表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/55

不穏な夕食

相変わらずの夕食であり、何とも言えない空気を感じる。

二人の視線を感じながら、一人は、もちろんブリジットで、使用人たちは、別時間に食事をするため、給仕の為立っている。

もう一人は、例の一番下の妹の執事であり、やや殺意を感じないでもない。


やれやれだぜ。

やれやれ系主人公になった気分を味わいながら、料理は味わえなかった。

俺のテーブルだけ、緑系の野菜が多く盛られている。

料理長は、“トレント”種の“種別固有能力”をもっており、【育成補助】という、植物の成長を促進する能力もちであり、館内の農園にて、多くの野菜を育ててくれている。


その夕食時耐えきれず、この三か月ずっと思っていたことを口にする。


「そろそろ、学校に通いたいんだけど」


ガタン!

それぞれの椅子で、転げ落ちそうなくらいの音がした。

おいおい、コントかよ。

別でやってくれ。


「冗談はよせ!」


長男が、父親の代わりに叫ぶ。


「冗談じゃないよ兄さん。なんで俺だけ通えないんだよ」


「それは、お前が魔術の一つも発現できないからだ!」


「モノの本によると、魔術が使えなくても、世のために役立った人々はいるし、昔の人々は発現できないことの方が多かったと聞くんだが」


「このご時世、魔術の使えないものはヒトではない」


「だいたい、魔術もピンからキリまである。最終的には、攻撃系の魔術しか覚える事の出来ない人もいる。その人たちが、すべて兵士になっている訳でもない」


「魔術は絶対だ!」


「魔術は絶対ではない」


「貴様!」

激昂した、一番上の兄が、右手をかざし詠唱し始める。

この兄からは、オーソドックスな魔術の発現しか見ていない。

しかも、実直に俺の正面を狙っている。

ブリジットが動こうとしたが、目で止めた。

他の使用人や家族は、全く動く気配がない。

詠唱終了と共に、紅い炎の玉が飛んでくる。

殺意のある攻撃ではないし、発現までにタイムラグがそれなりにある。


発現と同時に、容易に回避し、長男の首を背後から締め上げる。

さすがに、長男の執事が引きはがしに、来るが長男の体を盾に、それを妨害。

前からでは、首に絡めついた腕を剥がすのは容易ではない。

しかも、ここ数ヶ月筋トレに励んだ為、それなりに力もついている。


程なく、長男の両腕から力が無くなり、倒れ込む。


「魔術は、手段ではあるが、万能ではないんだよ」


家族のほとんどが、この惨状にあたふたしている中、「ご馳走様」といって、食堂を後にする。


その後、部屋ではブリジットが、先ほどの事は無かったかのように、筋トレ後の汗をかいた俺に、タオルを渡してくる。いつもとかわらず、表情を表にあまり出していない。


程なくして、父親の執事が入ってきて、ついてくるように言われた。

恐らく、折檻が待っているのだろう。

ブリジットも、主を止めなかった責任としてついてくるように言われていたが、俺が止めさせた。


「主の行動を止めなかった事には、罰を与えなければなりません」


「俺が、阻止しないように命令を下していた。その命令に、忠実に従ったのだ。忠臣として遇する必要がある」


俺の強い、瞳に負けたのか、その執事は、今回は不問としましょうと言った。

ブリジットには、この部屋の留守を依頼し、時間になったらこのベットを利用して休憩をとるように命じた。

本人は、連帯責任でも構わないと主張したが、主の命であると強く諭したところ納得した。

久しぶりに、彼女の焦りの表情を見る事ができた。表情が豊かでなくても良いが、俺の前では少し出しても良いと思っていたので、うれしかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