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体育祭をしました。

 もうすぐ体育祭です。

 すでにグラウンドにはテントがスタンバイされている。足は折りたたんだ状態なので、伸ばせばすぐに使えるようにしている。

 週末には開催される。天気予報では晴れという事なので、心配は何もないだろう。

 体育祭は、親族のみ入場可能という事になっているが、まぁ友達を呼び込む人も多い。

 文化祭よりはナンパとかは少ないが、怪我人が多いのが難点か。

 体育祭は、1人に付き大体2、3種目出る事とされている。そして、卓球など部活に入っている者はその競技には参加できない。競技に勝つためだけに部活をやめたりする前例があるので、今ではやめたとしても禁止という事になっている。具体的には半年以内に入っていた部活の競技には出れない……という具合だ。そこまでして勝ちたい……んでしょうね。こういうルールが存在するという事は。

 後は怪我人を運び込む所や熱中症の人への対策などなど、生徒会の方は大変ですね。養護教諭だけでは大変な事もあるので、この時だけは近隣の医師が自主的に来てくれるそうだ。顔合わせに行ってみたら、白髪の眼鏡をかけた人の良さそうなおじいさんでした。ボランティアで毎年参加してくれるそうで、とても良い方です。

 真夏の暑さも少し和らぎましたが、油断は禁物です。やはり運動するのですから、飲み物はきちんととらないといけません。

 私は卓球に出る予定です。卓球は普通にへたくそなので、1回戦敗退でしょうね。

 総合でトップのクラスは焼肉を食べられるそうで、毎年かなり熱気があるそうです。怪我人が多いらしいので、気を引き締めないといけません。

 学年それぞれ5クラスあるので、3年のA組、2年のA組、1年のA組が1チームとなっている。そのなかで順位を決めてポイントが入っていく。それを集計するのが最も面倒ですよね。

 晴翔は確か借り物競争と障害物競争、あとリレーに参加してましたね。

 翼の方はバスケと50メートル走、卓球でしたか。勝てると良いですね。

 大会はグラウンドやら体育館やら色々な所で開催するので、被る人もいる。なので、補欠要員として多めにカウントしている。まぁ、そのせいで全部の競技で補欠とかありますけどね。

 最終的な点検を済ませて、生徒会室に戻る。

 生徒会室を空けると、むわっとした熱気と共に風が吹き込んで来た。風が通るようになったせいで書類が散らばる。


「わ、わわっ!」


 慌ててドアを閉めてるが、生徒会室は酷い状況になっている。


「だから窓は閉めていた方が良いと言ったんだ」

「あんたも暑いだのなんだの言ってただろ!」


「透が戻ってくる時こうなるとは考えなかったのか?」

「結局開けたのあんただろ!?」


 会長と晴翔が言い合いつつ書類を拾い集める。


「すみません、ノックしていれば良かったですね」

「いや、そうじゃない。晴翔のせいだ」

「だから開けたのあんただろ!?」


 神妙にしている会長が突っ込まれているのをみて、思わず笑ってしまった。なんだかんだと仲は良いらしい。

 そして会長は開けた責任を晴翔になすりつけたいらしい。それがバレバレで妙に微笑ましい。


「ふふふ、いえ、きっと誰のせいでもない。そういう事にしましょう?」

「あ、ああ。そうだな」

「……ああ」


 私が笑ってそう締めくくると、会長と晴翔が僅かに顔を赤くして頷いた。両方大人げない自覚はあったらしい。恥ずかしそうにしている。

 最後の書類を拾い終わり、溜息を吐く。


「でも、本当にこの部屋は暑いですね。どうにかならないのでしょうか」

「そうだな……冬はストーブでなんとかなっているが、夏は確かに暑いな」

「扇風機くらい置こうぜ」

「ああ、それいいですね」


 クーラーまでの贅沢は言わない。せめて扇風機が欲しいです。でも書類が飛ばないようにしとかないといけませんね。まぁその時はその時に対策するとして、扇風機があればこの蒸し暑さもマシになるだろう。この部屋、なんでこんなに暑いんでしょうね……?廊下の方が涼しいんですけど……。


