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勉強しました。

 ヒロイン組と話をしてて誕生日プレゼントを買うのをすっかり忘れていた。いやしかし、私のいじめフラグがますますよく分からなくなった。正直あの子達をいじめようとは思わないし……いじめられているのをみたら助けたい。間宮さんに至っては興味ないのにいじめられるとか理不尽以外なにものでもないですからね。


「木下先輩、おはようございます」

「あ、おはようございます」


 噂をすればなんとやら。間宮さんに挨拶をされる。朝から爽やかで綺麗な声が聞けて得した気分なります。


「先輩、髪はおろされないんですか?まぁ、勿論こちらも美しいのですが……おろしてる方が私は好きです」

「あはは……ありがとうございます」


 思ったけれど……この子が男だったら物凄いタラシになるのではないでしょうか?めちゃめちゃ褒められて嫌な気分にはなりませんしね。前世ではさぞやモテた事でしょう。

 ハッと気づくと、驚きの表情のまま固まっている翼を発見した。あ、やばい、見つかっちゃった。


「うっ……金城先輩だ……」


 余程苦手なのか、翼を見つけた瞬間私の後ろに隠れる。好きだと思われるのが嫌なんですもんねぇ……そりゃあんなに好き好きオーラ満載で来られたら嫌でしょうね。


「な……なに?なんでそんなに親し気なの?」

「まぁ、色々ございまして」

「色々ってなに!色々ってなに!ずるいよ!すっげぇ楽しそうに会話してたじゃん!抜け駆けなの、なんなの!」


 翼の大きな声に間宮さんがビクリとしている。わぁ……可愛らしい。本当に勿体ないですが、こればっかりは仕方ないんですね。別に男が嫌いと言う訳でもないんですよね、友達は欲しい……と言ってましたから。


「れ、怜那ちゃん?おはよ?」

「お、おはようございます……」


 私の背に隠れながらもちゃんと挨拶を返している。こんなに怯えられているのに諦めていない翼はイケメンじゃなかったら許されないレベル。


「え、すげぇ仲良いじゃん。なんなの。どういうことなの?この泥棒猫!」

「……」

「ごめん、今のは言ってみたかっただけ」


 てへへ……と笑っているが、あんまりシャレにならない。実際、間宮さんは女性の方が好きみたいですし……。これは言わない方が良いですけれども。なんだか非常に申し訳ない気持ちに。


「え、なにその微妙な顔」

「いいえ、何もありませんよ……」


「え!すっげぇ気になる!なにがあったの?ねぇ!れ、怜那ちゃん、何があったの?」


 私が答えないので、怜那ちゃんの方に質問するが、帰ってくるのは私と同じ反応である。言える訳ないですもんね。

 2人して困っていると、私の前に誰かが割って入る。

 私と間宮さんを守る様に来たのは水無月くんである。いや、正確には間宮さんを守っているのだろう。私とか興味なさそうですもんね。


「何あんた。まだしつこくつけまわしてんの?」

「み、水無月くん……」


 自分より身長の低い後輩におされている。

 おお……イケメン同士が取り合いを……これは少女漫画にありがちな展開!まさかこのような朝っぱらから見られるとはな。まぁ、私が取り合われている訳じゃなくて、間宮さんなんですけれど。


「モテますねぇ……」

「しゃ、シャレになんないですよぅ……でも水無月くんは普通に守ってくれてるだけですよ?良い友達です」


「ほ、ほう……」


 いや、あれはどう考えても貴方の事好きですけれども……だって彼、好きな子以外は非常に無関心ですから。これ、気付いてないの?あ、そうか……乙女ゲームを実際にプレイした事なかったなら知らなくても仕方ないですよね。これは伝えた方がいいのか、悪いのか。


「ええと、間宮さん」


「こら、お前ら、そんな所で固まってないでさっさと教室いけ。遅刻するぞ」


 そう言って割って入って来たのは高木教師。なんという攻略対象者オンパレード。間宮さん凄い。モッテモテ。

 先生に注意されて、翼たちは渋々それぞれの教室へと向かう。高木教師はそれぞれが移動するのを見届けてから、優しい瞳を間宮さんに向けた。


「ほら、間宮も」

「あ、は、はい……」


 ビクリとした間宮さんが私の背中をグイグイ押す。なるべく高木教師の視界に入らないように私を壁にしている。仕方ないので間宮さんを守りつつ、高木教師に笑顔で会釈しておく。あれっ、なんか睨まれた。なんででしょう……。

