06 弟ホシト様とその従魔
「ツキト様、本日のおやつは満月屋のイチゴ大福です」
「おおっ待っていたぞ!」
ツキト様は本当に甘いものが好きだなぁ。
目をキラキラさせて、子供の時と全然変わらない。
今日も良い天気なので、外でおやつタイムだ。
「ユイ、お前も一緒に食え」
「えっ!」
ツキト様が大好きな甘いものを分けてくださるなんて・・!
これから雨になるんだろうか!?
「い、いえ。もったいないお言葉ありがとうございます。そのお言葉だけで十分でございます」
「遠慮するな!お前にはいつも世話になってるからな。ちこうよれ」
ぽんぽん、とツキト様は隣に座れという。
・・・今日は私の人生最高の日かもしれない。
「良い天気だな」
「はい・・本当に」
ツキト様からいただいたイチゴ大福をちびちび齧る。
あんこの甘味とイチゴの甘酸っぱさが絶妙だ。
満月屋のお菓子は私も大好きだ。
特にツキト様の隣で食べるこのイチゴ大福は、格別である!
この時間が長く続いてほしいな~とか思ったり・・。
しかしこの幸せも長く続かなかった・・。
「兄上~~~~~~~!!!!!」
ドーン!
「ぶっ!」
突き飛ばされた私は椅子から落ちる。
私を突き飛ばしたのは・・。
「おお、ホシトか。今日も元気だな」
「兄上!おやつの時間でしたら僕も呼んでくださいよ~」
「いやお前勉強していたろ?」
「そんなのとうに終わりましたよ!」
「そうか、偉いぞ。流石我が弟」
「えへへ♡兄上~~♡♡」
すりすりツキト様に抱き付いているのは弟のホシト様。
16歳で私より一つ年上。
とても可愛らしい顔立ちで、一見女の子にも見える。
私はこの、兄上大好きフォーリンラブ♡♡なホシト様に突き飛ばされたのだった。
「ん?ユイ?どうした地面に座り込んで」
「行儀が悪いなぁ。兄上の前で」
私はホシト様にはっきり言って嫌われてる。
大好きな兄上にまとわりつく邪魔な従魔として。
私がツキト様の従魔となったあの日もホシト様は大騒ぎした。
「何で!?兄上にはもっと強く立派な魔物がお似合いなのに!!」
って・・。
私もそう思った。
でもツキト様は。
「余が気に入ったから従魔にしたのだ!どれを従魔にしようと余の勝手だ!」
と言い切ってくれて、嬉しかったのは今でも覚えてる。
幸い、女王様と王様(オーク族だったのには驚いた)はツキト様が自分で考えて選んだのなら文句ない、と私を受け入れてくれた。
「き、気に入った・・・兄上が・・こんな・・魔物を・・・」
ホシト様は酷くショックを受けていたけど。
以来、私はホシト様に何かと目の敵にされている。
「兄上、この後、僕に剣の稽古をつけてくれませんか?」
「ん?別に構わないが?」
「やった!兄上大好き♡」
甘えた声を出すホシト様。
弟に優しいツキト様はすんなりOKした。
結構強い力で突き飛ばしてくれたなぁホシト様・・。
私は立ち上がろうとした。
だけど。
「っ!?」
背後から何かに圧し掛かられて、私は倒れ込んだ。
「んっな!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
嫌な予感に顔を上げるとやっぱり!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ランマル!!!
「あ、ユイは休憩タイムって事で休ませてあげましょうよ。ランマルも一緒に」
「む、そうだな。従魔同士積もる話もあるだろう」
「そうそう」
ない!!!
絶対にない!!!
そう叫びたいけど、ホシト様が睨んでくるので叫べない。
ツキト様の弟だから逆らえない・・。
「じゃあ行きましょう兄上♡」
「うむ。それではユイ、ランマルと仲良くな」
ホシト様はツキト様の腕を組んで稽古場へと行ってしまった。
私はランマルと二人きり・・。
嫌だああああああああ!!!