05 お嫁さん候補の素性調査
帽子で耳や角を隠して、尻尾は服で誤魔化して・・。
これで人族に見える筈!
私は首から移動石のペンダントを出す。
(移動石・行きたい所へ移動できる魔法石)
「トコ村の人気のない場所へ」
石が光る。
私はあっという間にカムイノクニからトコ村へ移動した。
「さて、エルフ族はどこにいるかなぁ」
私は村の中を探す。
家の影や人の影に隠れながら。
一応人族の変装はしたけど、勘が鋭い人は私が魔物だと気づく可能性が高いからね。
小さい子供も要注意だ。
純粋な目で見る分、感覚も凄い。
影ならどこにでも入れて隠れられるので、こういう捜査の時は結構役に立つ。
「あ、いた!」
写真のエルフ族の女性がいた。
井戸で水を汲んでいる。
馬車の影の中に隠れながら私は女性を観察した。
はー・・こうして見るとほんと綺麗でナイスバディ・・・。
村の男達も見惚れて、奥さんらしき女性達に耳引っ張られてる。
耳は痛いよ耳は。
あー・・ツキト様がお嫁さん候補に選んだのも分かるなぁ・・・。
・・・・・ん?
・・・・・・・・・・あ・・・・・。
「ツキト様、ただいま戻りました」
「おおユイ!早かったな!それで、どうだ?余が選んだ今回の嫁候補は?」
ふかふかの座布団の上で胡坐をかいて座るツキト様の前に膝まづく。
「はい申し上げます。お名前はヒルダ様」
「おお、美しい名だ!それで?」
「彼女はとても働き者で、足腰が弱ったお年寄りの為に変わりに家の中を掃除したり料理をご馳走したりと、村で評判の女性です」
「おお!!姿だけでなく心も美しいのか!!よし、早速迎えに行こう!」
「ですが」
「ん?」
今にも駆けだしそうなツキト様に、私は最も重要な事を告げた。
「ヒルダ様はもうご結婚されてて、子供が3人おりました」
ガーーーーーーーーーーン
ツキト様は畳の上で項垂れる。
「・・・・・旦那との仲は?」
「幸せ、そのものでした」
子供達に囲まれ、夫の隣で笑顔を浮かべていたヒルダ様を思い出す。
「・・・そうか。仲良き事は良い事だ。しかたないっすっぱり諦めよう!!」
ツキト様はとても優しい。
相手の家庭を壊してまで、お嫁さんを娶ろうとはしない方だ。
そんなツキト様が、私は大好きだ。
私はただの従魔だから、この想いを告げる事は一生ないけど。
ツキト様の幸せの為に、全力で頑張りたいと思う。
「では次の嫁候補だ!実はお前が出かけている間、また余の好みの女を見つけてな!次はこの娘の素性調査をしてくれ!」
・・・・・全力で、頑張りたい・・・うん。