バレました。
もう諦めてしまえ。
そんな前世の悪癖が出て来たのはいいのですが……なんだか最近視線を感じるようになった。廊下とかで移動しているときにちらほらと……。時には主人公、時には間宮さんが。
え、なんで?なんで私2人につけられているの?いやまぁ、最近まで私の方がつけていたんですけれども。それの意趣返しなのだろうか。そんなばかな。
目が合うと、蜘蛛の子をまき散らす様に逃げ去られるのだが、なんなのだろうか。
「最近また別の女の子にモテてるね、透」
「翼、冗談でも笑えないですよ」
「うん、俺も笑えない」
ああ、間宮さんが好きですからね。冗談だとしても笑えないか。好きな子が女である私に惚れるなんて。
「あー……怜那ちゃんって透みたいなのがタイプなの?……いやまてポジティブに考えるんだー……あれは俺に会いに来ているのだと……明らかに透の方見てたけどね……はは」
「い、いえ。きっと何かしら事情がおありなのでしょう。まだそう考えるのは早計です。それに女同士なのですから、有り得ないでしょう」
「うん、この教室で最もモテてる人に言われてもね」
三宅さん、玉森さん、桜さんを順に見てから溜息を吐かれた。いやこれはあれですよ。モテてるわけじゃないですよ。1年の時のオリエンテーションで仲良くなった者同士の親睦を深める意味で。女友達が仲良くするのは決してモテているとは言わないでしょう。
「それにしても無粋な方ですね。透さんをつけるなんて」
「全くよ。もぐもぐ!」
「ないすアングル」
桜さんはつけてきている間宮さんと藤間さんにプンプンと怒っており、その事に気を取られている間に三宅さんが桜さんのお弁当のおかずを盗む。そして玉森さんは写真を撮っている。
三宅さんと玉森さんは相変わらず自由ですね。
「あっ!ちょっと!なんでお弁当勝手に食べているのよっ」
「いいじゃない。おいしいし」
「減るもんじゃあるまいし。じゃないんだそこ?」
「だっておいしいものは減るじゃん」
「それもそうか」
「「あっはっはっは」」
「2人共勝手すぎるわ……」
眉間に皺を寄せて唸っている。手が付けられない問題児とはこういう事なのだろうか。まぁ、やっているいたずらは可愛いモノですけれど。
桜さんも本気で怒ってはいないので、皆今でも仲が良いのだろう。実に微笑ましい光景じゃないですか。
「せっかく透さんにつくったのに……」
「まぁまぁ。減るもんじゃあるまいし」
「減ってる!減ってるわ!」
「「あっはっはっは」」
「笑えないですよ……」
そんなトリオ漫才を眺めていた翼がほっこりとしている。私の顔も似たような感じになってるに違いない。久し振りに皆でお話する事が出来て嬉しいですし、癒されますね。この頃ずっと気を張っていましたから。
フラグは立ってしまっているのだからもうどうしようもない。転校までの間、まったり学校生活を満喫させて貰おうと思ったのだ。まぁ、今度は逆につけられているのですけれどね。これはどうしたものか。
それにしても桜さんの料理がおいし過ぎて。なんだかどうでもよくなってきますね。いろいろ。
「桜さんのお弁当とてもおいしいですよ」
「あ……有難うございます」
「猫かぶってる」
「かぶってるね。5匹くらい?」
「桁違くね?」
「あ、50?」
「いや100」
「わかるー!!」
「2人ともいい加減にしてくんない!?」
まぁまぁ、3人共仲がいいですね……ちょっと妬いちゃいますね。桜さんの焼いただしまき卵がおいしいです。まぁいつもは母のお弁当なのだが、今日は桜さんに作ってきて貰うと言っておいたのだ。お返しも何も出来ないのが申し訳……あれ。お返しにお返しで思い出しましたけれど。そういえば桜さんの誕生日って4月じゃ……わ、忘れていました。色々ありすぎて。う、うわぁ……って桜さんは忘れていても気にしないって言うと思うけれど、友達の誕生日を忘れるのはどうかと思うんです。そう言えば、会長の誕生日もそろそろだったような……うん、買いに行きましょうか。私のイメージアップ運動でもやっていきましょうか。今後の展開次第で被害を最小限に抑えるために。まぁ無駄だと思いますけれども。
という訳でショッピングモールに来た。安定のショッピングモール。だってここが品ぞろえが良いですからね。色々見て回りながら考えますか。桜さんは手袋、会長には問題集をあげたんですよね。
それで、桜さんからは高そうなペン。会長からは問題集とスノードームをいただいた。
だから2人にはなんか良さそうな物をあげたい。と、言っても、まるで計画などないのですけれどね。この無計画さをなおしたいのですけれどなかなかね……。まぁ前世からの行いですから仕方ありません。
まずは桜さんのものを探そうと雑貨屋さんに行く。ピンと来るものがなかったので、服屋なども見て回る。お風呂用品とかも良いかもしれませんね。
そう考え、入浴剤とかを売っている所に足を向ける。
