第二章 三十八
水無月龍臣とシルベットの母親であるシルウィーンとの馴れ初めの話を終えると同時に、聞いていたシルベットがウトウトとし始めていた。まだ出逢った辺りだというのに、よっぽどつまらかったのだろう。
シルウィーンと出逢ってから水無月龍臣として気恥ずかしいことがあるため、それは話し手である彼が話の途中で眠らせようと、出逢うまでの話を意図的に長くしただからに他ならない。
シルウィーンが寝たからとキリのいいところで終わらせようとすると、水無月龍臣はふと翼の方を見た。彼はまだ聞きたそうに水無月龍臣に好奇心旺盛なきらきらとした視線を向けている。
「まだ聞きたいかね……」
「聞きたい」
即答だった。
「それからどうなったのか知りたい」
「そうか……。言っておくがたいした話ではないぞ」
「わかった」
水無月龍臣は、少し躊躇しながらも語りだした。
「シルウィーンの自分や異世界ハトラレ・アローラについての話しに夢中になっていた拙者たちは時を忘れてしまい、いつの間にか夕刻を迎えていた────」
◇
鬱蒼とした森に囲まれているため、日が暮れてしまうと、滝の周囲は夜と感じてしまうくらいに薄暗くなっていた。滝から村までは、足場が大人がやっと通れるくらいの幅しかない獣道だ。地面は泥濘んでいたこともあり、ただでさえ足場が悪かったと考えたら、完全に日が暮れてしまうと身動きが取れなくなってしまうだろう。
途中、一夜を明かすような場所もなかったことも考えれば、日が暮れてからの下山は危険だ。滝の前で野宿し、一夜を過ごすとなると、シルウィーンの邪魔をしてしまいかねない。完全に日が暮れてしまう前に下山した方がいいだろうと考えたマサミネが申し訳なさそうに口を開いた。
「日が暮れてきた。もうそろそろ帰らないと……」
「ん? そうだな……これ以上は、人間の目では危険だな。この猛暑について調べるのは、明日にするとしょう。どれ、話を聞いてくれた御礼に村の近くまで乗せてやるぞ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
驚く五人。彼等の反応とはお構いなしにシルウィーンが立ち上がると、彼女の身体が白銀の光りが繭のようになって包み込まれ、完全に体を覆い隠すと更なる光りはまばゆさを増していき、龍臣たちは思わず目を覆った。
百六十五センチメートルの身長だった彼女の体はずんずんと大きくなっていき、二十メートルもある滝を頭二つ半越えた辺りで一気に白銀は霧散していく。
白銀の光りが消えたその場には、勇ましいという言葉がよく似合う巨大な銀の龍がいた。思わず仰け反る龍臣たち。銀の龍となった彼女は長い首をゆっくりと下ろして、頭を龍臣たちの前に置くと琴のような美しい音色の声が滝の回りに響き渡らせる。滝の轟音の中でもそれは龍臣たちの耳にしっかりと届く。
「此処から乗れ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
またしても、五人の驚きの声が滝の前で重なった。滝の轟音にあっという間にかき消された龍臣たちの声だが、シルウィーンの耳はしっかりと入っていた。
「頭からの方が凹凸があって乗りやすい上に掴まるところがあるんだ。別に、踏んづけても構わない。私の鱗は人間の皮膚よりも頑丈だからな。まあ、いくら頑丈でも痛いのは痛いから、わざと強く踏んづけてくるのはダメだから、そのつもりで上がれ」
乗るように言われて、躊躇する龍臣たち。龍態であるシルウィーンの顔を見る。きめ細かい白銀の鱗に覆われた彼女の頭部は見た目は固そうで神々しい。いくら彼女から赦しを得たとしても、そう易々と上がれる勇気はない。
「何をしている? 早くしろ」
シルウィーンに急かされて、龍臣たちが顔を見合わせる。それから彼女に顔を向けた。
