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デートしました。

 今日は桜さんとのデートの日である。

 とても心地よい空、噴水の前で待ち合わせをしてる。桜さんは清純な感じの可愛らしい女の子なので、ナンパされる恐れがある。なので、今日はちょっと気合を入れて男装してみた。髪が長いけど括るだけで男っぽいってどうなの。いや、この際気にしまい。

 噴水の前にある段差に腰掛けつつ腕時計を確かめる。待ち合わせ30分前だ。案の定、桜さんは来ていない。その事に少しだけホッとする。あんな可愛い子ほったらかしにしてたら心が痛いですからね。

 というか、会長とか晴翔が早く来すぎなんですよ。やっぱり30分前は普通に早いですよね。なのにスタンバイしてるなんて……イケメンって恐ろしい生き物です。

 手をついて後ろに僅かに体重をかけて上を見上げる。空がだいぶん高くなってきています。こうやって太陽の下で待っていても苦ではありません。半そでだと少しだけ肌寒いでしょうが、長袖を着ているので寒くはない。

 少しだけぼんやりしていると、誰かが近づいてきた。2人組の女の子だった。そこに桜さんの姿はない。


「あ、あの。写真撮って貰っても良いですか?」

「ん……ああ、はい。構いませんよ」


 嬉しそうにしている女の子を見て、少し和む。写真撮るだけでそんなに喜んで貰うとは。なんか観光でここに来たんだろうか。私は女の子2人を写真におさめようと思い、カメラを待っていたのだが。片方の女の子がこちらに寄って来て、もう1人がスマホを構えている。

 ん?あれ?もしかして、私と撮る気だったんですか!?

 苦笑しつつ、2人と写真を撮り終える。礼を言われて握手までした。……すっごく複雑な気分ですよ。まるでアイドル的扱いです。気合を入れて男装しすぎたようです。なんででしょうね、とても虚しいです。

 と、丁度そこに桜さんが慌てて走ってくる。


「す、すみません!お待たせしてしまったようで」

「いえ、待ってないですよ。さっききたとこです」


 なんだかカップルのような会話をしつつ、桜さんを見つめてみる。

 恥ずかしそうに微笑んでくる桜さん。その頬も唇も桜色に染まっていて、可愛らしい。カチューシャをしていて、桜色のゆったりとしたカーディガンを着て、膝丈のシフォンのスカートがふわりと揺れる。

 はっきり言おう。この子がこの乙女ゲームの主人公だわ。はい。

 そう思えるくらい可愛らしい。

 何故か胸がときめきます。これは、萌えって奴ですね。久々にきました。お互い、照れたように笑いあう。


「あ、あの、透さん恰好良いです」

「ふふ、桜さんもとても可愛らしいです」


「あ、ありがとうございます」

「ふふ、こちらこそありがとうございます」


 顔を真っ赤にさせる姿が愛らしいです。うわ、こんな子彼女に出来る男って凄く幸せなんじゃないでしょうか?なんだか今、私すっごく幸せですよ。顔にやけそうです。


「えっと、どこへ行くのでしょうか」

「あ、はい。私に任せて下さいっ」


 ぽんと柔らかそうな胸を叩いて自信満々に答える桜さん。私はその姿に和みつつ、ついていく事にした。

 つれてこられたのは雑貨店。ここで可愛い梱包用の可愛らしい包みを買うのだとか。

 雑貨店はさすがにハロウィンが近いせいか、梱包用紙がハロウィン仕様になっているものもある。こういうのって見てるだけで楽しくなれちゃいますよね。

 うろうろしつつ、考える。色々あって悩むが、結局シンプルなものを買っちゃうんですよね……。この透明なだけのヤツとかね!しろくろだったりね。あまりに可愛らしいものは私に似合わないのではないだろうか。最近男にしか見られてないっぽいですし。おっかしいですね。ライバルキャラの木下透は綺麗なお嬢様タイプだったはずなのに。

