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翼視点&女の子のお話。

翼視点のお話は花火大会の所に逆のぼります。

後半に腐ったお友達のお話が入るので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。

「はぁ?何も話さなかった!?」


 俺はあまりの事に大きな声をあげてしまった。怒鳴られた方の晴翔は気まずそうに目を逸らしている。

 今は俺の部屋で、2人で花火大会の時のミッション結果を会議していた所なのだが……あまりの晴翔の情けなさに絶句した。

 花火大会の作戦はこうだ。3人で仲良く出かけて、ほどよいタイミングで俺だけが抜けて2人っきりにさせる。そして2人でじっくり話し合い、花火の素敵な雰囲気で親睦を深める。そんな作戦だったはずだ。

 晴翔に何も話していなかったのは、ちょっと悪かったかなと思う。でも、前もって言っていたら、晴翔が逃げ出しそうだったのだ。仕方ないよね。

 しかし、結果を聞いて唖然とした。透と殆ど話をしなかったなどと抜かすのだ。せっかく2人になったのに、チャンスだったのに、無駄にしよった。

 友達のヘタレ具合に、頭が痛くなる。


 思えば、ずっと晴翔はヘタレだった。透に話しかけたそうに見つめているのに、いざ目が合ったら逸らす。声を掛けようと口を開閉させるが、結局話しかけない。なのに、しっかり俺には牽制してくる。

 ……ダメダメだ。

 透が男だと思っていた時は、喧嘩かな?と思っていたが……女の子だと知った後は「なるほど」とストンと納得出来た。

 確かに、時折ドキリとするほど綺麗だなぁとは思っていたので、あまり驚きはなかった。恐らくクラスのみんなもそうなんだろう。すぐに受け入れて、仲良くなっていた。たまに女の子たちの目がギラついているのは怖いけどね。あれはなんなのだろう……。


 それはそうと、晴翔はヘタレだ。

 俺は好きだと思った子にはガンガン押していくタイプなので、正直じれったい。普通に話しかければ良いのに「でも……」だとか「だめだ……」とか言って、うじうじしている。傘に入れてあげろって言った時も、気まずそうにするだけだった。

モヤモヤしてくる。

 晴翔はうじうじしている間に、透は会長さんと仲良い感じになってしまっている。実際、会長さんの目は透をちゃんと女の子として見ている。このままうじうじしていたら、会長さんに横からかっさらわれる。そう思って今回2人きりにしたのに……。


「晴翔のヘタレあほう……」

「……うるせぇ……」


 罵ると、力なく項垂れる晴翔。反論も元気がない。自分でも情けないと思ったのだろう。


「でも、ちょっと笑いあえたんだよ……」

「う、うーん……そもそもなんでそんな気まずい状態なんだよ」


 透は微妙に晴翔を避けているように見える。梅雨の時も気まずそうに目を逸らしていた。喧嘩にしても、期間が長すぎる。もっとこう、透も歩み寄ってくれないものだろうか?あちらから来てくれないと、晴翔はヘタレだから進展出来ない。


「……振った」

「……ん?今なんて?」


 ちょっと意味が分からなくて、聞き返す。

 晴翔は机に顔を伏せたまま、答える。


「……告白されて、振ったんだよ……」

「……」


 ……ワッツ?なんて?今なんて言った?

 晴翔は恐る恐る顔を上げて、俺の反応を窺う。


「透が晴翔に告白して、晴翔が振ったって事でいいのかい?」

「……」


 晴翔は無言で頷いた。

 ……よし、言って良いかな?


「馬鹿だこいつーーーーーーーー!?」

「う、うるさいなっ!?分かってるよ、んな事!」


 いやいやいや、分かってない!分かってないよ本当に。

 うわ、透マジごめん。喧嘩くらいでいつまでも避けてて心狭い、とか少しでも思ってごめん。土下座して謝る。

 そりゃ避けるわ。告白して振られたんだから、そりゃ気まずいわ。なるほど納得した。うわぁ、相合い傘しろとか、俺超無神経な事言ってしまったじゃん……。あの微妙な空気はそう言う事か……。

