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面接

無事、入学手続きが済んだらしい。

あれから約一ヶ月後、出立の時を迎える。

特に家族からの見送りはなく、父親の執事と料理長、厨房スタッフだけがそこにいた。

料理長から、旅立つ前に、新鮮な野菜を貰った。

ろくに冷凍技術もないので、かさばるだけであったが、料理長の気持ちも無下に出来ず。

そのままでもイケる野菜だけ持っていった。


栄養価が高いのか、エーテルがやや満たされた感じがする。

食事が、魔術や体の強化の源になると、本で読んだことがあったが、実感することができるとは思わなかった。


シバーシンまでは、数日かかるようだ。

尚、入学手続きから住まいの手続きまで、すべて父の執事が取り仕切ってくれた。

それから、彼の最後の言葉は、意外なものだった。


「貴方様の才は、ご家族のどなたにも勝っております。存分にご発揮していただければと存じます」


想像以上の高評価であった。

それとも、彼は俺があの魔導書へ触れた事を知っているのかもしれない。


シバーシンまでの道のりは、さすがに何も無く。魔物からの襲撃を受ける事はなかった。


シバーシンは、学園都市として有名であり、学生が自治を(にな)っている。

多くの学生が、その都市で働いており、授業料や家賃を払っている。

学生の幅は広く、金持ちの令嬢から、貧乏人の三男などもいる。

年齢も、実際いろいろで、十代前半の天才児や七十近い老人などがいる。


今回は、高等課への編入という形であり、特に実技や筆記試験等は無いが、軽い面接と講義選定試験がある。

学園長の前で、自分の才をアピールするだけでいい。


都市へ到着後、部屋へと向かう。

もともと、職員が利用していた最古の寮という事で、つくりがシンプルであった。

俺は二階の一番右端の部屋で、反対の部屋にはブリジットが、住む事となった。


部屋は、一人で暮らすには大きいが、キッチンが無い。

ただ、飲食街が近くにあり、また実習塔が近くにあるので、調理室利用は可能の様だ。


ブリジットには、基本自由に行動して構わないと伝えてある。

ただ、あちらの希望として、夕食だけは、食生活の乱れを無くすため、一緒に取る事とした。


噂の百万書架が近くにあり、どうしてなかなか、快適な生活ができそうである。

高等課は、やや離れた塔にあるが、実習時は、こちらも使うとの事であり、ゆっくりできる講義もありそうだ。


到着から、翌々日。一番背の高い塔の最上階へ来ていた。

第二十代シバーシンとの面接をしているところだ。

歴代女性がその地位になっている。

特に制限はしていないようだが、自然とそうなってしまうらしい。


二代目までは、親子の関係であったが、その後は優秀な成績を収めた卒業生がなるケースが、ほとんどであった。彼女も卒業生との事、代替わりは意図的に早くしている。

現在のシバーシンも四十歳と若い。

美しい女性であり、紅い髪が特徴的な人だった。

何かロリだし、見た目年齢俺より低いんですが。


「もうレオールちゃん聞いてますか?」


「はっ、はい!」


完全に聞いてなかった。


「では、それぞれが得意だと思うモノをあちらの部屋でアピールしてね。ちなみに(あたち)に隠し事は、意味ないからね!」


ロリ学長が、メッのポーズをとる。


編入生は、四名だった。

ブリジットと俺のほかには、何か目ん玉がくりくりしているマルコメ君みたいな男と、よれよれの服を着た女(学長に負けずロリっ子である)がすわっていた。


まずは、マルコメ君が部屋へ入っていく。

何だか、料理長が着ていた帽子のようなものを、おもむろにかぶり、こちらに向けて親指をたてて、歯を輝かせる。


ああゆう馬鹿が、何となく好きだ。

扉の前で彼は叫ぶ。

「一番、マルクスコメット。いっきまーす」


おおう、行ってこい地の果てでも。


暫くして、学長の笑い声が部屋から漏れる。

何やってんのあいつ。

「良いね、良いねそういうの良いね」

ボキャ不足のほめ言葉が漏れる。


「あーした!」


そして、マルコメ君が、清々しい汗をかいて出てくる。

扉を閉めたとたん、こちらに向けてまた親指を立てる。


他の二人が無反応なので、かわいそうになり、親指を立て返す。

彼と俺に、何か糸のようなものが繋がってしまったような気がした。

マルコメ君は満足して元の席にすわる。


次に、よれよれの服を着た少女が立ち上がり、テクテクと面倒くさそうに、扉の前にたつ。

容姿通りの幼女声で、ほのぼの言った。

「二番、ジュラ。入るね」

幼女対幼女。

幼稚園のお遊戯でも行われてるのだろうか?

