュに腹が立って仕方ない。


 美神光葉と同じ思いなのか周囲のボルコナ兵────特に女性兵士からもゴーシュに対してブーイングを出される中、ゴーシュは傷ついた様子は一切ない。むしろ、清々しい顔をしている。


「別に年老いた女性にとやかく言うつもりはないさ。ただね。長生きすると、時間が経つのはあっという間さ。変わってしまう時があるのさ。時とは無情だね。我愛しき義妹────シルベットは別だから、そこんところはよろしく」


「…………」


 何とかひと呼吸して持ち直した朱雀────煌焔は、ゴーシュの義妹大好きぶりに本来の作戦を忘れかけていたが取り戻し、ふふん、と朱雀は唇の端を吊り上げる。


「で、ゴーシュよ。その義妹だがな」


 と、ゴーシュに言う。


「かなり近くにいるようだよ」


「そうかい」


 爽やかな微笑んだ。その顔に一寸の曇りはない。


 ゴーシュ・リンドブリムは外見上はいい男に入る分類だ。


 シュッとした爽やか顔立ちやスラリとした程よく筋肉がついている。胸板も厚い。胸元で抱きしめられたら、大概な女性は卒倒するに違いない。これで義妹に恋人感情を抱く変態でなければ良き義兄だったに違いないが、残念だと言わざるを得ない。朱雀や鳳凰の双子の片割れ────少女の煉太凰、ボルコナ兵に半分を占めている女性兵士といった女性陣も失笑を浮かべている。


 残念な義兄は爽やかな微笑みは相変わらず、


「ボクは自分のことよりもシルベットのことが大事なのさ。よって、ボクが質問したいことは、ひとつだけさ」


 そう言って、ゴーシュは口にする。


「我愛しき義妹────シルベットは何処だい?」


 煌焔はその質問で決めた。


「──変更だ。これより無礼を働き、義妹に不貞な気持ちを働くゴーシュ・リンドブリム、並びに一緒にいた美神光葉をこの場を持って、処刑する」


 すると朱雀は灼熱の業火を放ちながら、一直線にゴーシュと美神光葉の方に向かってきた。


 美神光葉が息を詰まらせて動けないでいると、ゴーシュは美神光葉の腕を掴んでくる。


「! キミは関係ないから逃げろ!」


「えっ? 関係ないからとか逃げろと言われても、逃げ道など……」


「く……!」


 そうこうしている間にも、火焔は迫ってくる。


 ゴーシュは焦れるようにのどを震わせると、一層強く美神光葉の腕を掴み、そのまま、横方──川の方を目がけて美神光葉の身体を放り投げた。


「き、きやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」


 同じ龍族としても、それぞれ種族によって、力は違う。銀龍は核を司るが、他にも腕力においてはどの龍族よりも遥かに超えている。


 美神光葉の躯は、軽々と上空に放り出され、ボルコナ兵の包囲網を乗り越えた。


 そして。


 幸運か不運か、清神翼とエクレールがいる河川敷──側で流れるから真南川の上流に勢いよく川に墜落した。




      ◇




 荒野といってもいい大地に溶岩が流れ、地獄絵図と化している住宅地の上空は依然として、朱雀──煌焔を筆頭にボルコナ兵が支配下にあった。


 煌焔を中心におよそ千以上のボルコナ兵が大きな円を描くように一定の間隔を空けて取り囲む陣形をとっている。これでは正面突破するには厳しい。人間の翼の目でもそれは容易ではないことがわかる。上空にある包囲網を瓦礫の陰を駆使しながらかい潜れたとしても、中央に近づくほどに瓦礫は疎らになり、荒野となっている状態である。さらにその先は溶岩が流れており、人間である翼を連れては行かれそうもない。


 朱雀らボルコナが包囲網を張っている地点から少し外れた地点──二人が現在いる住宅地から真南川を挟んで、向かい岸の市街地は、戦闘の跡はなく綺麗に残されている。敵組織から身を隠せる建物があるのは好都合といえるが。


