小悪魔
リンヴァーラが全てを出し切って、魔導リングの光を渡す。
倒れ込むまでは行かないが、息を整えるように体を折り、立ち止まる。
その光を受けて、ブリジットは、静かに目を開く。
そして、リンヴァーラの肩に、優しく手を置いてから、【リインフォース】を全身に発現させる。
静かに、そして誰よりも雄々しく疾走する。
障害物になる建物は、壁を蹴って昇り、常にゴールに向けて、一直線に走る。
時には、建物の内部に入り、窓から窓へとアクロバティックに抜ける。
先頭者が、ゴールに差し掛かる。
飛行能力を持つ、インテリジェンスの所属するチームであり、難なく一番を獲得している。
予選では、上位二番目までが、選抜戦へ出場できる事から、油断をしていた。
そして、建物と建物の間から飛び出した、黒い影に不意を突かれてしまうのだった。
その影は、抜け出した建物の反対側の建物を、蹴り飛ばし、壁面に大き目のクレーターを作った後、その反動により、ゴールへ飛ぶように滑り込む。
そして、ゴール地点にある柱状の魔導機工に向けて、魔導リングを高らかにかざすのであった。
まるで勝利を宣言するように。
ま、マジでカッコいいんですけど、うちのメイド。
このレースをきっかけに、その雄々しい走りから、女性のファンが増えた。
そして、そのゴールでの凛々しい姿に、知名度と男性ファンも増えたそうだ。
予選では特に、実況はついていないが、ゴール後は割れるような喝采が起こったらしい。第三レース無名のダークホースの俺たちは、その後の学生新聞のリポーターにつかまり大変だった。メインは、ブリジットではあったが、そつなくインタビューを切り抜けていた。
祝勝をしたかったが、そんなこんなで、逃げるように解散して、自室でブリジットと食事を済ませ、いつもより早く彼女を自室に返す。
その際、彼女にお礼を言うと
「リンスター家のメイドは、あのぐらいこなせなくては務まりません」
俺はあきれた声で
「歴戦の兵士のはしりだったぞ」
彼女は少し悪戯な微笑みで、少し顔を近づけてきて
「いいえ、私は、あくまでメイドですから」
そう言い放ち、一礼したのち反対側の自分の部屋に戻っていく。
その後ろ姿を見てつぶやく。
「小悪魔じゃないか……」
昨日の焼肉の所為だろうか、夜なのにやけに今日は、温かく感じた。




