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神社に行きました。

 風邪も全快して、冬休み宿題を手軽にすませる。年末年始はさすがに生徒会の仕事もないので、のんびりと家事を手伝い、勉強をする。赤本と向き合いながら、忘れているものがないか何度も繰り返す。たまにやっておかないと、人間ってなんでも忘れますしね。まぁ今のところ大丈夫みたいですけど。ついでに翼宛てのプリントも作ろう。あんまりやりすぎないようにしないとですね。

 ん、久しぶりに翼の音楽聞きたくなってきましたねぇ。将来はプロのミュージシャンですから、やはり凄く上手いんですよ。

 静かに勉強していたら、スマホが震えた。メールかな、と思い手に取ると、翼からだった。なんというタイミング。ちょうど翼の事を考えていた時だったので、若干驚く。メールを開いて読むと、初詣のおさそいだった。ああ、いいですねぇ。でも、きっと翼の事だから、晴翔も来るんだろうな。お見舞いに来てくれた時の晴翔の体温を思い出して、首を振る。

 あんなに密着したら誰だってドキリとしますよね。いい加減普通に接しなければいけません。晴翔もいつまでも私がこんなんじゃ迷惑でしょうし。

 晴翔からもらったネックレスが入れられている引き出しをチラリと見て、息を吐きだす。

 ずっとつけないというのも申し訳ないんですかね……好きなデザインですし、この際つけていきましょうか。いえ、でも……引かれないでしょうか。振ったのに付けて来てるとか、いやでもそれだと似合うからって送るでしょうか。いや、うん……そうやって悩む事ももうやめましょう。そうやって意識するのがダメなんですよ。もう何も考えずにつけましょうよ。せっかくあげたモノが使われないショックですしね。……でも、なぁ……いや、もういいか。


 悩みながら過ごしていると、あっという間に年を越した。メールを見ると、あけましておめでとうメールが沢山届いていた。最近の子はメールで済ませますからね。はがきが売れなくて困ってるとか、どうとか。はがきもいいものですけどね、如何せん、手間がかかりますから。そうですよね、まぁ、私もメール派ですから。とてもめんどうなんですよね。いいものなんですけどね、はがき。形に残りますし、あとで眺めたりもできるんですけども。

 いやぁ、来てしまいましたね。今年がやってまいりました。人生が終わるカウントダウンがスタートしました。いやぁ、爽やかな朝ですね。とても爽やかです、ええ。

 初詣に行くために準備をする。ちなみに普通の服で行くつもりだ。適当に男っぽい服を手にして、準備する。晴翔のネックレスは……いや、似合わないですね。やめときましょう。

 そっとネックレスを閉じて、待ち合わせ場所へと向かう。


 寒いですねぇ……。白い息を吐きだす。冬の寒さは染み入りますねぇ……。マフラーを口元まで上げ、手を片方だけコートのポケットに入れる。毎年、混んでるんですよねぇ。

 待ち合わせ場所にいくと、翼と晴翔が女の子達に囲まれていた。あれ、デジャヴ……まぁ、あれだけ恰好良いですから、仕方ないですね。

 女の子達から抜け出し、翼達と合流する。

 神社には出店が出ている。人が沢山いますねぇ。


「あの、プリントもう終わったんだけど」

「ん?ああ、もうですか。だんだんはやくなってきましたね」

「うん、まぁ……慣れたというか。慣れさせられたというか」


 今回はちょっと少な目にしたけれど、翼はもう終わらせたらしい。はは……と少しだけ苦い笑いを浮かべている。

 雑談をしつつ、混みあっている賽銭箱の所まで行って、願い事を神様に送る。かなり人が多いのではぐれないようにしないといけません。2人共目立つのでまず問題ないでしょうけれど。願い事は……そうですね。今年も無事に平穏に過ごせますように。無事に!ちょうぶじに!何事もなく!本当に本っ当にお願いしますっ!いじめとかナシの方向で!できれば安全策で転校したいです!転校!いじめた後の転校じゃなくて、いじめる前に転校したいです。

 なんかこう、問題起こしてからじゃ遅いんですよ。早めの対策がいるんですけど、もう年越しちゃいましたよ!どうしましょう!今から転校の手続きっていけるんですか?!うわああ!


「透、後ろつかえてるから」


 うんうん唸りながら願っていると、翼に腕を引っ張られて泣く泣く賽銭箱から離される。願ってたらついつい熱が入ってしまいました。だって、今年はほんとにこわいですからね……。


 次はおみくじを引く事にした。神社ときたら定番ですね。去年は吉でした。まあまあです。今年はどうなるでしょう。凶とか大凶とか出たら泣くかもしれない。

 じゃらじゃらとおみくじの箱を振って、番号を巫女さんに伝える。持ってこられた薄い紙を受け取り、翼や晴翔がおみくじを引くのを待つ。

 全員引き終えた所で、同時におみくじを開く。

 大吉。

 二度見する。しかし何度見ても大吉な事に変わりがない。ば、ばかな……私の今年の未来は明るいというのか!いや、嬉しいんですけどね。はっ、そ、そっか、今の状態が最高の状態って事で後は転げ落ちるだけなんですね!?うっかり期待しそうに!いや、でもちょっと期待してもいいですか……。

 翼と晴翔の方を見る。晴翔はおみくじの紙を持ったまま固まっていた。翼はというと、晴翔のおみくじを覗き込んで苦笑いを浮かべている。その反応は……あまり芳しくなかったのかな……そう思って覗き込む。

