彼方より来る者-Fusioner-
手を伸ばした後、あたりが光に包まれた。
そのまばゆさに彼は目を閉じる。
次の瞬間、彼の体は暗い森の中に落ちていた。
「…っ…」
どうやら頭から落ちたらしく、多少の痛みはあったが特に出血などはしていなかった。
だが、腕に違和感を覚えた。
見てみると、腕輪が付いていた。
「なんだこれ?…まあ、いいや。それより、ここがどこだかわからないこと、その方が重要だ。」
日を遮る程に葉の茂る木々の中にただ一人。
そんな場所で適当に歩きまわる危うさを分かってはいたが、仲間とはぐれて迷ったのではなく、誰も自分が今この場所で一人の状態だと知らない。
その恐怖心が彼を歩かせた。
どれだけ歩いただろうか。
よくある物語のように目印でも付けながら歩けばよかったかと悩みながらも進んでいた。
その時、明らかに人のものと思える声が聞こえた。
もっとも、彼は安堵できなかった。
その声が、恐怖に耐えきれなくなった者が発する叫び声だったからだ。
しかし、むしろ、その恐怖を孕んだ声が、彼の持つ若干の恐怖心をかき消した。
聞こえた方向に走ると、腰を抜かして大木に背を預け、へたりこんだ格好の者がいた。
そして、その怯える者のすぐ近くに、周辺の木々とそう変わらない程の巨体をもった大男がいた。
彼は我を忘れ、その大男にタックルの要領でぶつかった。
不意をついたのが功を奏したか、大男はすこしよろけてこちらを見た。
そしてその顔は険しさを増していく。
どうやらこちらに気が向いたようである。
体をこちらに向けてきた。
先ほどは大男と思ったが、顔をよく見るとどうやら人間ではなさそうである。
とにかく、襲われそうになっていた者からあれを引き離すためなら、今こちらに気を向けているときにするべきは…
彼は走り出した。
怪物も彼に向かってきている。
引き離すという目的は果たしたが、彼は怪物の足の早さを見誤っていた。
怪物が彼に飛びかかる…