「市街地には、妙な魔力反応がありますわ」


「……魔力反応」


「ええ。魔力反応とは即ち、魔力の波動ですわ。魔力の波動は、個人によって強弱がありますが種族ならわかります。そうですね……────ッ!?」


 エクレールは魔力の波動を探って何かに気づき、目を見開く。


 その反応に、清神翼は気づき、声をかけると、


「え、あ、な、なん、何でもありませんわ……」


 エクレールは慌てた。それはまるで心を見透かしたようなタイミングで訊かれたからに他ならない。


 エクレールが市街地から感じる魔力の波動は、昨日感じたラスマノスに似ていることに気づいたからだ。


 ラスマノス。毒龍。清神翼を拉致し、命を狙う【創世敬団ジェネシス】の瘴気と強毒を司る戦狂者は、エクレールの話によれば、魔力反応は突如として消失した。戦死したのかはどうかは、目撃していない翼もエクレールもわからない。


 ただ。


 魔力の波動による個人の判別は難しいが、ラスマノスと同じ種族──毒龍はこの世にはいない。つまり毒龍族は彼しかいない。絶滅寸前である。血統が近い紫龍がいるが彼らとは少し波動が違う。紫龍は少しおとなしめだ。市街地から感じる荒々しく禍々しい濃い紫色の魔力の波動である。だからこそ、紫龍の可能性は低いとされ、魔力の波動の持ち主は必然的にラスノマスだといえる。


 毒龍────ラスノマスの魔力の波動を翼に知らせようかどうかをエクレールは刹那の間で考え、下手に知らせて混乱されては困ると判断した矢先に翼に声をかけられたことにより、驚いて上擦ってしまった。


 そんな彼女の態度に清神翼は心配げな顔を向ける。


「大丈夫……?」


「……だ、だい、大丈夫ですわよ……」


「な、何かあったの……?」


「な、なん、何にもありませんわよ……」


 翼の心配する視線が心に突き刺さるエクレール。


 エクレールは現在、シンの精神汚染がまだ取れてはいない。シルベットに負けまいと自分を鼓舞して何とか精神汚染を振り払ったつもりだったが、少しばかりか彼女の中で残り、渦巻いている。


 清神翼にラスノマスがいると伝えて、精神的に追い詰めても、それを宥める余裕をエクレールは持ち合わせていない。だからこそ、ラスノマスのことを彼に伝えることは得策ではない。


 エクレールは現在、魔力の消費が激しい。〈錬成異空間〉の外界──つまり現実世界にいる天宮空と鷹羽亮太郎に【創世敬団ジェネシス】に襲われないように、不在している間の安全確保して幾重の術式を組んで来ている。これが大量の魔力を消費している原因である。


 すぐに戦闘不能に陥るほどではないが、このままでは亜人はおろか人間相手でも苦戦を強いられるほどの弱体化は確実だ。一旦の戦地離脱は免れない。不要な戦闘を避け、翼を連れて〈錬成異空間〉を脱出した方が安全といえるが、容易くは出来そうもない。


 何故なら、〈錬成異空間〉には現在、制限がかけられている。既に行使されていた〈錬成異空間〉に外部との連絡の遮断するための膜が張られている。それには、〈錬成異空間〉からの脱出口を術式は創れないように編み込まれており、〈錬成異空間〉外へ脱出することも連絡も出来ない。救難と脱出を塞がれてしまった状態である。


 蓮歌と連絡が取りたくとも出来ない。蓮歌と取れない以上は、エクレールの術式が蓮歌に引き継げられたこともわからない。そのために解術することが出来ないため、術式を行使し続けるしかない。


 このままでは敵組織に接触するまで魔力切れを起こしかねないと、何とか穴を見つけようと〈錬成異空間〉を調べたエクレールは、膜が弱いところを二ヵ所あることを発見した。


 一ヵ所は、朱雀らボルコナ兵が支配する住宅街────翼たちの向かい側と、もう一ヵ所は後ろ側の市街地にある四聖市駅前のショッピングモール付近だ。そこまで行かなければ、蓮歌はおろか外部との連絡は不可能といえるが、ついさっきまでは通信は狭い範囲ながらも出来ていた。その時に、蓮歌から連絡を来てもおかしくはなかった。河川敷からカラオケ店までは歩いても三十もかからない。ギリギリで通信は出来たはずである。


