勇者は再び教会へ戻る
体のしびれはすぐには抜けない。
このまま、相手に追撃されて本当に意識を失うしかないのか?
タークスが、距離を詰めてくる。
しかし、突然俺の目の前に、大きな壁が現れる。
その壁は、タークスの前進を阻み、彼は一瞬自分の速度を殺した。
その瞬間、彼の足元は、泥となり彼の体を飲み込んでいく。
ブリジットの土系統の魔術により、体勢を立て直す時間を稼げた。
激痛は残っているものの、体の自由は取り戻せた。
左腕の腕輪にマナを流す。
壁の向こうで、タークスが、泥に必死で足掻いている姿が、マナの流れとして見える。
【影雷・二式】
爆音が鳴り響いた。
その音が木霊し、周囲の空気を揺さぶり終えたとき、タークスの体は崩れ落ちた。
見えない雷が、タークスを襲ったのである。
けっしてこの数日を、ただ怠惰に過ごしたわけでは無く、それなりに準備はしていたのだった。今のは、《閃光》をコアとする雷と、《幻覚》をコアとする透明化の紋章をリンクさせる事により生み出したものである。
横で悲鳴が聞こえた。
どうやら、リンヴァーラの【ドラゴンテイル】によって、魔法使いのエレナさんが、吹き飛ばされたようだ。
先ほどの戦闘の爆音により、ボルの支援が聞き取りづらくなった為、高度の魔術の連続使用が難しくなり、リンヴァーラに隙を突かれたらしい。
あの強力な鞭による一撃は重く。
彼女も動かなくなってしまった。
集団戦によりその力を、二倍三倍と高める事ができる勇者倶楽部であったが、その連携を乱すことにより、お互いの相乗効果が失われ、集団戦による優位さを失っている。
五対五の中で、二名の差は大きく、ボルはマルコメ君の自己強化したマルコメチョップにより意識を失う。
ボルの戦闘不能により、勝敗はほぼ決した。
魔導砲により、ドロシーを吹き飛ばした。
勇者であるアレックスは、体制を立て直した後、一人で奮戦したものの、最後は、ブリジットの強化した弓矢の一撃により、会場外まで吹き飛ばされて勝負がついた。
それを見た観客は、あっけにとられ時が止まったように、静寂が訪れる。
「なっ!なんてことだ―優勝候補であった勇者倶楽部がここで敗退!あの編入生たちはいったいどうなっているのだろうか!決勝へ進んだ彼らを止める事の出来るチームは存在するのでしょうか!それではまた四日後が楽しみです」
そう司会が締めた所で歓声が上がる。