 それにしても間宮さん人気すごかったですね。次から次へと攻略対象者が。あ、間宮さんに水無月くんの事言ってなかったですね。いやでも水無月くんに悪いですか……でもなぁ、間宮さんの味方でありたいからなぁ。水無月くんの幸せも願っているのですが、間宮さんがどうにもならない事情を抱えていますからね。



 生徒会室の前で、扉を開けるのを逡巡する。何故か分かりませんが、間宮さんや藤間さんに言われた事が頭から離れないのです。いや、ナイと分かっているのですけれどね。なんかこう、妙にこびり付いてて。


「透、入らないのか?」

「うひゃあっ!?」


 会長の声に飛び上る。バクバクする胸を押さえながら、振り返ると、私と同じように驚いた様子の会長が。な、何をしているのでしょう私は。別に会長はいつも通りですよ。

 少し落ち着きを取り戻し、咳払いをする。


「んんっ、失礼しました。どうぞ」

「あ、ああ……」


「……?どうしました?」


 先に入って貰おうと扉を開けた状態で待っているんですけれども。途中で足を止めて、私の方を見る。そして、少し照れたような顔をした後。


「その。昨日みたいに髪はおろさないのか?」


 と、言った。

 ……え?なに?その照れ顔は。まぁ、いつも通りっちゃいつも通りなのですけれど。ああもう!藤間さんと間宮さんが変な事いってたから深読みしちゃうじゃないですかっ。これはいつも通りの会長ですよ。ちょっとドジなそれでいて優秀な我が校の会長様です。

 会長の照れ顔から僅かに目を逸らしつつ、苦笑いを浮かべる。


「あ、はは……ええと、似合わない、でしょう?」

「そんな事はないっ!!」


 物凄い勢いで否定してきた。いやだって、逃げ出したじゃないですか。


「その、すごく、似合ってた……」


 ……。

 ……う、うん。違います。こういうのは、ちょくちょく言われてたじゃないですか。だからほら、いつも通りで。


「……」

「……」


 妙な沈黙が落ちて、ただでさえ赤い会長の顔がさらに赤くなる。


「な、何か言ってくれ……」

「あ、ああ……その、あ、ありがとう、ございま、す……?」


 な、何、この空気は……?

 あ、私が照れているからこうなるのですね。い、いつも通りで。ああもう!会長も困った顔をしているじゃないですか!


「と、透?どうした?体調でも……悪いのか?」

「い、いえ……なんでもありませんよ」


「そんな所でなにつったってんだ?」


 晴翔に話しかけられて、2人してぴゃっと飛び上がる。


「な、なんでもない」

「はい、なんでもないですよ、晴翔」

「……そうか?すごく嫌な予感がするんだが」


 晴翔の登場にほっとしつつ、さっさと生徒会室に入る。ああ……なんか凄く精神力をつかった気分です。会長に体調の心配までされる始末。なにをやっているのでしょうね、私は。

 とりあえず頭を切り替えて、書類を片づける。

 しばらくすると、晴翔が席を立つ。おそらくお手洗いだろう。なら、ちょっと休憩にしますか。晴翔がいないと砂糖をこっそり入れやすいんですよね。

 カチャカチャとコーヒーを入れていると、ビシビシ後ろから視線を感じる。そっと後ろを向くと、書類から顔を上げた会長がじっとこちらを見ていた。

 ……えっ。な、なんでしょう。あ、なんかぼんやりしているから、多分動いてるものを見ているのですかね?ひらひら手を振ると、片手で顔を覆って顔を逸らされた。あ、はっきりみてたんですね!?うっわなんか恥ずかしいのですけれど。

 頬が熱くなってきたので、さっさとコーヒーを入れる作業に戻る。

 って、なんでさっき見られていたんでしょう?可笑しな事はしてないはずですけれど……。いや、不自然なのでしょうか?ダメだ、自然が良く分からなくなってきました。ぎこちない動きで作業していたら、おぼんを引っかけてコーヒーが零れて手にかかってしまった。


