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怪物狩り

【■ァ、■ォォ■ン!】


 イギョウがそういう声をあげて、体内から何本も生えている触手を大げさに揺らし、触手の瞳から今度は剣や盾などの模様が描かれた魔法陣が現れていた。

 そこから長剣、短剣、鎌、銃、血付き包丁とかあらゆる武器が瞳の魔法陣から飛び出しており、イギョウの触手を振ると共に瞳から出ていた武器が飛び出てイギョウは上空へと放り投げる。

 そしてすぐさま、別の紫色の魔法陣を作り出し、それを上空へと放った武器に向かって放つ。


【■ギィ! ■イズ■アー■ズ!】


 上空へと上がって途中で勢いを落としてそのまま落下の力を得た武器達は、毒というもう一つの武器を得てパーシーとアトレスに落ちて来る。


「怪物なりに知性を得て来たという事か? まぁ、これくらいならばアトレスが居なかったとしても、どうという事でもないけどな」

『そうね~。全く問題ないわね~』


 パーシーはそう言いながら刀を腰に構えるとそのまま上空の方に視線を向けて落ちて来る毒の付いた武器達を見ると、空から落ちて来る武器達を見て毒が付いて居ない部分を刀で払いのける。

 毒が付いているのは武器の全部ではないし、武器に付いて居る所も全部ではないため、サッと毒が付いて居ない個所を狙って刀で払いのけ、毒が付かないように気を付ければ済む事である。

 全部を払いのける必要もないし、メリヤ達とアトレスも魔法で結界という攻撃を防ぐものを作っているから問題なしという事で、後は自分の身さえ安全にしていれば十分だと考えてパーシーは刀で払いのけていた。


「さて、やるか……」


 パーシーは地面に刺さった毒が付いた長刀を持っている刀で払いのけて、そのままイギョウの身体の傷が付いた場所にぶつけ、パーシーは繰り返して毒が付いた武器達をイギョウの身体に刺していた。


【■ゥ、ゴ■ォ■ォー■!】


 イギョウは奇声をあげるが、パーシーは毒をさらにイギョウにぶつけていた。

 とりあえず自分の出した毒にやられるかは別としても、武器で傷付けた所から体内に直接毒を流し込めば自分の毒を流し込めば、効くかと思ったのだが予想通り少しは効くようである。


【グ■ォ■ォ■ォォ■ン!】


 イギョウは今度は触手全体を覆うような少し大きめの桃色の魔法陣を作り出しており、こちらに来ないようにして欲しいのか魔法陣を出していない触手を大きく振るいながらこちらに近寄らないようにしている。

 見ると、桃色の魔法陣が回っている所は傷付いて居る箇所であり、なおかつそれが桃色の魔法陣によって少しずつ塞がれつつある。


「……回復魔法まで使うのか。とりあえず、どんな魔法でも使えると考えておこうか。まぁ、この魔法に対しては……アトレス、切り刻め」

『はーい♡ 任せちゃってぇ♡』


 アトレスは鋭く尖った切り刻むためのカマイタチを風の魔法にて作り出すとイギョウの白い身体が切り刻まれて、さらにパーシーは触手の傷付いている部分をさらに刀でえぐるようにして刻み付けていた。