 顔は悪くないはずなんです、顔は。性格の問題ですか、そうですか。そこはもう今さらどうしようもないんですけど。前世からずっとこれですもん、もう変えようがありませんよ。

 桜さんの姿を見つけると、とても真剣に入れ物を見ています。とても深刻そうに悩んでいる。ハロウィンイベントはもっと楽しんだほうが、いいです、よ?まぁ妥協を許さない桜さんの事ですからね。文化祭では入れ物まではこだわる事ができませんでしたから、次こそはと考えていそうです。

 さて、私ももう少しだけ真剣に探してみましょうか。


「こっちとこっち、どっちが良いでしょうか?」


 ハロウィン仕様の可愛らしい箱と、ストライプのシンプルな箱を持ってきて私に見せてくる。

 ふむ、私はどちらを選べば正解なのでしょう。顎に手を当ててしばし考えてみる。ありきたりなハロウィン仕様の箱じゃなくて、あえて季節感ゼロの箱を持ってきたって事はこれが気になっているのだろうか。たしかにストライプはシンプルだけれど所どころに、細やかなデザインがとても良い。でもハロウィン仕様の方もかぼちゃお化けや魔女、可愛らしい骸骨などなど、とても良いモノだと思う。


「ふふ、透さんが良いと思った方を選んでください」


 悩んでいるのがバレたのか、なんだか僅かばかり恥ずかしい気分です。


「ええと、では主観で申し訳ありませんが……私はストライプの方が好きですね」

「分かりました、決定ですねっ!」


 私の回答ですぐに良い笑顔でストライプの方を買う事を決定したようだ。その決断の速さに少し驚く。悩んでいた割にはすばやいですね。

 私が思った事を正確に感じとった桜さんが、ストライプの箱で口元を隠しながらクスリと目を緩ませた。


「これは透さん用なんですよ」

「ああ……それで」


 なるほど、私にあげるものだから私が良いと思った方を選んで貰ったという訳だ。なんで私の好みを把握しているんでしょうか。桜さん凄いですよね。


「私はこっちのハロウィンが好きなんですけどね」


 ふふ、と微笑んでいる桜さん。つられて私も微笑む。

 そして、私は桜さんの持っている箱を手に持った。


「じゃあ、これは桜さん用に私が包んでプレゼントしますね」

「えっ!あ……ありがとうございます!」


 かあっと顔を赤らめて喜んでいる。いや別に箱選ぶのが面倒とかではなかったんですよ?ただ、桜さんが好きだと思っているものでプレゼントした方が嬉しいじゃないですか。

 と、ですが……この箱に既製品を入れるのはどうにも味気ないですよね。適当に飴とかお菓子を買って袋に小分けにして入れようと思っていたんですけれど……。

 まぁ、桜さん専用って事で、手作りしますか。

 ……ううん、お菓子のプロに手作りお菓子を手渡すのはちょっと気が引けますが……ハロウィンまでに練習しておきますか。



 雑貨店を出て少し疲れたので、カフェでお茶をしつつ談笑する。


「透さんて優しいですよね」

「え、そうですか?普通じゃないですか?」


「そういう無意識なところですよ」


 くすくすと笑う桜さんマジ主人公。

 それにまぁ、可愛い子には特別優しくしちゃいたくなりますよね。桜さんとても可愛いから、つい……多分他の男性もそんな感じでデレデレになるんじゃないでしょうか。料理も裁縫も出来て、優しくて気遣いの出来る完璧な嫁ですからね。他の男が放って置かないでしょう。

 私もこれだけ可愛ければモテたんでしょうか……へこみます。


「でも、ちょっと妬けちゃいます」

「え……?」


「ほら、私が来る前、写真撮ってあげてたじゃないですか」

「あ、見ていらしたんですか。お恥ずかしいです」


 うう、もっと早く声掛けて下さいよ。


「私が特別なんじゃないって思い知らされちゃうんですよ……」

「え?」


 ボソリと何かを呟いたが、良く聞こえなかった。


「なんでもないです」


 少し寂し気に微笑んだ桜さんの顔が印象的だった。

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