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ハロウィンしました。

 さて、ハロウィンですが、お菓子作りをしようと思います。桜さん宛てのプレゼントですから、多少でも美味しくできればいいなと思っている。桜さんレベルは流石に無理ですが、出来得る限り頑張りたい。


「張り切ってるわね、透ちゃん」

「あ、うん……まぁ」


 エプロンをつけて材料を前にしているので、確かに気合入っているようにみえるだろうな。


「彼氏?」

「や、違うけど?」


「ほんとぉかしら」

「ほんとほんと」


 苦笑しながらお菓子の分量を量る。作るのはクッキーにした。誰でも作れるし、ふくらみ具合とか気にしなくていい。料理は多少適当でも後から味を付け足したりして調整できるけれど、お菓子だとそうもいかない。作ってる途中で味見しようにも生だとお腹壊しますしね。

 とりあえず、練習のために1回焼いてみた。レシピは文化祭で使ったやつだ。なので、私が作ってもそれなりに美味しく焼けた。もうちょっと焼き時間少なめでも良いですね。という事で2回目はもっと美味しく焼けた。

 たぶん、これならいける……!

 すごいよ、桜さんと深見くんのレシピ!こんなに美味しいお菓子が私にも作れるなんて!

 うん、どうせ桜さんのレシピなら一緒に作っても同じだったかな。まぁでも、自分で作る事に意味があるって信じてる。


 さて、結構たくさん焼いちゃいましたが、余った分はどうしましょうか。深見くんと、三宅さん、玉森さん、あと翼と……会長くらいにあげましょうか。それくらいで数も丁度良いでしょうし。ちなみに晴翔にはあげる予定はない。何が悲しくて振られた相手にお菓子をプレゼントしなければならないのか。そりゃまぁ、トリック・オア・トリートと言われたら買ったお菓子の詰め合わせでもあげますよ。

 さて、お菓子を袋に詰めますか。



 ハロウィン当日。

 私の衣装は文化祭の時の執事服に帽子を付けたもの。ドラキュラ的な何かだと思ってる。て、手抜きではない。有効活用と思っててほしい。

 私の所にはたくさんの女の子が来た。

 勿論晴翔や翼の所にも沢山きている。私が同列ってどういうことなの。イケメン枠ですか、ソウデスカ。


「桜さん、トリック・オア・トリート!お菓子くれないといたずらしちゃいますよ?」

「っ……!」


 桜さんが顔を赤くして口を押えた。

 その反応はなんなのでしょう。


「え?だ、大丈夫ですか?」

「ふ、ふふ……ええ、大丈夫です。これ、お菓子です」


「あ、有難うございます」


 桜さんの衣装は魔女っこでしょうか。いつもの清純なイメージとは違い、小悪魔系だ。それがなんだか色っぽい。

 手渡されたプレゼントからは、甘く良い香りがしてくる。どう考えても美味しい。香りからして美味しい。なんだか、私のお菓子でいいのか申し訳なくなるくらい。

 そして今度は桜さんの番だ。


「透さん、トリック・オア・トリート、です」


 もじもじしながら言う桜さんはとても可愛い。

 思わずクスリと笑ってしまいました。


「ふふ、私の手作りですから、出来は保障しませんけれど、どうぞ」

「あ、ありがとうございます!」


 まるで宝物のように胸に抱えてくれる。いや、本当に桜さんは良い方ですよね。桜さん以上に美味しくお菓子が焼ける方なんていないんですけどね。いるとすれば深見くんですか。深見くんは男子に人気があるようだ。美味しいお菓子目当てですね、分かります。深見くんや玉森さん、三宅さん、翼にも手作りを渡す。

 さて、あとはいつもお世話になっている会長だけですか。

 周りを見渡すと、皆お菓子を配って楽しそうにしている。定番のかぼちゃとか、なんか日本の妖怪もいるようですけれどね。まぁ、そこはご愛嬌という事で。しかし、妖怪大戦争出来そうな顔ぶれですね。そんな衣装を作るだけの財力があることが凄い。

 歩いてる途中、何度か知らない人に声を掛けられて、お菓子を交換する。皆楽しそうですね……こんな大々的なハロウィンイベントなんて中学の時はしませんでしたけどね。はぁ、確か乙女ゲームだと、このイベントで好感度上げるんでしたっけ。詳しくは覚えてませんけど……衣装はずっと変えないとさっき翼は言ってましたから、来年も晴翔はおばけ、翼はかぼちゃお化けになるんですかね。

