過去編2(ユリアナ視点)
何故か私は今日から王太子直々にマナー指導を受ける事になった。
目の前に聳え立つお城に知らずため息が出てしまう。
王太子であるカイン殿下はきっと同い年なのにマナーに不安のある私を心配してくれたのだろう。優しい人だ。
私はそんな優しい提案にも王太子という肩書きにも拒否は出来ずに提案を受け入れてしまった。
私が門番に名前を告げると話しを聞いていたのか割とすんなり入場を許可された。
案内役にしたがって城内を進む。
「カイン様。こんにちは」
カイン様の名前が聞こえてそちらを向くと小さい女の子がきらきらした瞳でカイン様を見ていた。
微笑ましいなぁと思ったら横にいた異様に綺麗な男の子が面白くなさそうに見ていた。
「兄上どこかに行くところだったのでは?」
「うん。じゃあ、そろそろ行くな」
カイン様の後ろ姿を名残惜しそうに見送る少女を自分の方に意識を向けようとしている少年。
なるほど。青春ですな。
「カイン様。フォード侯爵令嬢をお連れしました」
私と一緒に青春劇場を見ていた案内の人がタイミングを見計らってカイン様に声をかける。
「あ、こんにちは。よく来たね」
「こんにちは。この度はよろしくお願いします」
案内の人とは別れてカイン様の案内に着いていく。
「この部屋で練習しよう。密室で二人は不味いから扉は開けておくけど良い?」
「お気遣いありがとうございます」