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顔合わせは終わり、俺は道人へついていく事にした。

タイトスカートのお姉さんでないのは非常に残念だが、この老人はただならぬ空気をまとっている。

道人は講義室には行かず、いきなり訓練塔にむかう。


「どうじゃ?お主、儂に攻撃を加えてみよ」


「分かった。死なないでくれよ」


一応鍛えてはいるので、パンチ力もそこそこあるつもりだ。

道人に向かい距離を詰める。


右ストレートや、フック。アッパーなど。各打撃系の技を繰り出したが、ことごとく当たらない。キックも交えて、昨日作ったブレスレットからの魔術も織り交ぜる。

しかし、何をしてもあたる気配がない。


「フォホホホ。若いのう」


「くそ!」


既に十五分くらい、攻撃を加え続けているが、当たらない。

汗は滝のように流れ、腕を上げるのもやっとである。


ふと、四象道人が言葉を紡ぐ。それは、道人の言葉なのか、戒めなのか、分からない。


「この世は、苦しい事と美しい事が織りなしてできておる。おそらくは、苦しい事の方が多いじゃろう。しかし、その苦しさも、生まれてきたから感じられる素晴らしい事じゃ。お主が生まれるまでに、生まれる事の出来なかった多くの兄弟たちには、分からぬ事じゃよ。この世界を信じよ、己を信じよ。もし信じる事ができぬときは、水の流れ、風の声、大地の香り、火の揺らぎを感じよ。それらすべての感覚が、お主に意味をあたえるであろう」


「訳の分からぬ事を!」


更に、渾身の力を振り絞り、連打を加える。

全て、空気にあたるのみだ。

そして、その空気へと消えた言葉が甦る。


《産まれるという奇跡は、多くの生まれなかった君の兄弟たちが掴み取る事が出来なかったものだよ。だから一生懸命生き抜くんだ君の道を……》


俺の「道」それは何だ?

俺は、どうしたい。

ブリジットを守りたい?

執事に強さを示したい?

親に認められたい?

全部真実ではない。

ブリジットは俺に守られるほど弱くは無いし。

執事だって俺の事は屑としか思ってない。

親は完全に、いないものとしてしか考えていない。


あの夜の噴水の煌めきを思い出す。魔導灯の光に照らされて、ゆらゆらと炎のように輝く。美しくいつまでも魅入ってしまいそうになるそれは、美しいだけで、決して炎のように温かくはない。偽物でしかないのだ。手を伸ばしても、その手を濡らすだけで、炎は消えてしまう。


真実では無いそれは、ただ美しい俺の願望なのか?

じゅあ、俺の「道」はどこにあるんだ?

歩いてきた道しか見えない、噴水の向こうのそれは、水によって歪曲して、見えているようで、何も見えてはいない。


戻ってもいいんだろうか?

進まなくてはならないのだろうか?


迷いは、拳の速度を低下させる。

そして、ピタリと止まってしまうのだった。


「お主は、見込みがあるのう」


道人は笑う。


何が見込みありだよ。

見込みがあるやつは、ジャン○の主人公たちみたいに、そこから何かに気づいて、自分の壁を越えていく奴の事だろうが!

俺は、立ち止まってしまうしかない弱者だ。


途方に暮れていると、道人は日を改めるように言って解散することとなった。

さっきのは皮肉で、あきれられたのだろう。


去り際道人はポツリと言った。

「ここで、立ち止まる事も出来ぬ者には、期待はしておらぬ。大いに悩み。そして、【仙道】へ至るのじゃ」

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