 にも拘らず、蓮歌からの連絡がなかったことを考慮するなら外界で何やら緊急事態が発生した可能性は高い。もしかすると、シルベットと一緒に追い出したことを根に持っているのなら、お門違いだ。


 持久力も集中力もなく、シルベットとエクレールと比較して戦闘能力が低い蓮歌がいては足手まといだ。もしも、そうなら蓮歌に電撃を食らわせて改心させればいいだけだが、そうじゃなければ敵組織に鉢合わせして、戦闘に陥っている可能性は否定できない。もしくは、戦闘不能になっている可能性も考慮すれば、蓮歌が戻ったルートの近くから戻らない方がいいだろう。


 魔力消費が激しいエクレールにとって、ラスノマス鉢合わせは避けたいに加えて、蓮歌が〈錬成異空間〉を抜けた市街地側は危険と見て、住宅街側を選択せざるを得ない。


 だからといって、翼に知らせないままでは、いつかは彼に気づかれてしまうだろう。ラスノマスを避けるには、向こう岸に渡ってボルコナ兵の周りを迂回する、という選択肢しかないのだが……。


「やっぱり、市街地に行った方がいいね。住宅街側は朱雀やボルコナ兵に見つかる可能性もあるし、もしも溶岩が流れているところが術が弱まっているところだったことを考えると市街地側しかないと思うんだけど……。それに市街地は調度、こっち側だし、橋をわざわざ渡って、危険性がなくすにはそれしかないと思うし、効率がいいんじゃないかな」


 翼は市街地の方に顔を向けて言った。


 やはり気づきますわよね……、とエクレールは思わず顔をしかめる。彼女のそんな反応に、翼は漠然となにか嫌な予感がする。


 何とか平静を装いながら、エクレールは翼に言う。


「……そうですわね。確かに市街地に渡ってから出口を探して〈錬成異空間〉から脱すれば効率はいいでしょう。ソラさんたちがいるカラオケ店は市街地にありますし、そのカラオケ店の付近に出口が開けたのなら、都合がよろしいと思います。しかし────よく考えてみてくださいまし。敵組織がわざわざ〈錬成異空間〉に制限をかけていますのよ。その制限が弱い部分が少なくとも二ヵ所もありますわ。一ヵ所は敵組織の恐れがあるボルコナ兵の包囲網の近く、もう一ヵ所は、あからさまに安全ですよ、という市街地ですわ。どちらかと言えば、普通に考えて市街地の方を罠だと思いますが……」


「……そう、か……」


 まくし立てるかのようなエクレールの説明を聞き、翼は渋々ながら頷いた。


 先ほどのエクレールの何か訊かれたくないことを訊かれたかのような態度と、無理にもっともな理由を口にした彼女に違和感を感じざるを得なかった。見晴らしのいい橋を渡る危険性について、エクレールの説明を疑っているわけではない。


 周囲に身を隠すものがない橋の上では、敵に容易く見つかりやすい上に、絶好の攻撃スポットといえる。橋の下を泳いで渡るといったことに対してもそうだ。泳ぐ行為はもっとも体力を使う。流れがある川ならば尚更、体力を消費してしまう。魔力と体力を温存しなければならない彼女にとって、“向こう岸を渡る”といった危険性に対して、それを選択しなければならないエクレールに対して、翼は頭の片隅に、ふと不吉な考えが浮かんできてしまう。




 ──ラスノマスが向こう岸にいるんじゃないか。




 翼の不吉な考えは、ものの見事に的を射ていた。そのことを当の本人は知らない。勿論、エクレールも。




 エクレールの当面の任務は、翼を連れて、敵組織はおろか朱雀やボルコナ兵の接触を避け、住宅街側にある術式が比較的に弱いところで外部への道を拓き、脱出。そこで、ひとまず信頼ある援軍と合流することだが──


