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誤解されました。

「ふぅ」

「どうした。珍しい」


 ため息をついていたら会長が話しかけてきた。この会長にも大分慣れてきたものだ。出会った時は冷や汗すら流れて来たというのに。


「いえ、人生とはままならないものだと思いまして」

「なんだ?成績も優秀生徒会でも優秀でモテる男が言うなよ」

「それがままならないのですよ」


 私は苦笑した。女の私が女の子にモテてもしょうがないし。

 流石に昨日の告白は衝撃が走ったけれど。まさか私も含めて腐った目で見られていたとは……。会長、私とカップリングされているそうですよ?流石にそんな事言えまい。


「……失恋か?」

「……いえ」


 ははは、まぁあながち間違っていないですけどね。失恋はしているし。

晴翔が私を絶対に好きにならないと分かっているから、ある意味期待を持たなくて良いかもしれない。けれど、この恋情が果たしてそんなに純粋なものだろうか?作られた感情、醜い嫉妬。振られた後もしつこく残る。


「……そうなのか」


 何故かホッとした顔をする会長。私がそんな会長を首を傾げて見つめていると、目が合った会長は急に顔を顰めさせた。おおう……見過ぎたかな?

 ごめんなさい。


「少し休憩でもするか」

「そうですね。入れます」

「頼む」


 ポットに手を掛けたあたりで、ふと思い出す。そういえば、まだアレを試していないな。今は副会長もいないし、丁度良いかもしれない。

 チラッと会長を見てから、コーヒーにミルクと砂糖をぶち込む。


「……どうぞ」

「……?」


 どきどきする気持ちでそっと甘いコーヒーをお出ししてみる。案の定会長が怪訝な顔を浮かべている。

 若干背中に汗が流れる。外しただろうか?会長は険しい顔のままそっとコーヒーに口を付ける。

 すると、ちょっとホッとしたような柔らかい表情を浮かべた。

 直ぐに険しい表情に戻ったが、確かに見た。そして思った。会長、甘党なんですね……?


 確か、主人公とケーキの食べさせあいとかあった気がする。

 でも、その時は会長は甘いのは苦手で、主人公に合わせている、みたいな設定だったはず。

 あの時は主人公視点しか見ていなかったが、実は会長は甘いモノ好きとういう設定だったのだろうか?主人公に対して見栄でも張っていたのだろうか?

 それとも本当に変わってしまった?それくらいの誤差はあっても気にならないかもしれない。私も男装してしまっているし。


「……甘いな」

「ええ、飲んでください。勿体ないですからね」

「仕方がないな」


 肩をすくめて甘いコーヒーを飲んではいるが、どことなく嬉しそうだ。

 そういう体で飲むつもりなのかこのお方は……。なんという茶番。

 バレてるんだから素直に言えばいいのに、難しいお年頃である。威厳がある割に、面白い所もあるんですね。


「なんだ?」


 まじまじ観察していたら会長が不機嫌そうにこちらを見つめて来た。しまった、見つめすぎたか。この際だ。いっそ聞いてしまおう。

 気になって仕方がないし、今は誰もいないし。


「会長は甘党なんですよね?」


 会長はガチャッとカップを落とした。


「熱っ!?」

「うわわ、会長!?」


 私は慌てて鞄からハンカチを取り出して会長に近づく。足に少しかかってしまったみたいだった。そこにハンカチを当てる。


「火傷してませんか?ズボン脱ぎますか」

「ば……してないから大丈夫だっ!」


 会長の足を念入りに拭く。本当に大丈夫だろうか?保温ポットの温度なので大丈夫だとは思うが心配である。

 イケメンに傷でも作ったら怒られる。全世界の乙女ゲーム大好き乙女達に怒られる。

 怒られるならまだいい。殺されたらどうしよう。


「会長、やはり脱ぎましょう。火傷してたら大変です」

「ちょ、だ、大丈夫だからその手を放せ!」


 私は会長のズボンのベルトに手を掛けるが、会長に慌てて止められた。男の人の大きな手で握られて不覚にもドキリとしてしまう。上を見上げると、思いのほか近い所に会長の顔があった。


「……失礼しました」


 パタンと開いてた扉が閉じられた。副会長が入ろうとしてやめたのだ。

 そこでふと我に返る。椅子に座った会長。それに跪いてズボンに手を掛ける男子生徒。

 そして2人は見つめあい……うん。


「「副会長誤解です(だ)!!」」


 2人で慌てて副会長の誤解を解くハメになった。



……副会長視点、生徒会室……


 心臓が凍り付いたかと思いました。


 とてもイケナイ光景を目にして背筋が凍りましたよ。ええ。

 まさかガチなのかと思って本気で生徒会を辞退したくなりました。

 2人が必死に違うと言ってきたが、それすらもガチに見えて仕方がありません。

 ガチは引く。ドン引きです。木下さんはどこか儚げで、受けっぽい。

 そして月島くんは偉そうで、攻めっぽい。裏でどれだけ2人が噂になっている事か。

 まさか本当にカップルになっているんじゃないでしょうね?

 いや、本当に2人は怪しいのですよ。どことなく月島くんは木下さんを熱っぽく見ているし、木下さんも見つめられて目を逸らすし。

 ……いや、考えるのはよそう、精神衛生上良くない。今後の為に、誤解、という事にしておいた方が良いのかもしれません。

 でもなるべく2人きりにさせるのは良くない気がしますよ。今日のような事がまたあったら困りますから。

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