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02 ツキト王子とぽっちゃり黒ウサギ1



カムイノクニ。

小さな国だけれど、この世界で最も豊かで平和と言われている国。

農作物は栄養を豊富に含んで育ち、流れる水は清らかで淀みがない。

だから豊穣と水の国とも呼ばれている。

そしてもう一つ。

この国は、人の姿をした神が暮らす神聖な国とも呼ばれている。


ずっとずっと遠い昔の事。

この国は草一本生えない死の大地と化していた。

人々が死に絶えかけた時、哀れに思った天の女神はこの地へ降り立ち、天の世界にある【恵みの泉】から、大地に雨を降らせた。

【恵みの泉】の雨は、死の淵にいた人々を瞬く間に蘇らせた。

雨は降り続け、やがてこの大地に【第二の恵みの泉】ができた。

泉のお陰で土から新しい命が次々と芽生え、草一本なかった大地は緑の大地となった。

天の女神は天に帰る前、一人の人間と恋に落ちて結ばれ、子を成した。

神の血を引く子供はやがて国の王となり、国を更に豊かに発展させた。

神の血を引く子供、そして【恵みの泉】の雨により蘇った人々は、アラヒトガミ一族と呼ばれるようになり、この国は、人の姿をした神が暮らす神聖な国と呼ばれるようになった。


====================


私がツキト様と出会ったのは、8年前。

ツキト様が10歳、私が7歳の時だ。

当時の私は、まだ人型ではなかった。


シャドウホーンラビット。

見た目はツノが生えた黒いウサギだ。

特技は影の中に入れる事。

ただそれだけ。


おまけに私は何故か、他のシャドウホーンラビットよりも生まれつき体格が大きかった。

要はデブに生まれた。

それで人族に何度狩られそうになった事か・・!!

人族は、私達魔物を狩って、肉を食べ皮を剥いで売りさばくという噂を聞いていたので、私は人族を見るとすぐに逃げるようにしていた。

でも人族達は私を見て・・。


「丸々と太った奴だ!!捕まえてシチューの具にしてやろう!」

「丸焼きにしたら美味そうだ!!」


私は必死に逃げまくった。

お陰でデブでいながらも、足腰は鍛えられ逃げ足はどのシャドウホーンラビットよりも早くなったよ。

私がカムイノクニに迷い込んだのも、人族達に追われてがむしゃらに逃げまくってた時だ。

そりゃあもう逃げに逃げまくった。

どこをどう通ってきたのか覚えてなんかない。


気づいたらとっても綺麗な森の中。

こんなに生き生きと覆い茂った緑は見た事がなかった。

しばらく呆けていると、いきなり両耳を持ち上げられた。

それが森の中を散歩していたツキト様だった。


「随分太った奴だな」

『い、いやーーー!!食べないでええええ!!!』


人間に捕まった!

私はばたばた暴れた。


「食うか馬鹿者。俺はウサギの肉は好かん」

『・・・え・・?私の言ってる事、分かるの?』

「分かるぞ。余は偉いからな」


どきんっ!


蜂蜜のような黄金色の瞳。

日の光で、星屑のようにキラキラした銀色の髪。

にかっと笑ったその人の笑顔に、私の心臓は跳ねた。


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