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男子会。

翼視点の話。

 完全にお通夜会場の雰囲気を醸し出す生徒会室。

 そこで俺もぐったりと机につっぷす。

 昨日の出来事を思い返して、うああああああ!と叫びたくなった。


 昨日、ライブの打ち合わせの為にいつもの音楽店にいってメンバーと雑談していたら、怜那ちゃんがその前をささっと横切っていくのが見えて、俺は咄嗟に外に出て呼び止めた。その瞬間ビクゥッとされて、青ざめてプルプルしながらこちらを振り向く。その表情に胸がしめつけられて、壊れそうだった。

 俺がこんな顔させているんだと思ったら、自分を殴り飛ばしたい気分でいっぱいになる。他人が同じような顔させていたら、ぶん殴っている。

 そして自分の諦めの悪さにうんざりする。

 完全に嫌われてる。どうして、なんで、いつから。どこが悪かったか分からない。分からないから、教えて欲しい。それなのに、最近話もしてくれない。

 こんなに好きなのに。

 俺の事を嫌っているのに、決して無視して行こうとはしない。その事で、また怜那ちゃんをもっと好きになるのに。


「怜那ちゃん、なんだか久し振りだ、ね?」

「う、は、はい。すみません」

「謝らないでよ!その、俺も、何かしたかな?その、ごめん、俺、原因が分からなくて」

「う……!」


 何故か怜那ちゃんの方が傷付いたような顔をして、俺の胸も苦しい。謝るから、せめて、話をするだけでも許してくれたら。こんなに人を好きになった事がなくて、身動きが出来なくなってくる。近づこうとすればするほど、見えない糸にからめとられて足が前にすすめなくなって、やがて窒息するような、そんな息苦しさがあった。もがけばもがくほどに怜那ちゃんから遠ざかっていくような気がして、気が遠くなりそうだ。


「俺、怜那ちゃんが、好きなんだ。今すぐどうにかなりたいって訳じゃない。ただ、仲直りできたらうれしいって、そう思ってて」

「……ごめん、なさい。私、これから先もずっと金城先輩と付き合う事はないので。絶対有り得ないので。好きといわれても困るんです」

「……へ」


 その事に一瞬頭が真っ白になる。

 有り得ない、絶対。困る。これからもずっと?

 呆然としている内に怜那ちゃんが早足で去ろうとするので、慌てて追いかけて引きとめる。


「ちょっと待って!?俺、なにした?そんなに嫌われるような何かした?お願いだよ、もうちょっと待って!好きとか押し付けないから!友達でもいいから!」

「いやですよ!きもちわる……あっ!」


 気持ち悪……い?

 怜那ちゃんの言葉に今度こそ完全に固まる。

 自分の失言に気づいた怜那ちゃんが慌てて弁解しているが、その言葉を返上することは出来ない。怜那ちゃん、俺の事気持ち悪いって、そう思ってるんだ。嫌われてるのに、追いすがって許しを請う男……うん、気持ち悪いかもね。


「ち、違うんです、あの」


 すうっと血の気が引いていって、足元もおぼつかないような、自分がここに存在していないような、そんな感覚で、怜那ちゃんの言葉も今では俺に届ない。そんなに嫌われてたんだ。俺って、ああ、そうなんだ。馬鹿じゃね、俺って。ははは……笑える。

 その日はどうやって帰ったか分からないし、ご飯も食べたか、お風呂にはいったかもおぼろげで。


 生徒会室で、会長がしきりにスマホを取り出してはしまってを繰り返して溜息をはいているし。晴翔の方は死んだ目で書類と向き合っていた。そして俺もぐったりとして何もやる気が起きない。透は体調が悪くて途中で下校したし、雰囲気を盛り上げる者が誰もいない有様だ。


「会長、ここにサインを」

「ああ」


 完全に死んだ目の晴翔が会長に書類を渡し、会長はそれを確認、サインする。さっきから会話はそれだけ。

 晴翔が自分の席に戻る所をじっと眺めながら、俺はぽつりとつぶやく。


「振られた……」


 晴翔と会長がビクリと震えた。

 だがしかし、俺はそんな事気にしている暇もなく、視界がぼやけて来る。机を涙で濡らしながら、愚痴が零れる。


「怜那ちゃんに、告白したんだ。でも有り得ないって。絶対ないって。気持ち悪いって言われた。ひどい振られ方したとおもわない?ねぇ、俺しにそうなんだけど」


 えぐえぐと泣いていると、晴翔がポンと俺の肩に手を置いた。その目には涙が浮かんでいる。やっと現実に戻ってきたような、そんな顔になっていた。先程の死体のような目ではない。