 凶。

 えっと、はい、なるほど。


「えっと、翼はどうでした?」

「だいきちっ!」


 びしっと掲げて自慢げだ。

 そんな可愛らしい姿を見て和みながら、私もおみくじを見せる。


「おおっ透もかぁー!」

「ふふ、そうですね。なにか良い事あると良いですね」

「だよねーって晴翔は?」


 キョロキョロとしている翼、そこでようやく私も晴翔の姿がない事に気付く。見失ったのだが、赤い髪のイケメンはすぐに見つかった。先程まで私達がおみくじを買っていた場所だ。あれっ!二回目買ってる!おみくじ二回目買っていいんでしょうか。

 買ったおみくじを薄目で恐る恐る開いて、結果を見た瞬間その場に崩れ落ちた。

 慌てて走って近づき、翼がおみくじ結果を晴翔の手から奪い取る。


「う、わぁ……」

「大凶……」


 2回目が大凶……これはひどいですね。1回目でやめといた方が良かったのに……どうして引いちゃったんです。ど、どんまいです。

 プルプル震える手で大凶と凶のおみくじを木に結びつけていた。

 私と翼も大吉のおみくじを境内にある専用の木枠に付ける。良いモノでも悪いモノでも括りつけるといいんですっけ?人によると持ち歩く人もいるらしいですけれど、私はつけていくタイプです。持ち歩くのが面倒なんておもってませんとも、ええ。

 しっかりと括りつけた所で一息つく。


「今からどうします?」


 と、翼に聞いてみる。

 翼はスマホをいじりながら、私に返答した。


「んー、俺は、今から友達の所に行こうかと思ってる」


 ニッコリと、実に良い笑顔だ。

 思わず苦笑する。前回も似たような事しませんでしたか。


「じゃあ解散でいいですかね?」


 私もニッコリと笑って断言しましょう。

 翼がいないなら気まずいだけですし。当然といえば当然でしょう。

 すると、翼と晴翔があわあわと慌てだした。


「ととと、透?いやでも晴翔と2人でその、なんというか!えっと」


 あまりに翼がわたわたしているので思わず笑ってしまった。クスクス笑っていると、周りの目が集まりだしたので、コホンと1つ咳払いして笑いを抑える。


「冗談です。気を使って頂いてすみません」

「え、うん。いや、そんなんじゃないけども、あれ?そういうことなの?」


 晴翔とは、ゆっくり話をしないと思ってました。

 ずっと気まずいままでもダメですから。翼は恐らく、仲直りさせたいんだと思う。なんだか申し訳ないです。

 翼とわかれ、晴翔と2人きりになる。


「どっかで腰かけますか」

「……ああ」


 僅かに緊張した声が低く響く。

 歩き出そうとして、やめた。

 すると、後ろにいた晴翔が軽くぶつかる。


「あっ……悪い」

「あ……いえ、こちらこそ。立ち止まってしまって」


 互いに向き合って謝罪をする。

 なんだかその様子がサラリーマンのようで少々笑ってしまった。私が笑っているのを見て、僅かに驚いていたようだが、晴翔も口元を少しだけ緩ませた。


「ふふ……ああ、そうそう。少しお腹すきません?何か買ってから座りませんか?」

「あ、ああ。そうだな……何を買う?」

「そうですねぇ……」


 少し考えて、あるものが思いついた。


「「たこ焼き……」」


 晴翔と声が重なった。

 そうそう、晴翔と来ると必ずたこ焼きですよね。分けやすいですし。お好みとか焼きそばは家でも出来ますけど、たこ焼きはたこ焼き器がなかったらダメですからね。そんな頻繁にたこ焼き作る事もないですし、祭りにきたら食べるモノなんですよねぇ。

 なんだか晴翔との思い出が懐かしくて、またついつい笑ってしまう。


「……っ」


 目の前にいる晴翔が胸の所をギュッと掴んで目を逸らした。その様子に、首を傾げる。


「晴翔?」

「透さん……!?」


 私が晴翔の様子を窺っていると、後ろから可愛らしい女の子の声が聞こえて来た。

 振り向くと、そこには着物を着て髪を綺麗に結った桜さんがいた。寒さのせいで、ちょっぴり鼻が赤くなっている所がまた可愛らしい。チラチラと男達が桜さんを見ている。その気持ち、わかりますとも。めっちゃ可愛いですね。なんでしょう、薄く化粧をして、大人っぽくも見えて……ドキリとするような色香を感じさせます。


「き、奇遇ですね!こんなところで会えるなんて!」

「ええ、偶然。こんなに人も多いのによく見つけてくださいましたね。嬉しいです」


 桜さんが私の手を取って興奮している。そんなに嬉しいですか、そうですか。私も嬉しいですよ。

 私が桜さんと手を握りながら周りを見ると、男たちがあきらめ顔で離れて行った。私、女ですよ……まぁ、桜さんが変なのに絡まれないならいいですけど。


「……探してみようとは思ったけど、人混みがあるから無理だとおもってたけど。これが愛の力なのね!……ふふふ」

「桜さん?何かいいました?」

「何でもありませんよ!ふふふ!」


 その後、嬉しそうな桜さんと再び賽銭箱の前に行って、桜さんが祈っているのを見て癒されて。おみくじで小吉が出て、少々不満そうにしているのを慰めた。主に、晴翔が大凶引き当てたというのを引き合いに出して。

 晴翔は今回、なんだかとても機嫌が良さそうで、空気が悪くなるような事もなかった。なんだか、前のように接する事ができるようになった気がします。これは前進ですね。

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