折り返し地点
俺は、ジュラから魔導リングの光を受け取ると、通常のダッシュで森の中に侵入する。
ここでも、飛行能力持ちが力を発揮できるが、あえて森の中を進む事にした。
早く風の様に走りぬける。
息が上がり、心臓が大きな音を立てる。
魔導リングの位置情報では、敵の動きは読み取ることができない。
しかし、考えている時間もないだろう、特に速度強化をしているわけでは無いので、通常の人間の走行速度でしかない。
しかし、まだ飛行能力持ちが、頭上を越えていく事は無い。
俺が今のところは、一位なのかな?
姿勢を整えて、肺に酸素をいれる。
上半身を、軸の動きだけにして、無駄な動きは極力避ける。
走れ
早く走れ
もっと早く走れ
毎日走り込みをしていると、目標がほしくなってくる。
イメージをしよう、一歩先を行く自分を。
結局は、何時もボッチで走っている俺は、今を乗り越えた未来の自分が敵であり、目標である。
ふと、両サイドに気配を感じる。
魔獣の類か?
暫くすると、その気配が距離を詰めてくる。
無駄な力を抜き、感覚を研ぎ澄ます。
【仙道】
森が開けてきて、折り返し地点が見えてきた。
その折り返し地点に立っている柱に向けて、魔導リングをかざす。
そして、後ろを振り向き、二つのアンノウンを確認する。
「わははは。貴様を沈めれば我らの予選通過は、間違えなかろう」
「わははは。かかってきなさい」
愉快な奴らだ。
二チームが手を組んで、抑え込もうとしているようだ。
似たような顔の男たちが、距離を詰めてくる。
両方槍を所有しており、それぞれが、顔の前で印をきる。
槍の先端が分裂して、こちらを襲ってくる。
数十、数百の槍の雨が襲ってくる。
懸命に受けるが、さすがに受けきれるわけでもなく、無数の傷が体に刻まれる。
「わははは。我らの【獣王百連槍】は無敗ぞ」
「わははは。ほうれほうれ」
厨二臭いネーミングの技に、翻弄されつつ徐々に後退する。
後一歩で、折り返し地点の柱に、追いつめられるその瞬間。
【瞬刻】
ガツリ
柱に、槍があたり、二人はややのけぞった。
【雷神の一振】
横一線で薙ぎ払う。
二人は倒れ込む。
刀の一撃と雷撃により、当分起き上がることはできないだろう。
急いで、リンヴァーラのもとへ走り出す。
時間はそんなに掛けなかったが、後方から追いついてくる者もいる。
肺が破裂しそうなくらい悲鳴を上げているが、進むしかない。
耳に、獣のうなり声が聞こえる。
まったく、トラブルに好かれているのかね。
リ○さんの様に、ラッキースケベならいいんだけどね。
巨狼が、二体姿を見せる。
ほら、ラッキースケベは無いようだ。
あっ、でもでも二体が急に美少女になったりして。
いえ、期待してませんとも。
彼らと並走しながら、進む。
こちらの動きを見ながら時折攻撃を仕掛けてくる。
十回ほど、そのやり取りを続けていくが、そろそろ頃合いだろう。
全力で速度を殺す。
止まる勢いに任せて、手裏剣を二本引き抜く。
【炎魔手裏剣・二式】
【風魔手裏剣・二式】
それぞれ、後方へ転換しようとした二体が、動きを止めた瞬間に、命中する。
激しい風と炎が交錯する。
さすがに決めてとはならなかったようで、刀を引き抜き、首筋を狙い切りつけ、倒す。
シミュレーション魔獣なので、マナが霧散するのみであった。
前進しながらではあったが、戦闘により、やや遅れてしまった。
現在自分が何位なのかも定かでは無かった。
脚力の上がる紋章でも刻めばよかったと、今さら後悔しながら、
刀をしまい、再び走り出す。
あわせて、【召喚】により手裏剣を回収する。
暫く妨害も無く、直進する事ができた。
しかし、ふと気づいた時には、レンガ造りの遺跡に迷い込んでいた。