「本当にいいのか?」
「大丈夫だ。人間の子ら五人を頭に乗せたぐらいで文句をたらたらというほど心は狭くはないし、貴様らを頭に乗せただけで落っことしたりするへまはしないぞ。あっという間に、山の麓まで行けるだろうから安心して乗ればいい」
責任もって送り届けると口の端を上げるシルウィーン。彼女の言葉を受けて先陣を切ったのはマサミネだ。
マサミネは恐る恐るといった具合に、シルウィーンの鼻の右横から上がる。下唇と上唇を鋭利な牙に気をつけながら何とか自力で上がっていく。何回かずり落ちそうになったが、龍臣とイチノスケが背中とお尻を押して、鼻の上にようやく上っていくの成功した。四つん這いになりながら足場の状態を確認すると彼は振り返り、大丈夫だと手を上げて合図する。
「蛇みたいにヌルヌルしていないから乗りやすいぞ」
そう言って、顔を戻すとマサミネはシルウィーンの眉間部分まで進んでから、彼は腰を降ろした。それを見計らって、彼女が口を少し動かす。
「失敬だな。見た目は光沢があって蛇のようだが、蛇のように粘液で体が覆っているわけではないぞ。安心して、鱗と鱗の間に指を入れるようにすれば滑らずに乗ることが出来るぞ」
シルウィーンの上がるコツを聞いて、トラキチとカメキチが彼女の鼻先まで駆け寄るが、二人は小柄なため、鼻の上に手をかけることが出来ない。龍臣とイチノスケがすかさず二人をシルウィーンの鼻の上に届くように持ち上げる。
トラキチとカメキチはシルウィーンが言ったように鱗と鱗の間に指を入れるようにして掴んでいくと、するすると乗ることが出来た。右の角をトラキチが、左の角をカメキチが掴んで腰を降ろすのを確認してから、次のイチノスケがマサミネが乗ったように鼻の右横から上がろうとしたが出来ず、龍臣が後ろから押して上がらせた。
続けて、龍臣が乗る番だ。マサミネとイチノスケのように鼻の右横から上がる。
シルウィーンの龍態は、見た目が硬そうな白銀の鱗に覆われていたが、思ったよりも柔らく程よい弾力があった。少なくとも馬や牛よりも柔らかい。それでいて、鱗と鱗の間に指を入れて掴んで体重をかけてもびくともしない頑丈さはあった。力を入れることに少しばかり躊躇してしまうが、ふと視線をシルウィーンの眼を向けると片目でまばたきをする。言葉は発しなかったが、構わず行けと言っているように感じた龍臣は思いっきりと鱗を掴み、彼女の体に乗ることが出来た。
龍臣が後方──白銀の髪の一房を掴んで腰を降ろしたのを確認すると、マサミネはシルウィーンに全員が乗ったことを告げる。
「皆乗ったぞ」
「わかった」
短く返答して、シルウィーンはなるべく子供たちに負荷をかけないように頭を平行を保ちつつ、持ち上げると滝を囲んでいた高い木々を一気に抜けていった。
太陽が傾ぎ、空を翔る光が真鍮色から薄桃色へ変わりはじめ、茜色に染まろうとしてた。山間の向こうから夜の帳が降りてこようとしている。
そんな景色を見てシルウィーンは口を開く。
「人間界は夏という季節で、昼間の時間の方が長いはずだ。日が暮れるのは、まだ早いのだが…………」
そう疑問を口にしながら、沈みゆく太陽を怪訝そうに見据えるシルウィーン。彼女が言った通り、龍臣たちも日が暮れるのが少し早く感じていた。それは、シルウィーンとの話に夢中になってと思っていたのだが……。
「これは、何かあるな……」
不穏なことを口にしてから、シルウィーンは飛翔した。
すっ……と龍臣のお腹から空気が抜ける。肉体を地に置き去りにして意識だけが上方へ持ち上がったかのような感覚が一瞬だけ爆ぜてから、身体が宙へ少しだけ持ち上がっていることを自覚する。
「うわ」
