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プロローグ
俺は、ただ誰へも迷惑をかけず、静かに暮らしたかっただけなのに、でも不条理は誰にでも降り注ぐ。
かくいう俺も、現在その不条理に直面しているわけだが。
意識が徐々に不明瞭になっているなか、この理不尽も終わるだろう。
自分の腹部から大量の血が流れる事も、俺の部屋を物色する強盗が去る事も。
しかし、最近は女性の強盗もいたもんだ。
しかも、玄関を開けたとたんに刺された。
一人暮らしの大学生の部屋には、何にも無いのによく俺の部屋を選んだものだ。
痛みはもうない。ただ、体は熱さを通り越して寒いだけだ。
意識が遠のく……。
家族は、悲しむだろうな……。
恋人は……居なくてよかったか……いや良くない!
友達は……少ないからいいけど、どうせ死んだら「俺の友達殺されたやついるんだ」ってネタにされるんだろうな……。
バイト先、まあ俺が居なくても回るか……。
あのアニメの続きが気になるのに……。
もう少しまともな大学生活を楽しめればよかった。
意識高い系を馬鹿にして、かといって何にもやってない屑な俺には良い最期かもな。
そして、闇が訪れる。