「つっ……」

「どうした?」


「ああ、いえ……少しお湯が手に、でも大した事はないので」

「透の大した事ないは信用ならない。見せて見ろ」


 信用ゼロですか……前科がアダになったか。本当に大した事はないんですけれど。会長が近寄ってくるので、じりじりと後ろに下がる。


「……なんでさがる?」

「い、いえ、なんとなくです」


「やはり今日は様子がおかしいぞ。大丈夫なのか?」

「はい。体調の方は問題がなく」


「……本当か?」

「ええ……」


「そんなに顔を逸らしながら言っても信用出来ないのだが」

「……」


 わかった、分かりましたからそれ以上近づかないでいただけませんかっ。もうすぐ後がなくなる……と思ったところで晴翔が戻ってきた。た、助かった。


「おいあんた。何やってんだ変態か?」

「なっ……!?ち、違っ……透が火傷したようだったから見てやろうと思っただけだ」


「なんだ変態か……」

「違うっつってんだろう!?」


「透、火傷は平気か?」


 会長の怒りを受け流しつつ、私の様子を聞いてきた。なんというか、晴翔との会話でほっとできる日が再び来ようとは思っていなかったです。


「ああ、えっと。ちょっと冷水で冷ましてきますね。けれど、ご心配なさらなくて大丈夫ですよ」


 ついでに頭も冷やしてきましょうかね。2人に心配されつつ、生徒会室を出る。まぁ、手は少しひりひりするだけで本当に大した事ないんですけれどね。

 それにしても、動揺しすぎだ。いくらあんな事言われたからと言って、意識するのは会長に失礼だろう。馬鹿なんですか私は。有り得ない事考えて挙動不審になるなんて。

 それにしても、会長の言動は確かにややこしいですね。確かに気があるように見えて困る。どうして今まで何も思わなかったのか。照れながら似合う、とかそういうのは色々誤解を生みそうなので会長にも気を付けて欲しいです。

 そうだ、そうなんですよ。会長が紛らわしいのがダメなんですよ。攻略対象者って怖い。


「あ、先輩先輩!みつけた」

「おや、どうかしましたか?」


 藤間さんが教科書を抱えた状態で話しかけて来る。あまり彼女と話をするのは良くはないのですが……日向先輩が怖いので。さって周りを見渡して、日向先輩がいない事を確認してホッと安心する。


「木下先輩ってチートしてんでしょ?勉強教えて欲しいの!」

「ち、チートって……」


 人聞きが悪いですよ。人より勉強するのが速くて知識も多少あっただけで、あとは独学で勉強してますよ。決してチートとかではない。たゆまぬ努力の賜物だ。それにしても、転生というモノがチートという点では藤間さんも条件は変わらないですよ。


「中学まではなんとかなったの。でも、高校はさっぱりで」

「つまり勉強してなかったと……」


「予想外に難しいね!!」


 あっはっは!と楽しそうに笑っている。いや、笑いごとなのでしょうか。まぁいいですけれども。

 ですが、藤間さんには日向先輩という暗黒面が待ち受けているから学校で接触したくない。なんとかこの申し出を回避できないものか。


「ええと、土御門くんに教えて貰ってはいかがです?」

「えー?なんで?」


「なんでって……いや、幼馴染と勉強の方が普通じゃありません?」

「やだよフラグたったらどうするの」


 フラグは……残念ながらすでに立っていらっしゃるようですよ?さすがに土御門くんの為に言いませんが……。


「土御門くんは嫌なんですか?」

「嫌じゃないけど……でも成績は先輩の方がいいじゃん。先生の傾向と対策も知ってるってもっぱらの噂だよ!」


 あ……はい。勉強会してますものね。しかも去年作ったプリントなら流用できますし、教えると復習にもなる。日向先輩の陰がなければ簡単に引き受けているんですが……。


「あ、れーなも教えて欲しいってさー。女子会女子会!」

「え、ええと、わ、かりました……」


 ぐいぐいと押されてつい、頷いてしまう。ああっ……ま、まぁなんとかなるでしょう。日向先輩はコワイですが、あのように体も弱いですし、変な事は出来ない……はずです。そう願っています。それに、藤間さんを日向先輩から離す事も必要ですからね。土御門くんの味方なのですが、藤間さんの返答はなんとも微妙なものだ。間宮さんよりは希望は高いでしょうけれど、こちらは土御門くん次第、ですかね。