短く呻いた。気づいた時には、龍臣たちを乗せた銀龍は地上から垂直方向に百メートルほどを維持しながら浮揚していた。地上を離れる、というこの時代の人間ではなし得ない空を飛ぶということが新鮮な感覚と印象を与えるには充分だった。
「ちょっと気になるから調べてから送り届ける」
シルウィーンはそう行って、体をくねらせて、泳ぐように高度を上げていく。
「現在の高度は大体三百メートル」
シルウィーンがそう教えてくれた。意味はわからなかったが、高さを表していることは何となくだが理解できた。下方の滝が小さくなっていき、既に豆粒ほどの大きさだ。山々が見えて、それに護られるように村はあるのが一望のもとに見下ろせる。村を行き交う人々は夜も近いこともあって少ないことが見てとれる。
「高度五百だ」
シルウィーンは龍臣たちに負担をかけないように頭を垂直を維持しながらも、術式を行使させて、高度を上げていく。
「高度八百」
何の抵抗も負荷もなく高度が上がっていく。村の中から山に昇っただけでは見えなかった周りの山並みが望遠できた。見たことのない湖が彼方に青く横たわっていて、夕暮れの陽を一度だけ眩く龍臣たちの網膜に弾き返した。
「千二百」
太陽はまだ沈みきってはいなかった。それでも見下ろす道を行く人間の姿はもはや視認することも困難な村に長い影を曳いていた。
「高度千八百。どうだ、怖いか」
「ううん」
「大丈夫」
シルウィーンの問いかけに、トラキチとカメキチはじっと地上を見下ろしたまま、首を左右に振って答えた。
「オラは少し怖い……」
「オイラは怖くないぞ。怖じ気づくなよイチノスケ」
ガクブルと震えながら答えるイチノスケに大丈夫だと肩を抱きながらマサミネは言った。
「せっしゃも大丈夫だ」
龍臣は少し怖かったが眼下に見える絶景に目を奪われており、怖さよりももっと見てみたいという好奇心が買った。
五人の返事を聞いてシルウィーンの笑いが返ってくる。
「高いところは好きか?」
「「うん」」
「好きだ」
「あんまし好きじゃねぇ……」
「せっしゃは少し怖いが好きだ」
「そうか。私は好きだ。見晴らしがいいし、皆ちっぽけに見える。厭なことがあれば、すぐに空を飛んで、どっかの知らない国や世界に行けば、自分の悩みなんて、実にくだらないものだと教えてくれる」
そのシルウィーンの言葉は、これまでの言葉よりも彼女という性格を表しているように龍臣は感じた。
「あっ、雲!」
トラキチが上方を指をさした直後、視界が白一色となる。景色がなにも見えない。それに大気が冷たい。雲の中に入ったのだ。
「ぷはっ」
思いがけず息を止めてしまった息を吐き出すと同時に、霧が晴れた。周囲にはまた茜色の世界が拡がった。
「ははっ、雲の中に突っ込んだよ」
「雲の中って、少し涼しいんだね」
トラキチとカメキチがはしゃぐ。
「雲を越えたということはもうそろそろあの世か……」
「安心しろイチノスケ。雲の上まで来てあの世には行けないさ。流石に、此処から落っこぢまったらあの世だけどな」
「マサ兄っ!」
あまりの高さにビビるイチノスケを落ち着かせる振りをしてからかうマサミネに彼は声を張り上げた。そんな友人の様子を眺めながら、龍臣は雲の上の光景に言葉を失いながら、感激をしていた。
のどかな青空が頭上いっぱいに広がっていた。ここは高度二千メートルの空中であり、微弱な風が絶えず吹いてくるものの寒くはない。地上の猛暑と相まって涼しくもある。空気は地上とは比べものにならないほど澄んでいて、彼方には山地の尾根が岩肌の凹凸もくっきりと見晴らせている。
いつも暮らしている村やその周りにある山々が小さくなっていき、ついには雲があるところまで上昇してきたシルウィーンは、空中の一点に静止したまま浮揚し、視線を周囲に走らせる。文字通りの天空の眺望を暢気に眺めている龍臣たちをよそに、彼女はある方向に何かを捉えた。
「ん? あれは……まさか」
