新たなる力
昨日は少し寝るのが遅くなったので、起きるのもお昼時になってしまった。
学生はこんなもんでいいんだよ。
楽な格好になり、飲食街へ出かける。
学園新聞なるものが、近所の書店で売られており、一部購入してから、朝食が取れるお店へはいる。
今日は、パンにコンソメ風の卵スープ、鶏肉、緑茶。
ゆっくり食事をとりながら、新聞をめくる。
大会の目玉選手が名前を連ねていた。
中には、絶鬼、タズル、ギーバの名前もあった。
それから、生徒会のメンバーのなかにアーネストの名前もあった。
あいつ、生徒会の役員だったのか。
他校の注目選手の中には、兄の名前がのっていた。
団体戦については、まだエントリーを締め切っていない事から、注目の高いチームの記載はなかったものの、予選のルール説明や、攻略方法などが、書かれている。
紙面のほとんどを占めており、注目度の高さがうかがえる。
予選については、障害物走であり、5人でタスキをつなぐ形式だ。
四地点で、交代していくが、そこまでのルートは、各チームが決めることができる。
相手の妨害、主催側のシミュレーション魔獣が妨害する。
まあ、ただ楽しめれば良いか。
新聞をとじて、店に支払いをすまし、店をでていく。
朝と昼を同時に済ませて、今日は一日時間ができた。
訓練塔へ向かい、小さめな訓練室へ入り、シミュレーションをいじくる。
ランク分けされたそれは、上位のランクは許可が無ければ選択できない。
このシミュレーションの中で、ここ百年間勝利した人がいないエネミーが隠れているとも聞く。実は、四象道人に少し弄らせてもらい、上位ランクのエネミーとの対戦許可も下りている。今日は、三百年前の青年期のモーガスと戦う。
凄まじい強化魔術と、【仙道】でも回避が不可能な打撃攻撃。
もう十回以上戦闘をしているが、一度も勝ったことはない。
魔力と体力が尽きるまで全力を出して戦える。
この感覚を知ってしまっては、他の敵では満足できない。
「うおおおぉぉぉおぉぉおぉぉ!」
全てを出し切り、その後には何も残らなくても構わない。
脳とグラディウスが悲鳴を上げる。
脳の稼働箇所を異常なまで広範囲に展開する。
視界は変わらなくても、その処理速度が速くなる。
警告ブザーと共に、シュミレーターが終了する。
体を大の字にして床に寝そべる。
また、歯が立たなかった。
敗北したが、清々しいものだ。
二時間ほどの訓練を終えて、体がボロボロになる。
暇を見つけては、体がボロ雑巾になるまで酷使している。
夕方まで睡眠をとって、ブリジットとの食事を済ませる。
食後は、各チームメイトへ新調した武器を配る。
配り終わったのは、十時過ぎになってしまった。
最後に、七十センチ片刃の脇差をもらう。
「これが、主様の新たな力です」
「しかし、グラディウスがあるが……」
「それは、再利用します」
グラディウスを渡す。
ブリジットは、おもむろに鞘から引き抜く。
「これが紋章ですか……」
少し、魔力を送ると雷が纏わりつく。
「通常に発動するより、魔力を多く消費しますが、理論的には、誰でも使える事になりますね。それに、魔石を作れるのであれば、魔力量が少なくても、発現可能になります」
「まあ、幅広い使い方は可能かな。お前の精霊鋼との相性もいいみたいだしな」
「嬉しいです」
「御影には悪いが、精霊鋼は、俺たちの子供の様に思っている」
顔を赤らめた、あまり慣れていない笑顔は、とても美しくそして可愛らしかった。
ブリジットは、お休みなさいと一言告げてから出ていく。
刀を抜く。
精霊鋼は、薄くすると、くぐもったように透ける。
峰の近くは金属性の光沢があり、刃先はやや透明度のある光が漏れて、青みがかっている。
今自分自身が持てる、最大の紋章を刻もう。
雷神の紋章を、四つ刻み込む。
四つ同時の発動は、消耗が激しそうだが、かなり強力な刀となろう。
虚脱感が抑えきれず、すぐに眠りへといざなわれる。
明日の収集は楽しみだ。
力は人を変えてしまうと良く言われるが、まさにその通りだと、朧げに考えるが、その考えも泡のように消えるのだった。




