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ユリアナ嬢は私と貴族学校で同期だった。
しかし、元々病弱で途中で通えなくなり空気の綺麗な自領に戻って行った。
学校で友人関係を築いていた私はたびたび休みに彼女に会いに来ていた。
「……体調はどうだ?」
「うーん。今日は良い方かな」
窓を向いていたユリアナがこちらを向いて答える。しかし、その顔色は少し悪い気がする。
「本当か?」
「もちろん。本当だよ」
そう言ってユリアナはベッドから立ち上がろうとした。
しかし、すぐに床にへたりこんでしまう。
「……本当に、大丈夫なんだ。今のは少し違うんだ」
なんだか自分に言い聞かせるように呟いているユリアナは様子がおかしい気がする。
私はユリアナに一声かけて辞することにした。
途中使用人がいたので、ユリアナの態度について尋ねてみたが、誰も悲しい顔はするが理由を言ってくれる人はいなかった。
しかし、やはり私の勘は正しい事は証明された。……そして、これは本当に勘になるが理由を調べないと私は一生後悔することになるとも思った。
◆◆◆
「……なっ! これは本当なのか」
私はこの国の王太子だ。人里離れた辺鄙なところにでもいるなら別だが、大抵の事は調べればわかる。
そして、ユリアナたちが隠していた事も難なく突き止めていた。
しかしそれは私の勘の示す通り知らないままだったなら後悔していただろう。ユリアナがもう長くないかもしれないだなんて。
私は頭が真っ白になるという感覚を初めて知った。
王太子の身分も、剣の腕があっても、ユリアナの体を治すことは出来ない。ユリアナたちが失いたくない。でも、どうすれば良いのかわからなかった。
◆◆◆(ユリアナ視点)
カインは私の体の事を知ってしまっただろうか?
私はカインが調べているだろうことは頭の片隅ではわかっていた。
でも、知らないでいて欲しいと思っている。
もう少し上手くやり過ごすことは出来なかったのだろうか?使用人たちにも気付かれなように態度に出さないよう念押ししておけば良かっただろうか? 後悔はいくらでも出てくる。
窓の外はきらきらと陽が照っていて草木も生えている。暖かそうな外の世界に私も行きたかった。
他の子のように走り回りたい、日の光を気にせずに外に出掛けたかった。