「あれは何だ?」
「なんか蜥蜴みたい……」
「蜥蜴にしてはおかしいぞ。背中に羽根が生えている」
「そうだな……」
龍臣たちにも豆粒くらいに捉えたそれは、蜥蜴に蝙蝠のような羽根を付けたドラゴンだった。
ドラゴンは、周囲に魔方陣を展開させながら、ほんの少しずつだが近づいていた。それを見てシルウィーンは龍臣たちに真剣味帯びた声音で話す。
「これから麓まで送るが家に帰ったら、すぐに戸締まりをして出来るだけ早くに寝ろ。地響きや何か音がしても家に隠れて大人しくしていろよ。もし外に出てしまった場合は──」
シルウィーンは、これから家に着いた時の注意事項を言ってから、相手に気づかれないように降下していった。これまで龍臣たちに負担をかけないように頭を垂直を維持していたのだが、それも忘れて急いで地上近くまで降りてくると、マサミネが聞いた。
「あれは何だ?」
「あれは、生まれは私と同じハトラレ・アローラの者だが、私のように人類にとっては好意的ではない、この世界にとっては敵だ」
シルウィーンはそう返してから、途中、山奥に家があるイチノスケを先に降ろしてから、龍臣たちを村近くの麓で降ろした。
「じゃあまたね」
「ああ」
手を振って別れを告げるとシルウィーンは短く返答して、再び天高くへと昇ってしまった。
帰路についた龍臣は、シルウィーンがドラゴンを見た後の態度を不思議に思っていた。それはマサミネやトラキチ、カメキチも同様で、それを話しながら村に向かった。
「何なんだろうあれ……」
「わからぬ。ただ、お銀は敵といっていた。この暑さとあの飛んでいた蜥蜴は何らかの関係あるのかもしれん」
「それを倒しに行ったと考えた方がいいか……」
「まだ暑いなー……」
「これじゃ眠れないよ……」
マサミネと龍臣が考えていると、カメキチとトラキチの元気がない声がした。
村は相変わらずの猛暑だ。昼間ほどではないが、もんもんとした熱気が漂っている。恐らく家の中はそれ以上の熱気が漂っているだろう。戸締まりをしたら、家の中で熱気が溜まって蒸されてしまいかねない。
「昼間ほどじゃないけど、これで戸締まりしたら、暑くって寝られやしない……」
「そうだな。今日は暑いから開けておけ、と父に怒られるだろうな……」
「恐らくな。何故に、戸締まりしなければならねえのか、理由を言ったって信用してもらえそうもないだろうけど……」
注意事項をシルウィーンから受けた後、その理由を龍臣は聞いていた。それは、あの敵が攻めてくる可能性を示唆するものだった。
「あれが村を襲ってくる、だったら家に閉じ籠っているよりも村から逃げた方がいいと思うけどな」
「そうだが……お銀は、その理由も言っていた」
「ああ。村を逃げたとしても、恐らくあの蜥蜴の仲間が周りを取り囲んでいるはずだから、袋のネズミだとな。夜の闇に紛れての移動は、夜目がきかない人間には不利で、下手に混乱を与えて動いては奴らの思いどおりになってしまうと言っていたからな。だからこそ、しばらくは村にとどまってやり過ごした方がいい、と言われたからな」
「そうだな……」
シルウィーンは、村を中心にした区域にドラゴンは罠を張り巡らして、あらゆる魔術を行使して人間たちに混乱を与えようとしているらしい。そして、恐らくは、あのドラゴンはすぐに襲って食べようとはしないだろうと。
ただ、あのドラゴンは少し弄んでから飽きたら食べるといった性格の持ち主で、かなり捩じ曲がっている輩だという可能性を示唆した。ドラゴンが実験的に術式を行使して遊んでいる可能性を考えるなら、この猛暑も人間たちにわざと混乱させようと行使した魔術の影響の可能性が高いことを上げたシルウィーンは、最後に一言、忠告した。
“精神攻撃を仕掛けてくるかもしれない。それで村の誰かを操って殺し合いなんてさせるなんていうこともあり得る。相手がどんなに知っている顔でも気は抜くなよ”
