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011 ぽっちゃり黒ウサギは褒められる



「200万ベルンで脅すとは何事だサキニー!?」

「チェリーちゃんの弱みに付け込むなんて、そんな子に育てた覚えはないよ!!」

「し、知らない!!俺はそんな事言ってない!!」


サキニーは尚もシラを切る。

と、店主の足元に何かがコロコロと転がってきた。


「ん?何だぁ?」


店主はそれを拾う。

それは丸い、たまごくらいの大きさだった。

目のような絵が描かれている。


「あ、それは【映し眼】という魔道具」

「ああ、今流行りの」

「確かこれに映した風景は動きも音もそのまま保存できる魔道具です」



へーこれが・・と店主は指でどこかを弄ったのか、目の部分が光って、壁に何かを映し出した。


「おお!!何か壁に映ってる!」

「こうやって壁に保存した風景を映し出して楽しむ魔道具だと聞いた事があります」

「まあ見て!この街の風景だよ!皆動いてる!音もちゃんとある!まるで店の中なのに外を見てるみたいだねぇ」


魔道具から映し出される光景は、この街のものだった。


「ん?サキニーじゃないかあれ」


店主が魔道具が映し出した人物が誰なのか気づく。

サキニーは、人気のない場所である女性と密会していた。


「げっ・・・・」


サキニーはそれを見て顔を青ざめさせた。


『もうすぐ結婚するのにこんな事していいのぉ?』

『ばーか。俺が本気で愛してるのはお前だけだよ』

『じゃあ何で結婚なんて申し込んだのぉ?』

『俺の代わりにあのしょぼい酒屋で働かせるためさ。親父もおふくろももう年だからそろそろくたばるだろうし。そうなったら離縁してとっとと店を売ってその金でお前と改めて結婚しようぜ』

『ふふ、悪い男』


そうしてキスしあう二人。

映像は其処で終わった。


しーーーーーーーん。


静まり返る店内。

店主と妻の額にびきびきと血管が浮き出る。


「ち、違うんだ親父、おふくろ・・・お、俺この女に付きまとわれててさ!それで話を合わせてただけで」


サキニーの言葉が途切れた。

店主と妻のダブルパンチで見事にぶっ飛んだからだ。


「「こんの・・・・・恥知らずがあああああああああ!!!!!!」」


店主と妻の怒鳴り声は、街中に響き渡った。


====================



「・・・という訳で、サキニーは店主の親戚で同じく酒屋の店に引き取られ厳しく鍛えられる事になりました。300万ベルンは、ご夫妻は80万ベルンだけ受け取り、残りはアランさんとチェリーさんの結婚費用にあてがってほしいとお返ししました。

チェリーさんは、今でも酒屋さんでお仕事を続けております。

借金や罪滅ぼしではなく、酒屋さんの仕事が楽しいからという理由で」


ツキト様はふかふか座布団の上で静かに私の報告を聞いている。

何故かホシト様とランマルも一緒だ。


「つまりお前が部屋に数日留守にするという手紙を残したのは、余の嫁候補と別の男の恋を救うためだったという訳か」

「・・・っ・・。申し訳ありません」


言い訳はしない。

だって、本当の事だから。

私は包み隠さず全て報告した。

どうしても、あの二人をほっとくなんてできなかった。


「しかも兄上から貰ったサファイヤを差し出すなんて・・・」


カムイノクニでは宝石も土を掘れば簡単に出てくるくらいいっぱい採れる。

あのサファイヤは昔、私へのご褒美にツキト様がくれたものだ。

大事な大事な宝物。

でも、宝石はお金になると聞いていたから、あのサファイヤを使えば借金くらいは返せるんじゃないかと思った。

実際はもっとお金になったんでびっくりしたけど。


「魔道具まで使って一人の男を陥れた・・よくそこまで頭が回るものですね、流石は兄上の従魔」


イヤミにしか聞こえない・。

だって、あのサキニーって男の事も調べたら何か掴めるんじゃないかと思って調べた矢先にアレだもん!

素性調査に役に立ちそうな魔道具は常に持っていたから、それでつい使ってしまった・・・。

でもおかげでサキニーの悪だくみはバレたんだから後悔はしてない。

・・・・・だけど、やっぱりツキト様怒ってるだろうか?


「・・・・・・・・ユイ」


ツキト様は立ち上がって私の所に来た。

どきんどきんと心臓が早く鳴る。

怖くて顔が見れない。



ぽん、と頭に暖かい感触を感じた。


「よくやったユイ。それでこそ余の従魔だ」


顔を上げると、ツキト様の笑顔が目に飛び込んできた。


「宝石を使うとは中々に機転が利くな。それに互いに愛し合う者を助けたその行い、立派だ。余はお前を従魔にして改めて誇りに思うぞ」


頭を優しく撫でられた。

ツキト様のなでなで・・!


「で、でも・・ツキト様からいただいたものを私は・・・それにチェリーさんはお嫁さん候補でしたのに・・・」

「あんなの、またいくらでもやる。余の選んだ嫁候補をお前は幸せへと導いた。それが余は何よりも嬉しいぞ。ユイ、大儀であった。本当にお前は素晴らしい従魔だ。なあホシト」

「え、ええ!そうですね兄上(ちっ!あの黒ウサギめ・・!兄上のなでなでを独占しやがって・・!・・・でもまあ、結果的に嫁候補を潰してくれたんだから、少しは見なおしてやるか・・・)」


ツキト様はずっと頭をなでなでしてくれた。

ほわっと胸があったかくなる・・。

ホシト様の目が怖いけど、私は幸せで死にそうだった。


ツキト様、一生貴方についていきますからね!


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