 というか、本当に良く女の子に呼び止められるんですけど、私って何なんですかね……。


 生徒会室に到着して、扉を開けると会長がお菓子の山の向こうに佇んでいた。随分たくさん貰ったみたいですね。


「きたか」


 若干顔が嬉しそうなのは、お菓子を沢山貰えたからでしょうね。甘党ですもんねぇ……。


「会長……お茶入れましょうか?」

「あ、ああ……」


 もう早速開いて食べてるんですね……。なんというか……あれ、もしかして好きな子からもらった奴だったりして。緑茶を淹れて、取りあえず落ち着く。静かにお茶をすすっている会長の隣で私もお茶を飲む。

 多少肌寒くなった方が丁度良い室温になりますね、この部屋は。これだけ多ければあげなくてもいいんじゃないでしょうか……。まぁ、気持ちだけでも渡しておきましょうか。

 ゆっくり会長の方を向いて、定番の言葉を投げかける。


「会長、トリック・オア・トリート、です。お菓子くれないと悪戯しますよ?」

「……」


 お茶を飲んでいた会長は、静かにゆっくりとお茶を置いて、綺麗な顔を赤くさせた。今なぜ赤くなったのか謎ですが……取りあえず返答を待つ。

 お茶から手を離し、両手を組んで膝の上に置いて、指をもじもじ動かしている。何かいいたげに口を開いては閉じ……を繰り返している。

 埒があかないので、首を傾げつつまた声をかける。


「……あの?会長……?」

「ちなみに……」


「はい」

「ちなみになんだが……」


「ええ」


 そしてまた黙る。え、なんなんでしょう。もうしばらく待ってみてダメだったら、普通にお菓子を出しましょうか。

 会長、そんなにお菓子を他の人に渡したくないんでしょうかね。

 しかし、しばらくしたら会長が袋を取り出して、ソッと机に置いた。袋を置いたその手をそのまま口元に持っていき、目線を窓へと向ける。


「もっていけ……」

「ああ……有難うございます」


 どうやらくれるみたいです。


「何か言いかけていませんでしたか?」

「いや、なんでもない」


「そうですか?」

「ああ、なんでもないんだ……」


 疲れたように首を振っている。彼の中で何があったのか。ふう、と溜息を付いて改めて私に向き合う。


「透、トリック・オア・トリート」

「ああ、はい。それでは私からもどうぞ」


 会長からのお菓子を受け取りつつ、自分のお菓子も手渡す。


「ありがとう」

「いえ、あまり自信はありませんが……よろしければどうぞ」


 私からの袋を受け取った会長は、僅かに驚いたように目を見開いている。手元にある袋を一瞬みつめてから、私の方に視線を戻す。


「手作りなのか?」

「ええ、まぁお恥ずかしながら」


「そうなのか……」

「レシピはとても上手なかたから頂いたのでそれなりに美味しいですよ。文化祭の時に作ったクッキーと同じレシピですから。いつもお世話になっているので、良かったらと思いまして」


「あれか……いや、食べられなかったから、素直に嬉しい。それに……」


 そこで一旦言葉を止めて逡巡する。私の目を見て、瞳が揺れるのが分かった。目元が僅かに赤くなっていく。そして覚悟を決めたのか、口を開く。


「……透の手作りっていうのが、嬉しい」


 恥ずかしいのだろう、段々と顔全体が赤く染まっていく。しかしその瞳は真っ直ぐこちらをみつめている。絶対に目を逸らさない、という強さが見えて、私の方が目を逸らしたくなる。真っ直ぐな視線に思わずドキリと心臓が跳ねる。その瞬間、何故か会長の筋肉の逞しさだとか、男らしい手で背中を撫でつけられた事が思い出される。

 妙に騒ぐ胸を抑えながら、苦笑する。そういう言い方は、相手が勘違いしそうだからやめておいた方がいいんじゃないでしょうか。妙にドキッしちゃいましたよ。攻略対象者っておっそろしいですね。翼も人懐っこく近づいてきますし……あれはまぁ、私を完全に男枠に入れてますけど。

 胸も落ち着いたところで、ニッコリと笑いかける。


「そういって貰えると、私も嬉しいです」


 会長は普通に文化祭の時のクッキーが欲しかっただけで、私の手作りが嬉しいというのは社交辞令だろう。ふう、危なかった。危うく「あれ?この人私の事すきなんじゃ?」と勘違いするところでした。普通の女の子なら当然勘違いしているでしょうね。良かったですね、私がおばさんライバルキャラで。今やイケメンライバルキャラになってますけどね……いや、もう自分の傷を抉るのはやめよう。

 会長としばらく談笑した後、晴翔が乱入してきて何故か口喧嘩をしていた。この2人はいつも仲が良いですね。

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