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010 黒ウサギが咥えていたのは大粒の・・



アランは低ランクのハンターだ。

S、A、B、C、D、E、Fとランク分けされていて、アランはEランク。

稼ぎは良い方とはいえない。


「はぁ・・俺にできる事はないのか・・・」


町はずれにある自分の家へ向かうアラン。

すっかり夜中だ。

人も殆どいない。


「・・・・ん・・・?」


アランは何か違和感に気づいた。

暗い夜道に何かもっと黒いのがいる。

アランは目を凝らす。


「・・・・ウサギ?」


大きなウサギだ。

いや、かなり太っているというか・・。

頭からツノが生えていて、珍しいウサギ・・・。

・・・・ツノ?!


「魔物か!?」


アランは剣を抜く。

そしたらウサギはびくっと怯えた様子で、口に咥えていた何かを落として森のある方角へ逃げていった。

アランは急いで追いかけるが、ウサギはあっという間にいなくなった。


「何て逃げ足の速い・・。とにかくギルドに知らせておかないと・・。そういえば何か落としていったな・・」


アランはウサギがいた辺りを探す。

そして見つけた。


「こ、これは・・・・!」



三日後。

酒屋は今日は休みだ。

店の中は、店主と妻、チェリー。

そして隣町から帰ってきた息子サキニーもいた。

結婚式の相談をしているらしい。


「やっぱり派手なほうがいいわよぉ。ドレスは私が昔着たやつがあるからドレス代は心配いらないわよ」

「母さんのじゃ時代遅れだろ。大体サイズが・・」

「あんた!何か言った!?」

「いえ何も」


店主と妻は意見がぶつかりながらも楽しそうだ。


「村中の人を呼んで祝福してもらおうなチェリー」

「え、ええ・・・・」


サキニーに笑顔で返すチェリー。

だがその笑顔はどことなく暗い。



どんどんどん!


「おや、誰だろうね?今日は休みなのに」


店の戸を激しく叩く音。

店主の妻が誰だと聞くと。


「俺です、アランです。入れてください」

「(アラン!?)」


戸を開けるとアランが立っていた。

驚くチェリー。


「すみませんお休みの日に押しかけて・・。どうしても皆さんにお話があって」

「話って、何だい?」


アランは麻袋を持っている。

店主の妻に中に入れてもらい、アランがチェリー達が座るテーブル席に行く。


「まず、これをお受け取り下さい!」


アランは麻袋の中身をテーブルにどさどさっと出した。

札束だ。

分厚い札束が3つ、テーブルに落ちる。


「こ、これは!?」


全員驚きに目を見開く。


「全部で300万ベルンあります」

「さ、300万ベルン!?」


店主はひっくり返りそうになる。

アランは札束を並べ直すと、床に正座で座り込み頭を下げた。


「チェリーの借金はこの中からお支払いします!残り220万ベルンは全てサキニーに・・これでチェリーとの結婚話を取りやめにしてください!」

「なっ何を言いだすんだお前!?」


がたんと椅子から立ち上がるサキニー。

チェリーは驚きで声も出せない。


「ど、どういう事だいアラン・・最初から説明しておくれ」

「はい・・。チェリー、俺は全てを話す。良いな?」

「あ・・・・」

「チェリー・・?どういう事だ?」


店主がチェリーに聞くけれど、チェリーは何も答えられなかった。


「いきなりで本当にすまない。チェリー、俺を嫌ってもかまわない。だが、いつまでも隠していてはそれこそお二人に失礼だと、俺は思う・・」

「・・・アラン・・・・」


アランは困惑する店主と妻に全てを話した。

自分達の事も、チェリーの父親の事も、罪滅ぼしの為に働いていた事も、そしてサキニーの事も全て。


「う、嘘だ嘘だ!全部こいつのデタラメだ!おいアラン!いきなりやってきてデタラメぬかすな!大体いつもぎりぎりの生活をしているお前がどうやってこんな金用意できたんだよ!?」

「三日前、街に魔物が出た噂は聞いただろ?」

「あ、ああ・・。低ランクの魔物だけど要注意しろってギルドから知らせが来たよ。ねえあんた」

「うむ・・・・」

「その魔物を最初に見つけたのは俺で、ギルドに知らせたのも俺です」


アランはその時逃げた魔物が落としていった物を見つけて驚愕した。

それは大粒のサファイヤだったからだ。

傷一つない見事なサファイヤ。

魔物がどこからか盗んだのかと思い、アランはギルドに魔物発見の知らせをした後、自警団にサファイヤを持って行った。

そこへサファイヤを魔物に盗まれたという女性が入ってきた。


『ああ、それは私のサファイヤです!よく見つけてくれました!』


女性はサファイヤの持ち主だという証拠に、サファイヤと映ってる写真を見せた。


『何でしたら【真実の天秤】を使っても良いですよ』


【真実の天秤】は真意を調べる為の魔道具で、真実を語っているなら右の皿が傾き、嘘なら左の皿が傾く。

自警団、ギルドに必ずある魔道具だ。

それで使ってみたが、サファイヤは自分のものだという女性の言葉に【真実の天秤】は右の皿が傾いた。

これでサファイヤは女性のものだという事が判明された。


『ありがとうございます見つけてくれて!このサファイヤはお礼です差し上げます!私の感謝の気持ちです!それでは失礼いたします!』


止める間もなく、サファイヤをアランに押し付けて女性は早々と去ってしまった。

勿論追いかけたけれど、女性の姿はどこにもなかった。

アランはサファイヤをどうしようかと思ったが、見ていた自警団が魔道具の結果も出たし、それは自分のものにしても大丈夫だろうと、判断したのでサファイヤはアランのものになった。


「それでサファイヤを鑑定してもらい、300万ベルンの価値が出たのでそのまま売ってお金を貰い、ここに来ました」

「う、嘘だ!!そんな都合の良い話があるか!!!」

「なら自警団に行って聞くと良い。俺は嘘は言っていない」

「ぐ・・・・」


店主と妻はチェリーを見る。


「チェリーちゃん・・本当なの・・今の話・・」

「っ・・・ごめんなさい!!!」


チェリーはぼろぼろ泣いて頭を下げた。


「おじさんとおばさんを騙すつもりはなかったんです!でもおじさんは父を信じてお金を貸してくれたのに裏切って・・。それを知ったらどれだけ悲しむか、それを考えたらどうしても本当の事を言えなくて・・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・!」

「・・・・・・確かに悲しい・・・」


ぽつりと店主は呟く。


「どうして、本当の事を言ってくれなかったのか悲しい・・。だがそれ以上に、俺達の事をそこまで思ってくれたチェリーちゃんの辛さに気づかなかった俺自身が許せねぇ・・!」

「え・・・・」

「あたしもさ。チェリーちゃん、確かにこの人を騙したあんたの父親は許せない。でもチェリーちゃんが父親の罪を背負う必要はないんだ。借金なんてもう気にする必要はない。ねえあんた」

「ああ、そうだ。今まで本当にありがとうチェリーちゃん」

「ありがとうね」

「おじさん・・おばさん・・・・」


チェリーはまた泣いた。

その肩を優しく撫でる店主の妻。


「アラン、よく話してくれた。ありがとう」

「いえ・・。いきなり押しかける真似をしたのに驚かせてしまってすいません・・」

「いやいや。感謝するよ。それよりサキニー・・お前から色々聞かなくちゃいけないようだな!?」


びくっとサキニーは冷や汗を流した。

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