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今日から学校と仕事、始まります。①莞

酔って、死にそうで、シャワー浴びろ

作者: 孤独
掲載日:2018/07/17

ゴクゴクゴク……


「ぷはー」


居酒屋のカウンター席。

仕事終わっての一杯。格別である。


「生、もう一杯」

「弓長さん。そんなに飲んで大丈夫?11杯目だよ?」

「ご主人、大丈夫ですよ。ウチの会社にはもっと化け物が、何人もいるんで」


泥酔しててもおかしくない量の生ビールを飲みまくっても、素面と言えるような表情で注文。

若さに重なって、隣にいる野郎と比べれば、格差溢れたイケメンな弓長晶。


「ちくしょー、なんだよ。コノヤロー」

「三矢さん。飲みすぎですよ。7杯も飲んじゃいけません」

「うるせぇー!俺はイケメンが嫌いなんだよ!」


弓長と対比するように、三矢正明はヤクザ面。これでも同じ営業担当をやっているわけだが、三矢のそれは気が乗らない、ヤクザ手法での営業活動。弓長はご綺麗な通販をやっているようなトーク術で営業するスタンス。

まったく逆だから、客先で。特に女性陣から嫌われたやり口に


「営業なんて、営業なんて……イケメンだけがやりゃあいいんだよ!」

「何言ってんですか。三矢さんがいなかったら、男性客やご高齢の方をターゲットにできないじゃないですか。私にはない事ができる。三矢さんの素晴らしいところです」

「うっせーな!俺だってな!!俺だって!!仕事終わりに『三矢さん。これから一杯どうですか?』とか、『あの、今度。日曜日、お会いできませんか?』みたいな!!そんなイケメン!リア厨!!仕事になりたいんだよ!!女性に誘われたいわ!」

「そんな三矢さんの心をケアするために、お付き合いしてるんですよ?一部では『え?三矢さんと弓長さんってできてるんですか?』『アーッのご関係?』なんて、私のイメージダウンもあって。それもご覚悟して、付き合ってあげてるんです」

「ふざけた事を抜かすんじゃねぇ!!」


格差社会なんて当たり前。人間そんなもん。この世に勝ち続けた人などいるだろうか?

また、勝つ事がなにもかも合っているか?

負けていいわけじゃなく。



「やりてぇっ……やりてぇよ……」

「三矢さん。中年男性がそんなことほざいていると、やべぇー奴にしか見えません」



◇      ◇



好きに望んだことをやる。簡単なんだが、難しいことだ。

大人って、金があっても、暇がねぇ。



「ちくしょー、よ」

「飲みすぎですよ。三矢さん」


ホントにさっき言った事がマジになっているのか?

弓長が肩を貸し、三矢を抱える形でお持ち帰り状態。


「それは誰得なんですか?」

「知らねぇーよ」


一生懸命に生きてていても、辛い時はいつだってある。そんなお前の気持ちなんか、知ったこっちゃねぇ空気で、公園の即席ブランコに向かい合うサラリーマン風の男性。


「……………」

「お?」


酔っている幻じゃない。おそらく、自分が吊るした縄ブランコと向かい合って、この世の終わりを知ろうとするんだろう。三矢は興味本位で弓長を動かし、誘った。


「なんだなんだ?自殺か、お前?」

「三矢さん、よしなさい。ロクでもない人助けなんて……」


最期って時に酔っ払いに絡まれる、自殺志願者。

面と向かうと、しょうがないが。年上らしいことに気付いてしまう。


「なんだあんた等、……関係ねぇだろ?」

「あるよ。公園はガキの遊び場だ。死ぬなら過労死にしろ。亡霊が公園に現れちゃ縁起が悪い」

「それが怖いから自殺を選ぶんでしょう?」


生きてみろよ。って言葉。おそらく、若いんだったら言えるだろう。

先に色々ありゃあ。


「ヒクッ」


酒の臭いが強い。それは自分と弓長だろう。だが、自殺者からは


「汗と垢の臭いだ」

「嫌なことでもありましたか?」

「……カンケーない事だ。もう俺はいいんだ!」


まぁ、興味ねぇよ。

それが弓長の心理だろう。付き合いのある三矢にはそのことが分かっていて、自分はまったく違う。思えることがある。



「彼女に振られたとか?会社の倒産か?」

「カンケーねぇだろ!!」

「お前にはカンケーねぇんだよ!ここは公園だぞ!テメェっつー、ゴミを処分する市民様を巻き込んでんじゃねぇー、バーカ!!」


自殺を防止するには全く持って、不適切な言葉だろうか……。


「弓長ぁっ、見とけよ。こんな社会に失望した男を俺ぁ。ひくっ」

「女性だったら良かったですね。ラブコメの波動が生まれそうだったのに」

「行くぞぉ。人に前を向かせて、生きさせて。!うぷっ……」



ゲロロロロロロ…………



◇        ◇



カポーーーンッ


「いやぁ、近くにスーパー銭湯があって良かったですねぇ。服も貸してくれるし。生ビール、私から奢りましょうか?」

「いい。もういい」



自殺者はとりあえず、風呂に入った。久々のデカイ風呂だった。

三矢も弓長も一風呂。


「あー、吐いた上に風呂にも入るから、気持ちいいわ」

「よかぁないですよ。なんですか?カッコつけて、ゲロ吐いて……」

「いいじゃねぇか、な?いいだろ?」


良くない。そんな顔をする2人。


「ガキの頃。バス酔いしてやったのを思い出したわ」

「童心に帰ってどうする」

「あははは、んなところだろ。生きていくのも楽じゃねぇな」


自殺したい人間の傍。むしろ巻き込んでまでやった自分の恥。


「…………もう少し、生きてみて考えるよ」

「そうですか。その方が良いですよ。まだ面白いことはあるもんです。人に向かって、ゲロ吐いて、笑っている男もいるんですから、ねぇ」

「五月蝿ぇな」


些細な事ではあったが、こんな形ながら


「……シャワーと風呂はいいな」


趣味ができた。

生きてみて、悪くないという、理由づけだ



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