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「やぁ、また来たんだね。……君も王太子なんだからそろそろ婚約者ぐらい作ったらどうかな?」
部屋に来たのが私だとすぐに気付いたんだろう部屋に来た途端に言われたのは成人してから言われるようになった苦言だ。
さらさら流れる肩で切り揃えられた白銀の髪が窓からの日に当たりきらきら輝いている。
それを眩しく思いながら近付いた。
「……私は弟と違ってモテないからね。なかなか出会いがないんだよ」
ベッドの傍らにある椅子に座り肩を竦めてみせる。
それに対しての彼女の態度は呆れた視線だけだった。
「この国の王太子が何を言っているんだい?たしかに君の弟君は国一番の美少年だろうけど、君だって決して不細工という訳ではないんだよ。ほら、君に懐いている娘だっていただろ?」
「………あの娘はその国一番の美少年な弟の想い人だよ。ユリアナは私に弟に恨まれろというのかい?」
「…たしかに以前見掛けた感じだと弟君がかまっている感じだったね。彼女はちょっと引いていたように見えたよ」
「城の者の話だと彼女の好みは兵士のような屈強な者のようだ。ちょっと弟とは系統が違う」
「……ままならないものだね」
「弟も頑張って体を鍛え始めたよ。実を結んでほしいと思ってる」
「そうだね。ところで弟君の恋愛模様も良いが君の恋愛模様はどうなっているんだい?」
せっかく話を上手くそらしたと思ったのに戻ってしまった。
「………私には好きな人がいるからね。まだ諦められないんだ」
「………そうか」
私が静かに告げるとユリアナは窓の方に視線を戻して呟いた。