 勉強会である土曜日がやってきた。日曜に誕生日の買い物にいく事にしようそうしよう。このままずるずると買えないのだろうか。そんな事があってたまるか。

 それにしても、いじめの要請は何時頃なのでしょうね……。5月も終わりそうなんですけれども。まだ心配するには早いでしょうか。そろそろちょくちょくいじめられていても可笑しくないとおもっていたんですが……間宮さんにそんな様子はうかがえませんし。

 待ち合わせ場所である図書館へと向かう。

 そこにはすでに間宮さんと水無月くんがいた。水無月くんとは約束していないのですが……まぁ、いつも図書館にいるので、いるとは思っていましたよ。

 とても仲好さげにしていて、どうみてもカップルにしか見えない。あそこに入れと言うのですか。いや、いきます、いきますよ……。

 近づいて行くと、間宮さんが気づいたらしく、可愛らしい笑顔で出迎えてくれるが、水無月くんは明らかにムッとしている。ああ、やっぱり、やっぱり水無月くんに好かれていますよ!間宮さん!

 水無月くんはあまり口にするタイプでもないし、行動力のあるタイプでもないから気付かないのか……。ただ好きな子が図書室にくるのをじっと待つタイプですからね……。しかも、見た目も綺麗で中性的と言うか、可愛いというか。男くさくない感じですしね。


「おはようございます、今日はよろしくお願いします」

「おはようございます、こちらこそよろしくおねがいしますね」

「……よろしく」


 周りを軽く見回してみるが、藤間さんはまだ来ていないようだ。私の様子を見て、察したのだろう。間宮さんが苦笑を浮かべる。


「曜子なら少し遅れるみたいです」

「ああ……そうでしたか。なら、ええと……先にやっていますか?」


「はい!あの、お伺いしたい事があったんです」

「はい、なんでしょう」


「入試問題ってやってます?」

「ええ、とりあえずは……ですが」


「じゃあ、ここの問題を……」

「ああ、そこはですね……」


 と、大学入試問題について話し合う。


「貴方たちは何者なんですか……」


 すぐ近くで土御門くんの声がしたので顔を上げると、藤間さんと共に土御門くんが到着していた。あら……土御門くんもついてきたのですね。


「真打は遅れて登場!ってね!」

「いいから座りなよ曜子ちゃん。遅刻なんだからえらそうにする事じゃないよ……と、こんにちは木下先輩、それに間宮さんと、海斗も。今日はよろしくお願いします」


 軽く挨拶をかわして、勉強会を再開する。あれ、そういえば土御門くんと水無月くんは仲が良さそうなので友達なのですね。気が合いそうですもんね、雰囲気が。

 藤間さんは本当に高校の勉強を怠っていたみたいで、頭を抱えている。中学まではかなり優秀な成績を残しているぶん、その反動がすごい。成績の落ち込みぶりに高木教師が心配しているようだ。

 しかし、翼と違って、何もかもが分からない訳ではないので飲み込みは早い。やれば出来る子ってやつでしょうか。翼のようにすぐに集中力がなくなる訳でもないようですしね。

 間宮さんは私と似たようなタイプみたいで、前もって勉強して叩き込んでいたようです。こちらは教えるまでもないようですね。なんだか親近感の湧く方で。ぜひとも今後の人生を応援させて頂きたい。

 それにしても、と。間宮さんと水無月くん。藤間さんと土御門くんは仲が良いですね。私がいなかったらダブルデートのようではありませんか。

 私にも誰かいたら男女の比率が丁度良いのですが……って、いえいえ、なんでそこで会長を思い浮かべるのですか。ああと、晴翔……も何か違いますし。翼はどう考えても間宮さんが嫌がりますよね。この中で誰が勉強しなければならないかというと翼ではあるのですが……ここは諦めてもらうしかないだろう。

 静かに勉強をした後、時計を見て本を閉じる。


「そろそろお昼休憩に致しましょうか」

「さんせー」

「そうですね」


 誰も文句言わずにやるって結構な事ですよね。みなさん真面目で優秀な方で。時間が過ぎるのがあっという間でした。それぞれが体を伸ばしたり、教科書を閉じたりしている。

 図書館の近くに喫茶店があるので、そこに行く予定だ。どうも、水無月くんが良く行く店のようで、ランチが安くておいしいそうだ。間宮さんは水無月くんに教えて貰って事があるみたいです。