「あ」
「あ」
そこで出会ったのは間宮さんである。なんという遭遇率。はっ、まさかつけてきていたのでしょうか。いやいや。それは流石に考えすぎか。間宮さんも驚いているみたいですし。
「こ、こんにちは」
「こんにちは。奇遇ですね」
「れーなーまってよぅ」
さらに藤間さん追加。
え、え、え……あ、お友達になっているのですね。同じクラスですし、同じようにつけてきていたので、そんな感じはしていたのですが。
「あ」
出て来た藤間さんも固まる。
その手には買い物袋があったので、この店で買い物を済ませたのだろう。
3人で集まって睨み合う事しばらく……最初に口を開いたのは藤間さんである。
「イケメンおひさ」
そう言って手を出してきたので、丁重に叩き落としておいた。
「誰がイケメンですか」
「いや……どうみても」
「みなまで言わないでください」
無性に悲しくなりますから。
しかしこのお2人、並ぶと圧巻ですね。男性の目をすべて攫ってしまっています。その美しさと可愛らしさの僅かでも私に頂けませんかねぇ……。
「えーと、木下先輩」
「あ、はい」
藤間さんに呼ばれて返事をする。あ、名前はもう知っているのですね。そりゃそうか。あれだけつけ回していましたからね。
「私達、もっと話し合わなきゃいけない、そう思いません?」
「え、ええと……そうですね。そうかもしれません」
「女子会だ!いや、この場合2人の美少女に手を出しているイケメンの図になっちゃうのかし痛い!抓らないでレーナ。そこ地味に物凄く痛いからやめてよ」
黙って藤間さんの二の腕を抓っている間宮さん。実に仲が良さそうで。
というわけで、何故か3人で話し合いをする事になりました。フードコートのテーブルにつき、彼女達と向き合うのはなかなか緊張する。緊張感がないのは藤間さんくらいか。たこ焼きを買って頬張っている。その事で若干和むから助かっています。
間宮さんは呑気な藤間さんに目を向けて、何やら諦めたような溜息を吐いてからこちらに向き直る。
「ええと、その。まずなんと言っていいのか……」
「へい、ゆー、はっきりいっちゃいなよ。もぐもぐ」
「曜子は遠慮がなさすぎます。それと食事中に喋るのはいけません」
「かったいなー、お役所かっ!」
「意味分かりません……」
頭を抱えて唸る間宮さん。
「はぁ、話が進まないので曜子の事は置いておいて」
けほん、と咳払いをして顔を上げる。
「単刀直入にお伺いします。貴方は転生者ですね?」
「……」
本当に単刀直入に聞いてきましたね!!
ってこんな事ここで話しても大丈夫なんでしょうか?いや、聞いてもちょっと頭可笑しい連中と思われる程度でしょうけれども。それか、中二病かなにかか。けれど、周りが騒がしいからある意味安全なのかもしれないですね。
というか、そんな事を聞くって……間宮さんも。
じっと間宮さんの目を見つめていると、少しだけ目を伏せた。長い睫毛が影を作って、妙に色っぽい。艶っぽいというか、雰囲気のある子ですね。
「実は、私と曜子も転生者なのです」
「ええと……いいのですか?そういうことを言ってしまって」
間宮さんはこくりと頷いて、それから花が咲く様に笑った。あまりに綺麗に笑うものだから、女性相手なのにドキリとしてしまう。これは男達も惚れますわ。
「木下先輩は言いふらすような方ではないと判断したので」
ああ、うん。この人モテるわ、間違いない。というか、すでに3人は惚れているのが現状ですからね。彼女に近づく事すらできないその他大勢の男の子達もいるのではないだろうか。
そこまで信用されて言われるとは。私も腹の探り合いとかしたくありませんし、間宮さんになら言っても良いと思う。
藤間さんに至っては転生者だと確信しているようですし。あまり口外しないよう注意もしたいんですよね。色んな所で言いそうなのが藤間さんの怖い所です。
「ありがとうございます。お察しの通りですよ」
「……やっぱり!」
ペチリと手を叩き、嬉しそうに頬を赤らめて笑っている。それのなんと可憐な事か。うん、翼、なんかごめん。間宮さんの笑顔貰っちゃった。抜け駆けしてごめんなさい。
「別に確認しなくてもわかってたよ!!あたしわかってた!!」
口の端にクリームを付けた藤間さんが手を上げている。って、いつの間にパフェも完食したのですか……。
「はいはい、曜子は良い子ですね」
「棒読み!レーナ棒読み!!」
「さてと、お仲間だと分かったので、これからについて色々話しておきましょう」
「無視!レーナの華麗な無視!レーナだけに!」
「まず攻略についてですが……」
完全に藤間さんのギャグも無視していく。付き合っていると話が進まないと判断したのだろう。まぁ、おそらく藤間さんの扱いはそれで正しいのかもしれないですね。色々苦労してそうな土御門くんを思い出し、憐れむ。
「まず、私は攻略対象者に全く興味がありません」
……なんですと!?