「安心しろ。俺も嫌いだと宣言をうけた」


 何が安心なのか分からない。全然全く理解できない。でもなんだろうこの気持ち。理解出来ないのに、なんだかすごく安心するんだけど。仲間がいるって素晴らしい。気持ちを共有できるって素晴らしい。

 でもどっちみち両方ふられてんじゃん……と、また落ち込む。

 その様子を見ていた会長が青い顔をしてそっとスマホを鞄に戻していた。


「……俺も振られる気がしてならない」


 そう、震え声で言う。

 俺はそこでようやく体を起こして、2人を見る。


「あれ?2人共透に告白したんだ?」

「ああ、俺は、した」

「いや……する前に嫌いだって言われた」

「へぇ……」


 2人共やるなぁ。同じ人好きになってるのに、そこまで険悪でもない所が2人の良い所だと思う、本当に。俺とか水無月くんと仲良くできる気がしないもん。すっげぇ嫌われてるし。恋敵だし、それが普通だと思うけどね。

 涙目の晴翔が俺の隣に座って、机に突っ伏す。


「いや、会長は良い感じなんじゃないですか?俺嫌われてますんで」

「いや、そんな有様見せられて安心できる訳がないだろう」

「俺なんてもう生きてる価値もないんで」

「そんな事は言うな。流石に言い過ぎだろう、というか、なんで嫌いだと言われたんだ」

「あーしにそう」

「あー俺もしにそう」


 俺まで落ち込んでいると、会長がすごく狼狽えている。


「その、なんだ。こんな締め切った部屋にいても気が晴れないだろう。どこか行くか?な?」

「やべぇ、会長いけめんじゃん……もう俺しにたい」

「ひ、火媛、大丈夫か、ほんと大丈夫か?しっかりしろ」

「ほんと会長っていけめんですよねー俺も見習わないとなーもうふられてるからしにたいけど」

「か、金城?生きるんだ。どうしてこんなことに」


 あー会長大変そう。でもさ、確かに今の状況って会長有利だよね。晴翔が嫌われてる状況で、内心ホッと……してないのが会長の良い所だよねぇ。すごく不安そうにしてるし、振られるとでも思ってるのかな。あんなカッコいいのに不安になるんだな。それに比べて俺とか何自信満々に言い寄ってるんだよくそう。はずかしにたい。

 そういや、晴翔って言ってないって言わなかったっけ。それってなんかこう、もやもやするよね。相変わらずヘタレだと思いつつ、口を開く。


「晴翔さぁ」

「んあ?」

「嫌われてるの分かってるならもう玉砕覚悟で告白したら?」

「もう振られてるのにか。2度しねと」

「うん」

「ひどい」

「いや、どうせ透に伝わってないんじゃないかなって思って」

「あれだけアピールしてるのにか」


 確かに。でも透だからなぁ。

 それには会長が頷く。


「俺もな、告白はしたが1度目は気付かれなかったぞ」

「まじで?」

「まじで?」

「まじだ。結構本気で真っ直ぐ伝えたが伝わらなかった。言葉にしても伝わらないんだ。言葉にしなかったらもっと伝わらないと思うが?」


 透、あまりにも鈍感すぎるでしょ、それ……他の誰が見ても会長の矢印は透にしか向いてないのに。


「どうせなら伝えた方がいい」

「会長、敵に塩送っていいんですか?」

「いや、2度振られて玉砕して完膚なきまでに落ち込めと思っている」

「あまりにもひどかった」

「ふ、冗談だ。だが、後悔するような事はやらない方が良いと思ってな」

「後悔なら、ずっとしてますよ」

「そうか」


 えーなにこの青春物語。俺ちょっと胸が熱くなっちゃった。

 ……うん、友達っていいなぁ。落ち込んでても互いに励まし合ってさ。それが自分と同じ人好きになってても変わらなくて。

 すっと目を閉じると、俺の為にバイトしてる要と淳也の事を思い出す。

 椅子から立ち上がり、思いっきり自分の両頬を叩く。

 バチーンと派手な音を立てたために、2人共驚いたように俺を見ている。が、しかし俺の気持ちはどこか晴れやかだった。俺がこうして落ち込んでいる間にも、彼らは俺の為にバイトしてくれている。そんな彼らの期待に応える為に、俺もだらだらなんてしていられない。俺の未来に怜那ちゃんがいなくなってしまう事は今でも胸が痛いし苦しいけど、でも。俺には仲間がいるから。俺達の夢だから、こんなところで立ち止まっていられないから!

 ぐっと握りこぶしを作って叫んだ。


「俺、プロデビューするよ!!」


「「…………は?」」

プロデビューします。

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