 そろぞろとみんなで図書館を出て、水無月くんについていく。

 少し奥の方の、隠れた場所にその店はあった。こじんまりとしたその喫茶店は少し古ぼけていて、雰囲気がある。秘密の名店っぽいですねぇ……なんだかこういう店は好きです。

 店内はこじんまりとしていて、コーヒーの良い匂いと砂糖の甘い匂いで満たされていて。心が安らぐ。


「おや。今日は随分と楽しそうで」

「……ん」


 店長らしき人が、コーヒーカップをそっと机に置きながら穏やかに笑った。

 水無月くんの少しそっけない返事も慣れているのか、気にせずに目線を私達の方に向けてきた。


「いらっしゃい」

「あ、はい、お邪魔します……」

「はは、そんなにかしこまらなくてもいいさ。ここは趣味でやってる店だからね。まぁ、ゆっくりしていってくれ」


 そう言って、何かの作業に戻る。


「席はどうします?5名いますが……」

「まぁ、4、1はないでしょうね。1人が寂し過ぎますし。女子組と男子組で別れて座っては?」

「さんせー!へい!ますたー!あたしココアと、なんかこう甘いのちょうだい!すごく頭使ったから疲れちゃった」

「はい」


 お昼ごはん食べにきたんですけれど……ま、まぁ藤間さんはそれでいいでしょう。しかし、甘いものに甘いものを重ねてきますか……甘党なのですね。まるで会長のようです。

 藤間さん以外はランチを注文し、舌鼓をうった。ホットサンドだったのだが、外はサクッとしていて、中はシャキシャキしたレタスとキュウリ、それとジューシーで軟かなお肉。全体的にシンプルなのだが、これがとても美味しくて。

 藤間さんが間宮さんから1口かじらせてもらっていた。そして気に入ったのか、後からランチも注文。

 いや、あの、なんか順序が逆のような気がするのですが……まぁ、藤間さんだし仕方ないか。

 それにしても、男子組の方は全く喋ってないようだ。水無月くんに至っては文庫本を取り出して読んでいる。土御門くんの方がぼんやり……ああ、植物の方を見ているんですね。なんとも満足げな表情なので、よく手入れされた観葉植物なのだろう。

 ……それにしても、水無月くんが不機嫌そうに見えるのは気のせいではないはず。推測するに、間宮さんだけに教えたかった隠れ家的な店だったんじゃ……。いいお店ですもんね。藤間さんがいなかったら、静かですごしやすそうですし。


 素敵な喫茶店から出て、再び図書館に行って、勉強をしてから解散となった。


「今日は良い勉強になりました!木下先輩、本当にありがとうございました!」


 ほっくほくな笑顔を見せてこちらも和む。間宮さんのこの笑顔の中身が男だなんて今でも信じられない。可愛い、可愛いすぎる。もはや詐欺レベル。


「今日は助かったわ。また暇な時にでもおしえてキノちゃん」

「キノ……それは私の事でしょうか」

「そう!木下のキノ!」


「曜子ちゃん」

「冗談、冗談だから!!じゃ、またね!」


 土御門くんから逃げ出す様に帰っていくが、帰り道が同じみたいで土御門くんが追っている。全力で追いかけて行っているので、藤間さんは捕まって怒られるだろう。それが今から目に浮かぶようである。土御門くんの顔がマジギレだったからな。

 それを見届けた後、間宮さんが手招きしてきた。その仕草がまた可愛らしいのって。ああいう可愛い動きの研究もされたんでしょうか。

 水無月くんに聞こえないように、と耳打ちをしてくる。


「あの、会長はどうでしたか?」

「え、な、なにがでしょう」


「もうっ!きまってるじゃないですかっ。会長の反応ですよ。どうです?どう思いました?」


 いや、どう、と言われましても……いつも通りだったとしか。


「会長はあのように紛らわしい方ですから、そう勘違いなさるのも無理はないかもしれませんが……本当に好きとか、そういうのとは違うと思いますよ」

「ありゃりゃ……じゃあ、会長の方はいいとして。木下先輩は会長の事どう思ってるんです?」


「はぁ……尊敬する先輩ですよ」

「むぅ……なんという手ごわさ」


 むむむ、と腕を組んで悩んでいる姿が大変愛らしく、水無月くんが見惚れている。その様子にまるで気付いていない間宮さん。ううむ……言ってあげた方がいいのか、悪いのか。望みがないから、言った方がいいのかもしれませんね。傷は浅い方が……いや、もう色々手遅れな気がしますが。

 今度会ったら教えてさしあげる事にしましょう。

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