それを含めた上で、戸締まりをして、なるべく精神攻撃を受けないように寝て、現在はドラゴンの出方や目的などがわからないため、村人に下手に混乱させて、隙を与えないでほしいと告げた。
「隙を与えるなと言ってもな……。現在、村は猛暑で、このままじゃ確実に干上がっちまう。それでいて、村の周りには、お銀がいう敵が囲んでいて、混乱や隙を見せた村人から操って、殺し合いを見て楽しんでいる性格が捩じ曲がった空を飛ぶ蜥蜴が沢山いるというじゃねぇか。それで正気を保たないといけなねぇというのは少し難しくないか」
「そうだけど……。お銀も手を打って見ると、言っていたし」
「……そうだけれども」
マサミネは山の方を振り返る。山間にはもう夜の色が優っていた。西の空にわずかに夕焼けの残骸があるだけで、空にはもう星が明滅していた。シルウィーンが言ったように、この季節にしては夜になるのが早い。
これで涼しくなったのならばどれだけいいことか。日が暮れても、昼間ほどではないが暑さはまだ続いている。肌にべったりと張り付くような蒸し暑さは太陽が沈もうとしても健在で、村の人たちをなかなか解放してくれない。
戸締まりしなくとも、家の中では暑さを猛威を奮っていることを考えれば、シルウィーンの戸締まりして寝ろということが注意事項を護れそうもない。それは彼女も重々承知だった。だからこそ、もしも戸締まりが出来ず、外へ出てしまった対処法を事前に聞かされている。
マサミネは懐から取り出した。掌に載せられるほど小さく、それは持ちやすく紐でくくりつけていた銀の鱗である。それはシルウィーンの鱗であり、別れ際に龍臣たちも彼女から渡されていた。途中で降りたイチノスケにも同様のものが与えられているそれは身につけていれば、人間でも術式を詠唱という形で発動することができるという代物だ。
シルウィーンによれば、体から切り離された鱗には魔力が残っており、しばらくはなくならない。大体は三日ほどは残っており、その間は鱗に纏った魔力が抜け落ちるまで消耗がない術式は何度も行使することができるらしい。
「この暑さがいつまで続くかはわからねえが、それはあのお銀という龍に任せるしかねえな。オイラたちは渡されたコレで何とかするしかねぇな。結果は明日また滝に行って聞こうじゃないか」
「そうだな」
龍臣が頷いた。
先に道を歩くトラキチとカメキチも振り返り頷くと、マサミネたちは二人と龍臣にもう少し近づくように手招きをする。
龍臣、トラキチとカメキチが目の前に来るとマサミネは肩を組み、口を開く。
「鱗のまりょく? はいざという時にしろよ」
「えっなんで?」
「えっどうして?」
「トラキチとカメキチ、聞いてなかったのか? お銀は攻撃はすぐにまりょく? というものを使ってしまうからなるべく使わないようにしてくれといっていたじゃないか」
「そうだっけ?」
「そうだ」
忘れていたらしいトラキチとカメキチにマサミネと龍臣は説明をした。
「鱗そのものがまもることだから、攻撃にはふむきともいっていた」
「つまり、なるべくはまもることに使ってほしいのだろう。いざという時に使えるようにどんなことがあっても下手に仕掛けようとするなよ。いざという時に使えなければ意味がないからな」
「でも……こうげきのじゅつしきをおしえてもらえたけど」
「あれは、まもるだけではダメだった時の切り札とお銀が言っていたろ。つまり攻撃は、どうしても使わなければならなくなった時は使ちゃダメだという意味だ。まもらなきゃならない時にまりょく? がなくって使えなかったらどうするんだ。そうならないようにムダづかいはするなよ」
マサミネはそうシルウィーンが言っていたことを再度確認してから解散となった。




