炎の力-Ray-
怪物が彼に飛びかかる。
彼は咄嗟に目を瞑り腕で前身を庇った。
その瞬間、あたりを眩い光が包み、彼は自らの腕が前方へ振られ何かを殴り付けるような感覚を覚えた。
次に目を開いたとき、怪物は数メートル先に吹き飛び沈黙していた。
「え…なん…で…?」
言葉が自然に漏れる。
「不思議か?」
どこからか声が聞こえた。
「それは私の力だ。もっとも、攻撃したのは君の体だがね。」
「俺が?」
「あぁ。そうだ。…ッ!」
彼の体は吹き飛んだ。
皮肉にも先ほど彼が気絶させた怪物と同じように。
「少々、長々と喋り過ぎたらしい。」
謎の存在の声が彼の口から出てきた。
「すまない。長々と喋っていたせいで別のがよってきたようだ。とりあえず、あれを倒そう。」
そう言うと、彼は腕を下に向けながら交差させ両手を斜め上に手刀のように素早く動かした。光り輝く刃が放たれ、怪物の体が引き裂かれた。
「うわっ…なんで…」
「だから言っているだろう。私の力だ。と。」
「…それは理解しましたよ。俺には原理もわからないんだから…で、なんで俺の口から君の声が?」
「ふむ。そうだな。また襲われてはかなわない。森を抜けながら話そうか。」
彼は歩きだす。
「君の体は、先ほどの二体目の怪物にやられたとき大いに傷ついた。そしてその前。君をこの世界に呼び出したこともあの襲われていた人間を救わねばならないと思い起こさせたのも、すべて私に責任がある。だから私は、君と融合し、癒した。」
「おや、さっきの子、まだこんなとこで震えてたらしい。」
いつのまにか、一体目の怪物と出会った場所に戻っていた。
「さあ『勇者』よ。あの者を助けなさい。」
「え?」
「いいから。ほら、私と融合している時点でこちらの言葉は問題なく話せる。」
なにが「いい」のかはわからないが、とにかく声をかけてみることにした。
「大丈夫かい?さっきの怪物は倒した。もう、安心していいよ。」