「〈索敵〉系の術式を展開させ、〈転移〉して敵と鉢合わせしないようにするための術式はそれなりに魔力を消費されますから、なるべく行使しないで温存して迂回路を進むしかありませんわね」


 そう言って、エクレールは恐る恐ると自分よりも背が高い茂みを伝いながら、まずは清涼大橋の高架下まで歩いていく。翼もエクレールと同じく茂みの中を付いていく。


 清涼大橋の高架下まで来ると、敵組織に警戒しながらも、土手を登る。途中で拾った段ボール箱の切れ端を翼に渡して、身を隠しながら、比較的に魔力消費が少ない〈索敵〉系の術式を行使して、目視で朱雀やボルコナ兵の様子を警戒しながら迂回路を探す。


 亜人の視力は、人間よりも優れている。翼の視力は決して悪くはない方だ。一・八はあるのだが、それでも中心にいる朱雀はぼやけており、目を細めても何とか人の形が空中で佇んでいる程度でしか見えない。奥に包囲網を張っているボルコナ兵などミジンコ並に小さく見えない。エクレールの目には、鮮明に見えているがそれでも限度はある。


 やはりボルコナ兵は鉄壁といっても差し支えない包囲網を張っており、魔術を行使できないエクレールと翼が突破するには至難の業といえる。それに辺りに溶岩が流れていて、通れそうもない。朱雀らボルコナ兵が味方と判別さえ出来れば、助けを求めたり、突っ切ることが可能だが……。


 そう思いながら、真ん中で佇む朱雀に注視する。


 燃え盛るような紅蓮の空に佇み、誰かと話しているのか、口をパクパクとさせていることが何とか見て取れていた。


 誰と話しているのだろうか。そちらに注目しても、ビルの瓦礫が邪魔していて見えない。角度が悪いのだろうか。立ち上がって確認したいが、ボルコナ兵に見つかってしまいかねない。エクレールから見えるということはボルコナ兵にも見える可能性が高い。こちらの動きに感づかれて面倒事に巻き込まれることは得策ではない。


 エクレールと翼は朱雀────煌焔が何故、元老院とのいざこざから厄介者扱いされ、あらゆる境界の出入口である〈ゲート〉はおろか〈ゲート〉がある中央大陸ナベルの上陸を規制されている理由も知らない。エクレールは元老院に歯向かったからとしか訊き及んでいない。今期の巣立ちに、およそ百年ぶりに顔を出したからといって、まだ元老院との関係に蟠りが残っている。


 そんな中で大軍を率いて人間界に降臨させることは不可能だろう。投入するなら少数精鋭で少しずつでしか無理だ。それには長年の間、元老院の目をかい潜って少しずつ人間界に投入しなければならない。それも予め、何が起こるのか事前に知らなければならないだろう。預言の能力・術式がない以上は、事前に知ることは有り得ない。だからこその見解といえる。


 “朱雀は、此処で何か起こることを知っている”、もしくは、“起こすことが目的”。この二つに絞られる。これなら、納得が行く。もし前者なら敵組織に繋がりを意味し、後者なら敵組織といえる。


 どちらにしろ、気軽に関わり合いを持つ者との接触と連絡は控えた方がいい。ボルコナ出身者で現在エクレールたちの【部隊チーム】の教官という立場である炎龍帝ドレイクにも疑いが晴れるまで信用してはならない。


 朱雀がどういった経緯で事を起こそうとしているのかは興味があるが、魔力切れが近いエクレール的には深入りすることは避けたい。翼としても、今は空や亮太郎、蓮歌が心配だ。どちらも深入り、係わり合いはしない方が身のためだ。