「それくらいなら……俺の家から持って来よう」


 会長が快く頷いてくれた。

 むしろなんで今まで扇風機を置かなかったのだろう。すぱっと抜け落ちていましたよ。


「いえ、もうすぐ秋ですし……面倒じゃないですか?」


 すぐにこの暑さもやわらぐだろう。もうすぐ使わなくなるのに、持ってくるのはどうだろうか、ううん。

 会長は緩く首を振って笑った。目が瞑れそうになる笑顔だった。


「使わなくなったら持って帰ればいいだけだ。俺は透に体調を崩される方が堪えるからな」

「え、ええと……有難うございます」


 ストレートにそんな事を言われると、照れてしまいます。私が照れていると、ごほんという咳ばらいが近くで聞こえて来た。見ると、晴翔が苦い顔を浮かべている。

 首を傾げつつ、書類を机の上に置く。

 さて、体育祭も何事もなければいいですね。




 体育祭が始まった。

 天気は雲1つない晴天。まるで夏に戻ったかのような暑さだ。御蔭で校長のスピーチで倒れる人もいたほどだった。これは結構大変になりそうですね。

 1組チームの青色のはちまきを頭に巻きながら溜息をはく。体育館も窓を全開にしてても熱い。熱中症になりそうですね。こういう行事の時って、曇りが良いですね……。雨は降らないような曇り空が理想的です。

 体調が良くなった者は、競技に参加しているが、また崩す事もありそうなので注意はしている。

 楽しそうに笑いあいながら、時に悔しがりながら、大会は続いている。いやぁ、青春ですね。

 二人三脚で男女が照れながら走っているとか、爆発しろとしか言えない。

 卓球の試合は、普通に1回戦敗退した。相手が上手いのなんのって。いや、私がへたくそ過ぎたんでしょうけれど。相手の子は勝ったのに何故か顔色が悪かった。なんででしょうね。

 バレーは1回戦は勝ち進む事が出来ている。周りの方が凄かったからですね。

 順位の中間発表では5組のチームが1位で、あるらしい。私の所はA組なので、現在3位だ。ここからまだまだ盛り返す事は可能だろうが……ううん、しかしE組はかなり強いですよね。50メートル走でも結構E組の方が1位取っていましたからね。


「透ちゃんっ!」


 母が手を振ってこちらに走ってくる。動きが若々しいですよね。母のその手にはお弁当が。

 丁度昼休憩の時間帯で、皆がそれぞれ家族や友達とご飯を食べている。私も母と昼食をとる事にした。ちなみに今回、父は仕事である。すごく悔しそうにしていた。代わりに母がビデオを回す約束をしたらしい。余計な事を。負けてる所を録画なんて……まぁいいですけど。

 お弁当をつついて、楽しく談笑する。


「あっ、んふふふふふ」


 クリーム色のふわふわした髪で、青い瞳のお嬢さんが自然な感じで私達の所に入って来た。

 若々しい感じのおっとりした人だが、母と並ぶと同い年くらいにも見えなくもない。というか、母が若々しすぎるのだ。

 謎のお嬢さんはお弁当を広げている。彼女だけでは食べきれないだろうほどの量がある。

 ……えっと、なんでナチュラルに入ってきているのだろう。私の知り合いという訳ではない。母と目を合わせてみたが、母も知らない人らしい。


「えっと……」


 恐る恐る声を掛けてみる。

 すると、丁度のタイミングで彼女の電話が鳴った。


『どこにいるんだ』

「んふふ、貴方がとぉっても気になってる所よ?」

『はぁっ!??』


 電話の向こう側の声は男性の声だ。

 お嬢さんは満足げに電話を切って、こちらに向き合う。


「改めましてこんにちわ?いつも蓮がお世話になっております」

「えっ、あっ……ど、どうもこちらこそお世話になっております」


 あ、蓮って、あの?会長のお姉さんなのだろうか。なるほど瞳の色が同じではある。人形のような精巧な顔の作りは少し似ている。


「……母さん!」


 息を荒げた会長が登場した。

 ……え!?