【グゥ■オオオオ■オ■オオオオ!】


 イギョウが苦痛の声を上げて、さらに回復魔法の魔法陣を多く作り出していたけれども、それによって魔法が細分化して回復の効果が先程よりも薄くなっていた。

 そしてそれを見ながら、パーシーとアトレスはイギョウの身体をさらに切り刻みまくる。

 イギョウの身体をさらに切り刻み、ある程度刻み付けていた触手を全て根元から斬り落とす。


【ォエオヂョドヨスワオ!】


「おっ、ようやく普通に聞こえるようになって来たな。まぁ、何を言っているのかはさっぱり分からないが。

 そろそろ止めを刺すか、アトレス」

『ええ。そろそろこの気持ちの悪いモンスターの相手はしたくないわ。お姉さんキャラは大抵、触手プレイのモンスターが苦手だし~』

「キャラとか言うなよ……」


 パーシーは刀を鞘にしまい、アトレスがその鞘と刀との隙間に少しずつではあるが水を垂らして行く。

 ポツン、チャポン、と少しずつではあるが、どんどんと水かさが増して行き、水の音を聞いていたアトレスが水を止める。


『このくらい……かしら? まぁ、とりあえずその技は既に完成しているし、後の威力はあなた次第よ、パーシィ?』

「あぁ、分かってる」


【ゥホゾォヲドヲソンヲ!】


 こちらが何か技を出しているのかに気付いた触手を落とされたイギョウは、そのまま突進してこちらに向かって来るのを見てパーシーは目を閉じて耳を澄ませる。


 ドドン! ドドン! と大きな音が段々と大きくなっていく。

 徐々に大きくなっていく音を耳で感じ、肌で理解すると共に、瞼を開けて眼を見開く。


【ゥエオヂオヅオエウオコヅレユコ!】


 パーシーが眼を見開くとイギョウの紫色の顔からは手の腕のようなひげが何十本も生えており、紫色の顔の真ん中からパカッと噛み合わせが出来ない牙をたくさん生やした大きな口を開けている。

 紫色の顔からよだれをたらたらと流して、今まさにパーシーを呑み込もうとするその瞬間、パーシーは刀の柄をしっかりと持ち、そのまま水によって一切の詰りがなく抜きやすくなっている刀身を引き抜く。


「十字流限定奥義、水烈斬(すいれつざん)!」


 そうしてパーシーが思い切り水が入った刀を鞘から引き抜くと、刀身を抜くと共に鞘の中に入っていた水が魔力を得て斬撃となってイギョウに襲い掛かる。

 水の斬撃波がイギョウの顔を斬り、その後にパーシーの本命の刀の斬撃がイギョウの水によって斬られた顔にそのまま刀身を貫いていた。


「はああああああああああああ!」


 そして刀身をイギョウの身体から引き抜くと顔に何十回と刀で縦や横と斬撃を加えて、もう一度鞘に刀を入れてパーシーはもう一度、水烈斬をイギョウの身体へと放っていた。


【ソスコウィスメンツヂオガァ!】


 最後の一撃がイギョウの身体に決まって流れていた血が止まったのを確認すると、イギョウの身体がそのままドサッと倒れる。

 そしてまるで霧のように、そのままイギョウの姿はゆっくりと消えていった。


「……やりました、ですね」


 と、そう言いながらメリヤが火炎魔法で血を燃やして、こちらに歩いていた。

 アリエッタもロットに肩を貸して貰ってこちらに来ていたが、アリエッタはちょっと肩がビクビクしているけれども血に襲い掛かる事もなかった。


「……とりあえず、これで終わったか」

『お疲れ様ね、パーシー』


 十字流限定奥儀、水列斬。

 鞘と刀との隙間を水で抜きやすくして、そのまま刀身を鞘から抜く時に柄から魔力を通しながら水を鋭く尖った斬撃にして相手に放つ。

 放たれた水の斬撃で傷付いた場所に刀でさらに斬撃を相手に与える、パーシーとアトレスの二人が協力して行う奥義。


「まっ、このイギョウを呼び出したソロモンには逃げられちゃったけど、良いんじゃないかな?

 と言う訳で、へぇい! パーシー、パース!」


 ロットはそう言いながら持っていたアリエッタを、パーシーに向かって投げていた。

 アリエッタは宙を舞いながらパーシーの元へと向かっており、アトレスが風の魔法でふんわりゆっくりと浮かせるようにして、パーシーはアリエッタを受け止めていた。


「……むぅー、です」

「さぁ、メリヤちゃん。こっちに行きましょうかぁ」

『ロットちゃーん♡ 向こうで一緒にアクセサリーの話とかしましょう♡ 同じ女同士で、ね♡』


 そう言ってロット、アトレス、メリヤの2人と1人の精霊はその場からゆっくりと遠ざかっていき、そこにはパーシーとアリエッタの2人が残される。


「……え、えっとパーヒー?」

「パーシーだが……ま、まぁ、良いだろう。無事だったか?」


 パーシーはポケットからサッとハンカチを取り出していると、そのまま彼女の顔に付いている血をハンカチで拭っていた。

 それは恋人に対するようなものとは違って、どちらかと言うと父と子のような関係のように見えた。


「~~♪」

「嬉しそうだな、アリエッタ。俺も嬉しいよ♪」


 アリエッタの嬉しげな顔を見ると、パーシーは微笑ましいような顔で見ていた。


「……アリエッタ」

「ん? なに?」


 そして嬉しそうな顔でパーシーはそっとアリエッタの顔を見て、そしてすんなりサラッと口から出た。


「俺は君の事を――――――愛してる」

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