 人間界に降りた理由と方法がわからない以上は、朱雀やボルコナ兵を信じることは出来ない。魔力が常に送り続けてしまう状態のエクレールが無理矢理にどんなステルス系の術式を行使しても、わずかな魔力の消費に気づかれてしまう可能性を高く、むしろ朱雀やボルコナ兵に気づかれやすくなってしまう。かなり時間はかかりそうだが、遠回りにして迂回するしかない。


 何とか穴を見つけようと観察していたエクレールは気落ちしたように息を吐く。


 ──魔術さえちゃんと使えれば、何とかなるのでしょうが……。


 ──見つからないように突破するのは難しいですわね……。


 だからといって、このまま〈錬成異空間〉に留まっていても、敵襲にあった時に満足に戦えるかわからない。


 ひとまず、朱雀やボルコナ兵の他に誰かいるということだけでもわかっただけでも良しとして、エクレールは翼と一緒に警戒しながら清涼大橋の高架下に降りた。


「ひとまずは、橋を三つ越えた辺りから住宅街に入っていけば、瓦礫があって上手く隠れて進めそうですわね」


「だとすると、少なくとも河原を五キロくらい進むことになるけど……」


 翼は清涼大橋の隣にある橋と、奥にある二つの橋へと目を向けて、げんなりとした。


 現在、エクレールといる清涼大橋までは次の橋まで一キロ程離れている。さらに奥の二つの橋まで一、二キロ程だ。三つの橋を越えた辺りは、およそ五キロ先といったところだろうか。時間は五、六分以上はかかると大凡の時間を算出する。


 ちゃんと測定したことはないが、子供の頃に待ち合わせした時に家から三つ目の橋の時間までは、自転車でおよそ五、六分程度で着いていた、と翼の経験測だ。


 だが、その経験測は当てにはならない。子供の頃の何となくそれくらいな時間だった、というものであって、徒歩ではない。中学生に成長した翼と翼より小柄なエクレール歩幅では、どのくらいで着けるかはわからない。それに、これまで徒歩で五キロ先の三つ目の橋まで何度か行ったことがあるが、正確な時間を割り出したことがない。自転車の倍であることだけはわかるが。


 それに警戒しながら歩くというのを加わるとなると、結構な時間がかかってしまいかねないことを考えるだけで、翼に疲労感が襲う。


 不要な戦闘を避けなければならないエクレールにとって魔力以外にも、体力も消費することは得策とはいえない。魔力はおろか、体力さえも消費し切れば、それこそ戦闘不能といえる。


 魔力と体力を温存しょうと動かないでいると、状況は変わらないままだ。もたもたすれば、エクレールたちが不在していることを空たちにごまかせないほどの時間が経ってしまう。


 土手の上から見た限りだと、三つ目の橋から行けば、家屋の形は維持されている。〈錬成異空間〉に創られた家屋だから、誰もいない。廃墟当然だが、身を隠したり休ませたりでき、体力温存には役立てるはずだが時間は少ない。


 だからといって、警戒を怠れば、敵組織──特に【創世敬団ジェネシス】の残党がいてもおかしくない。あれだけの反応があった大軍が居なくなったとはどうも有り得ない。どこかで身を潜ませて、こちらの動きを読んでいるかわからない以上は、警戒を解くことはできない。現に、美神光葉が構築した〈錬成異空間〉は消滅していないのだから。


「気になったんだけど……この〈錬成異空間〉の周りを張っている膜って……どんなの?」


 ふと、翼は脳裏というか、どこから聞こえた疑問を口にする。


 翼の問いにエクレールは少し驚く。人間が術式に関して興味を持つことは当然だが、緊急事態でそんなことは考えても見なかったからだ。


「どんなの、と申しますと形ですの……」


「それも込みで」


「はあ……そうですわね。行使者が何の意味で制限をかけたのか、はわかりませんが〈錬成異空間〉の周囲を張っている膜は、【創世敬団ジェネシス】では見かけない羅列の魔方陣によって構築されています」