 会長の言葉に思わず二度見してしまった。今、母さんと言いました!?どう考えても無理ありませんか!?若すぎるでしょう!


「んふふ、気になっているトコロでここに来ちゃうなんて、正直な子ね」


 むふふっと本当に楽しそうに笑っている会長の母君。

 会長はずんずんと母のところに入って、肩を掴んだ。楽しそうな母の肩をガクガク揺らす。


「な、ん、で、こ、こ、に、い、る」

「むふ、むふふふふふふっ!まぁいいじゃない」

「良くないが!?」


 若干涙目になっている会長。


「むふふ、まぁご飯食べましょうよ!冷めちゃうわよ?」

「弁当だからもう冷めているだろう……?」


 会長を無視してお弁当を手渡す母。母には勝てないようで、会長もここに入るらしい。

 気まずそうにこちらにお辞儀してきた。


「す、すまない。母がお邪魔してしまったようで」

「いえいえ、お若いですよね、お姉さんかと思ってしまいましたよ」

「うふふふふっ!」


 むぎゅっと抱きしめられて、胸があたる。すごく胸が大きい方ですね。私もこれほど大きければ男だと間違われる事もなかったのでしょうか。いやでも小さすぎるという訳でもないんですけどね。

 何故か会長の家族と共に食事する事に。なんででしょうね……。まぁいいんですけど。


「蓮ったら分かりやすい馬鹿なのよね」

「おい待て」


「すぐばれる癖に甘党なの隠すし」

「爆笑して隠せって言ったの母さんだろう」


「見た目詐欺よねぇ」

「……」


 ピシピシと会長が怒りをあらわにしているが、母はどこ吹く風だ。お母さんはやはり強いですね。


「ええと……会長は凄い方ですよ?その、生徒会長も完璧にこなしてますし」

「……甘党なのは知っているのね?」


 面白い獲物を得たかのように目を光らせる母親。私に迫ってきて、思わず後ろに下がる。


「えと……はい」

「むふ、むふふふふ。良い娘さんね」

「そうでしょうとも」


 母同士が手を握り合っている。

 それを子供である私と会長が眺める。全く意味が分からないが、仲良くなったらしい。会長と目が合って、苦笑した。




 お昼休憩も終わり、見回りをする。途中、気分の悪くなっている人を見つけて保健室に運んだりしていた。うん、男女のカップル見つけたら爆発しろと思うのは私の心が相当腐っていますね……。わぁ、楽しそう。彼女のお弁当とか貰って嬉しそうにしているそこの男に弾丸をぶち込みたい。……疲れてるのでしょうか。

 しばらくうろついていると、廊下に蹲っている人を見かけた。すぐさまかけより、声をかける。


「どうしました。大丈夫ですか」


 声をかけてすぐに気が付いた。あ……日向先輩だと。

 病弱設定の彼は、この暑さでやられてしまったらしい。白い肌と白い髪が彼の弱々しさを強調している。実際、彼は弱いのだろう。確か文化祭の最後もぐったりしていたと噂で聞いている。……嫌な設定です。

