07 従魔ランマル
ランマルはホシト様と契約を交わした従魔だ。
全身黒い服で、口元もマスクで隠している。
被っている頭巾からは大きな耳、袴からは太い尻尾。
何といっても特徴的なのは怖いくらい鋭い目。
ランマルは、ラビット種の魔物の天敵、ウルフ種の魔物。
その中でも最も強いブラッディーウルフだった。
ランマルはホシト様が10歳の時に、どこからか連れてきた。
詳しい事はよく知らない。
ツキト様が10歳の時に私と従魔契約を交わしたから、同じ年にこのランマルと従魔契約を交わしたのだ。
兄上とお揃い♡になりたかったらしい。
私は彼を見た瞬間、本能で毛が逆立ったよ!
だってただでさえ天敵種なのに、人族だけでなくウルフ種にも太ってて美味そうという理由で追いかけられた事もあるんだから!
ホシト様はそれを知っていて、よく私にランマルを仕掛けてきた。
ランマルはホシト様の命令を忠実に聞いて、私を彼方此方追い回した。
「おお、従魔同士仲良く鬼ごっこか!良かったなユイ」
「ほんとですね兄上♡」
ツキト様は私の心情に全く気づかず、にこにこ。
ホシト様は隠れてにやにや。
まあでも私があんまり嫌がるとツキト様は止めてくれたけどね。
でも私はすっかりこのランマルが大の苦手になった。
しかも最近じゃ・・・。
「ひぃ!?」
べろり、と舌で耳を舐められ、鳥肌が立った。
マスクを下したランマルの口から、鋭い牙が並んで見える。
この牙を隠す為にマスクをしているのだ。
普段は国の子供達が怖がらないよう、マスクで隠しているとツキト様から聞いた時はちょっと感心したけど、私にはこうやって見せてくるので怖い。
「うぁ・・・」
鋭い牙が私の耳を噛む。
力は入っていない甘噛みだが、それでも私は恐怖で震えた。
怖い。
いつその牙が耳を噛み千切るか怖い・・!
ランマルの手が私の心臓辺りを探ってきた。
心臓えぐり取られる・・!?
「う・・・・ふ・・・・・」
怖くて声が出ない。
ランマルの両手が胸の辺りをまさぐる。
そのまま肉を引きちぎるんじゃ・・!?
ランマルは怪力だ。
前に鍛錬とかでバカでかい岩を片手で持ち上げていたのを思い出す(腰抜けるかと思った)。
最初は追いかけられるだけだったけど、今は甘噛みしたり心臓を狙うように胸元を触ってきたりと、私の恐怖を煽ってくる。
今日こそ食べられるんじゃないか・・!?
ツキト様・・!!!
心の中で私はツキト様の名前を叫んだ。
「ユイー!!!」
ああ、幻聴が聞こえる・・。
とうとう私はランマルに食べられたんだろうか・・?
あれ?体の重みが消えた。
恐る恐る見ると、ランマルは私の上からどいている。
「ユイ!何を寝そべっているんだ?」
ツキト様!!
ツキト様が来てくれた・・!!
それでランマルは私の上からどいたのか。
ああ・・・ツキト様の背中から後光が見える・・・。
「ユイ、寝ている場合じゃないぞ!次の嫁候補が決まった!」
ツキト様は私に写真を差し出す。
受け取って写真を見ると、とても優しそうで綺麗な女性だった。
今回は普通の人族のようだ。
「稽古場に行く前にな、ちょっと水晶玉を覗いたんだがそしたらこの娘が映ったんだ!運命を感じないか?早速素性調査に行ってこい!娘の住んでいる場所はイナパの国だ!」
なるほど。
それでホシト様はむくれているのか。
ホシト様、ツキト様のお嫁さん探しに憤慨しているから・・。
気持ちはちょっとだけ分かる。
でも。
「承知いたしました!早速調査に行ってきます!」
「うむ、頼んだぞユイ!」
大好きなツキト様。
貴方が幸せになれるのなら、私は喜んで貴方のお嫁さんを探しますね!
「ちっ・・せっかく兄上とラブラブな時間を過ごす筈だったのに・・お前もせっかく僕があいつと二人きりにさせたのに、まだモノにしていないのか!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ランマルはユイに対して、確かに食べたいという欲を抱いていた。
ただし、性の方で。
どういった経緯があったか分からないけれど、ランマルはユイに惚れていた。
口数が少ないのと、肉食と草食という関係から、ユイは全く気づいていないが。
ホシトもまた、実の兄であるツキトに本気で恋をしていた。
この二人、主と従魔とという関係と同時に片思い同盟を組んでいたのだった。
「全く・・物好きもいいとこだが、お前は僕の従魔。協力はしてやる。だから早く僕の兄上にいつもくっついてるあの邪魔な黒ウサギを仕留めろ!いいな!?」
「・・・・・・・・いつもありがとうございます・・。次は必ず・・」
「ああ兄上~~~~!貴方には僕がいます!何なら愛の力で僕は貴方の子供だって身ごもれます!だから僕に振り向いて兄上~~~♡♡♡」
「(・・・・・・・血のつながった兄弟だから無理じゃないだろうか・・?)」
ランマルは三白眼で、忍者のような格好をしてます
カムイノクニの人達は皆和服のような服を着てます