何か、金属の結合音が漏れてるんだけど、ガチャンガチャンてカッコいい奴。

ほら、戦隊ものとかのカッコいい奴。

何だよ、こいつら友達になれそうじゃんか。


「おお~すげ~」

学園長の感嘆の声が上がる。


「今年の編入生は、なかなか良いね」

学園長が関心している。


「今度私にも作ってくださいね」


「気が向けばね」


何だよ、友達との会話かよ。


ジュラが出てくる。

入った時と同じままだ。

何があったんだよ。

あの中で……。


続いてブリジットの番になる。

ちらりと目があった。

隠す事は不可能であろうと思い、うなずく。

彼女も理解したのであろう、了承の意味で頷き返す。


「三番、ブリジットです。失礼いたします」


「なかなか、礼儀正しいね……」


その会話が聞こえてから、しばらくして。

「ううむ、種別固有能力の中でもかなり上級な能力か。たぶん純血種でも使えたのは少数かな。始祖に近いのかもしれないね。今使える能力を更に伸ばしていくといいね」


あの能力は、かなりのレアだったようだ。シバーシンも言葉を選んでいた。


そして、俺の番がやってくる。

扉から出てきた、ブリジットと視線をかわす。

入る前に、他の編入生を見ると、マルコメ君は、親指を立てている。

若干恥ずかしくなりながら親指を立て返す。

ジュラは眠そうであるが、ボーと見つめてくる。


「四番、レオール入る!」


そこには、シバーシンのみがすわっており、ほかには、机と椅子のみが置いてあった。

少し歩いたところで、違和感を感じた。試しに、言ってみた。


「貴方おひとりだと思っていましたが?」


違和感が強まる。


「なんだ、君は気づくんだ?ブリジットちゃんだけ、やや警戒していたようだけど」


「見世物小屋に入れられた気分だが。ただ、何人かまでは分からない」


「良いよ、その感覚を研ぎ澄ますのが、この学園での君の成長につながるよ」


ロリの癖に、食えない幼女だ。

おそらく、このアピールは、他の教授も見ており、自分の講義へのドラフト会議みたいなのが開かれるのであろう。


「あなたは能力を隠してもいいですが、私には丸見えですからね」


彼女の目は、青く輝いていた。

観念して、【マテリアライジング】を発現させた。

かなり使用していた事もあり、今では手のひら大の球体まで作れるようになっていた。

だいたい、通常の人間の魔力を五十とすると、二百五十くらいの濃度はある。


「やりますね。この能力を持っているってことは、“カーバンクル”種だね。それもレア能力。ブリジットちゃんといい、“種別固有能力”持ちで上級能力とは面白い」


「この能力の理解が乏しかったと反省せざる負えないな」


「まあいや、それからそちらは見せないの?」


「こちらは、使ったことが無いからな」


「では、これを見てね」


シバーシンは、炎の球体を発現させる。

そして放つ、高速で飛ぶそれは、俺の目の前で霧散する。


「この魔術は、炎を球体化して、直進させる。たぶん君は見ただけで、魔術回路の構造を理解でるんだね。普通は、詠唱とかのプロセスが必要だけれども」


「そういう、あなたも今無言で発現させたがね」


「まあ、それは置いといて、さてここに金属製のブレスレットがあります。ここに紋章を書き込んでみてね」


はぐらかされた。投げ渡されたそれは、どうやら、ブリジットが作成したのであろう。

なぜなら、俺の手腕にピタリとはまる。


静かに息をする。

エーテル体は充実している。アストラル体へのアクセスを開始。その中の紅い輝きを摘まむ。

【エンブレム・クリエイション】


コアを《炎焼》、範囲を《直進》、形状を《球体》、時間《二秒以内着弾まで》、速度《時速百キロ》そのなし

盾型の紋章に、サーキットが次々に浮かび上がる。

そして、ほどなく完成する。

酷い虚脱感に襲われたが、意識を保つ。


「今、あなたの作った魔石と合わせて使用してみ」


そういわれ。魔石を紋章と重ねる。

そして、マナを送るイメージを作る。

その後すぐに、紅い球体が浮かび上がり、シバーシンに襲い掛かる。


「しまった!」


叫んだところで間に合わない。

しかし、すぐに炎は霧散する。


「ふふっふ、それでいいんだよ。それで」


通常魔術を発現させたことが無いので、放った後の感覚が正しいのか不明であったが、何とか気を取り直し、改めて、別方向へ炎を放つ。

すぐに、消えるが、ちゃんと発現する。


「できたね。これが君の力だよ。その紋章により、様々な道具を魔導の器に変えるんだよ。さあ、あなたはどこまで、使いこなせるかな?」


一礼をして、退室する。


三人と目が合い、やや照れながら首をすくめる。

各々がどう受け取ったか分からないが、改めて教養の授業はこの四人でやっていくのだから仲良くしようと考えるのであった。

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