 こんなに暑いのに、彼の顔色は青い。彼の顔だけ見ると真冬のようだ。汗をかいているから、たぶん熱中症なのでしょうけど。


「ん……ああ、君は……」


 朦朧としつつも私の事を覚えてくれていたらしい。


「気分が悪いのでしょうか。肩をかしましょうか?それとも養護教諭を呼んできましょうか」

「ああ……ん、どうしよっか。情けない事に力尽きてね。呼んできてもらえるかな」

「はい、ではお待ちください。すぐ行ってきますね」


 日向先輩をその場に残し、廊下を走る。

 走って保健室に着いたが、駆り出されているのか、医者のおじいさんの姿も養護教諭の姿もない。

 さて、どうしましょうか。暑さにやられたなら冷たい水でも買って冷やしましょうか。でも日向先輩の容体も分かりませんし。とりあえず戻って日向先輩に聞きましょうか。

 走っていると、廊下の角で誰かとぶつかる。後ろにこけそうになっていると、腕を掴まれて引き寄せられる。男らしい胸板と腕に力強く抱きしめられて、少しだけ動揺する。


「と、すいませ……て、透っ!?」


 私と気付いた瞬間、距離をとって勢い余って尻餅をついた。


「ぐ……」

「あ……すみません。大丈夫ですか?晴翔」


 強く打ち付けたのか、顔を顰めている。というか、私と気付いた後の反応が酷過ぎる。そこまで嫌がらなくても良いのに……もう気にしていませんよ、たぶん。って、ショックを受けている場合じゃありません。


「そうだ、養護教諭か、お医者様見かけませんでしたか?日向先輩が体調が悪いんです」

「え……ああ、あのじいさんならさっき保健室向かってたよ。体調不良の人連れて」


 私が差し出した手を戸惑いがちに取りながら、立ち上がる。久し振りに握ったその手は少し大きくなっている気がした。


「体調悪い人……日向先輩でしょうか?」

「さぁ……?白髪の弱そうな人だったよ」


 ふむ、白髪で弱々しいといったら日向先輩かな?すれ違いませんでしたけど、違うルートから行ったんでしょうね。確認のためにまた保健室に行ってみましょうか。


「有難うございます、また保健室に行ってみる事にしますね」

「……」


 ……?つないだ手が離れません。私はもうすでに力を入れていないので、晴翔が握っている状態である。えっと……離してもらえないと日向先輩も心配だし、困るんですけど……?


「あのさ、なんでそんな態度なんだ……?」

「……はい?」


 そんな態度ってどんな態度でしょうか。前より随分と改善している自信はあるんですけど。

 晴翔はなおも私の手を取ったまま話を続ける。


「前はもっと、さ。くだけた喋り方してた……最近ずっと、他人みたいにさ……」

「……」


 ああ、まぁ……それはなんか仕方ないじゃないですか。普通に話せているだけでヨシとしてもらいたいんですけど。


「……すみません」


 謝罪して、晴翔の手を解く。そこまで力を入れていなかったのか、簡単に離れた。

 もう晴翔に笑顔でため口を聞く事もないだろう。晴翔と話していて、また心惹かれでもしたら立ち直れる気がしないのだ。同じ人に2回振られるって、結構キツイですから。

 そのまま保健室へと向かう事にする。


「それが透の答えか……?」


 後ろで晴翔が何か言っていたようだが、無視して歩く。普通に友達に戻れているだけマシですよ。あなたは私を振ったんです。忘れて貰っては困ります。余程私を大切な友達と思ってくれていたようですけど、私はあなたを友達としては見ていなかった。男性として見ていたんです、申し訳ない事ですけど。

 はぁ、なんで晴翔だったんでしょうね。精神年齢離れているのにな……でも強制された訳でもないんですよね。水無月弟くんは主人公でない子を気にしてましたし……。

 保健室に行くと、すでにお医者様と日向先輩が到着していた。不甲斐ないです。私はまるで役に立てなかったようです。

 日向先輩は体調不良はいつもの事だからと笑っていた。その笑顔がなんとも儚げで頼りない。


 午後になって、借り物競争が行われている。順番に走って行き、予想外の借り物に大慌てだ。教頭のかつら、とか絶対無理でしょう!?誰ですか書いたやつは!

 やっぱり借り物競争は盛り上がりますね。色々持っていくものが変わってて見ていて面白い。たまに「好きな人」というお題がある事があって、連れて行く前に玉砕している人なんかもいた。あれは公開処刑ですよねぇ……。可哀相だ。

 晴翔のお題は「親友」で、翼を連れていっていた。スペックが高いのか、前を走っていた人を抜いて1位になっていた。凄いですね、やっぱり。

 しかし隣にいたカメラマンが興奮していた。「親友」でどうしてそこまでアツくなっているのか謎である。

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