「【創世敬団ジェネシス】では見かけない羅列の魔方陣?」


「ええ。例えるのなら、人間界──日本で見かける五芒星に似ていますわね」


「それってつまり……【創世敬団ジェネシス】なの?」


「そうですわね。膜を張った理由が敵組織がこれ以上、増員させないようにさせ、わたくしたちを閉じ込めて一網打尽にさせようとしていなかったら敵ではありませんわね」


 そう言って、エクレールは段ボール箱の切れ端を被り茂みの中を歩き始める。翼も段ボール箱の切れ端を被って彼女の後に続く。


 茂みの中を進みながらエクレールは、先ほど翼に訊かれたことを考えはじめた。


 〈錬成異空間〉の周りを張っている膜の魔方陣は、日本で見かける五芒星である。この五芒星は陰陽道でよく見かける羅列であり、主に亜人ではなく、人間、特に人間界で住む者が行使することが多い。


 それを考えれば、〈錬成異空間〉に膜を張ったのは人間となってしまう。


 では、その人間はどうして〈錬成異空間〉に膜を張ったのかを考える。エクレールが先ほど言ったように、エクレールたちを閉じ込めて一網打尽にさせようとしていなかったら敵ではないだろうが……。


 ──膜を張っただけで一網打尽に出来ないことくらい人間は知っています。


 ──何回も人間同士で荒らそってはまた繰り返す愚か者ですが……そこまで莫迦ではありません。


 ──だとするならば、何故わざわざ外部からの遮断を?


 ──遮断するなら、〈錬成異空間〉ごとを切れば、わたくしがソラさんたちにかけた術式が解かれますし、【創世敬団ジェネシス】に荷担しているならソラさんたちを人質にした方が効率がいいですわ。


 では何故……、エクレールの中で翼に訊かれた疑問が渦巻いていった。考えていると、少しずつ頭の中が晴れていき、彼女の精神は安定しつつある。


 思考に耽る彼女の後ろにいる翼は、別な意味で頭を働かせて悩んでいた。


『おいおい、もうちょっと金髪ツインテールのお嬢ちゃんにヒントを与えてやれよ、あの膜を張ったのは敵じゃねぇって……』


『いやいや……、あれ以上は言えないよ。何も知らない人間なんだから。さっきだって何で訊いてきたんだろうって目をしてたよ』


 声がするのだ。


 夢で見た大男──剣のキーホルダーと同じ声が、エクレールに、〈錬成異空間〉に膜を張っているのは、敵じゃない。そいつがいるのは、市街地だ。住宅街側に行っても煌焔の邪魔になるだけだとエクレールが住宅街側に行くと決めてから煩いくらいに騒いでいる。


 言われた通りに、エクレールを止めようと試みたが、それ以上、彼女をひき止める言葉を持たない翼は仕方なく付いていく他ならない。


『向こうは今、ややこしくなってきているから行かねぇ方が身のためだ。悪いことは言わねぇ。市街地から行け』


『わかっているけどさ……。エクレールがどんどん行くんだもん……。付いていくしかないじゃん』


『じゃ、引き止めろよ。ラスノマスなんて、今はドレイク、シルベット、ゴーシュにやられて弱体化している。魔力消費が激しい金髪ツインテールのお嬢ちゃんでも倒せるからさ』


『そう言われても……』


 どうやって止めたらいいか、解らず翼は頭を掻いた。


 ふと、エクレールは、警戒を市街地に向ける。ラスノマスらしき魔力反応が移動するのを感じ取る。頭の中の声も感じ取り、翼に教える。


『どうやらラスノマスも気づいたようだな。魔力は少しばかり弱々しい。今なら致命傷は負わせられるかもしれん。お嬢ちゃんに教えてやれよ……』


『どうやって教えるんだよ……。頭の中から声がして教えてくれたなんて言ったら、それこそ精神を疑われるよ……』


『だとしても、このまま“相棒”が危険な戦地に向かわせるのは黙ってられないんだよ……』


『気遣ってくれるのは有り難いけど、頭がおかしいと思われない程度の方法でエクレールに教える術を教えてくれぇ〜!』


 翼は、心の叫んだがその答えは、


『自分で考えろ』


 という大男の声だった。




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