 海よりも深い溜息を吐く。


「マジ……もうほんと、馬鹿じゃね?なんで振ったんだよ?」

「……その時は、そんな風に見た事なかったんだよ」

「で、そのままの気持ちを伝えて振っちゃった訳だ。……ばっかだぁ」


 あまりの馬鹿さ加減に頭痛がしてくる。


「告白しちゃえばいいのに」

「振ったのに、今さら好きだって?都合良過ぎねぇ?それ」


 ああ、もうそうやってまたうじうじして……。少なくとも、透は晴翔の事が好きで告白したんだから、告白返ししたら可能性はあると思う。

 でも、結構時間経っているので、今さら告白しても微妙だ。恋愛はタイミングが大事だからな。今は会長と良い感じだし、まだまだ気まずい晴翔はかなり分が悪い。

 なんて馬鹿な男だ。これが俺のお友達か……。何度もため息が零れる。


「こうなったら……生徒会にでも入れば?」

「……はぁ?」


 咄嗟に出て来た言葉だったが、案外良い案のように思えて来た。透と同じ生徒会に入る事で、必然的に顔をあわす機会も増える。ついでに同じ仕事やってるから会話も出来る。必要に迫らるものだから、晴翔でも会話が可能となるだろう。あちらも事務的に会話するくらいなら普通に出来そうだし、うん、良い案だ。

 早速今から根回ししとくかぁ。




 晴翔が副会長として当選して、ほっと息をついた。これで親睦を深められる上に、会長に牽制を掛けられる。俺って凄く良い人じゃね?全く、普通ここまで面倒見ないって。

 透も良い子だしなぁ、お似合いだと思うんだけど。そもそもなんで振ったのか意味不明だ。


 クラスの出し物、執事喫茶の執事服を試着した。サイズもピッタリで、かなり出来がいい。こういうの得意な女の子って凄いなぁ、と素直に感心する。寝不足みたいで、幽霊みたいな顔色は心配になってしまう。

 でも本当に凄いなぁ。

 クラスの人達も興奮して、写真を撮りまくる。何故だか分からないけど、俺と晴翔、透の3人で並んで撮られた。他にも男子はいるのに……全員で撮ればいいのになぁ。

 まぁ俺も晴翔達との写真は欲しい。スマホを取り出して、誰かに撮って貰おうと思ったのだが……。


 他所を向いてぼんやりしている透を、晴翔が熱心に見つめていた。それはもう、あつ~い眼差しだ。正直こっちが恥ずかしくなるくらい。

 思わず写真を撮ってしまった。


「翼、3人で撮りましょうか?」

「いやぁ?べっつにー?」


 首を傾げる透にニヤニヤしながら答える。撮った写真は保存した。これは「透が好きで好きでたまらない」って顔だよね。これで告白して振ったんだからますます訳が分からない。


「翼、ちょっと」

「ぐえっ!?ちょちょちょ!首は掴んじゃダメだろぉっ!?」


 首を掴まれて後ろに引っ張られる。慌てて向きを変えて機嫌の悪そうな晴翔についていく。


「何を撮りやがった?」

「ととと、撮ってないよ?」


 胸倉を掴まれてガンをつけられる。慌ててブンブン首を振るが、視線が緩む事はない。


「着替えるぞー」


 クラスの男子ががやがやと出てきて、移動している。


「き、着替えよう、と取りあえず!ほ、ほらぁ衣装掴んじゃダメだろ?」

「……」


 俺の言葉にしぶしぶ掴む手を緩めて、ほっとする。

 別室に入って渋い顔で着替える晴翔に、思わずニヤけてしまう。


「まぁまぁ……撮った写真は晴翔に送るから、ほらこれ」

「……」


 写真は、物憂げな色っぽい透。その後ろに熱っぽい眼差しを向ける晴翔。それを見て、僅かに頬を染める晴翔。……透の写真が欲しいようだな。2人で撮ろうとか言えない所がヘタレだよね。

 とりあえず晴翔に写真を送ろうとスマホを操作する。


「あ」

「……?」


 送信ボタンを押した後に気付いた。送り先が透だという事に。俺は爽やかな笑顔でこう言った。


「ごめんね晴翔。間違えて透に送っちゃった」


 半裸の晴翔が走り出して教室を騒がせたのは言うまでもない。




……視点切り替え……


「話をしましょう……あれは今から3日……いえ、7日前だったかしら……まぁ、いいわ。私にとっては昨日の出来事なのだから」

「お、おう……」


 唐突に話し出した親友、越前えちぜん恵梨香えりかに、ちょっとドン引きを隠し通せない。ノリの良い私でもいきなりこられると素に戻ると言うのが道理というもの。しかし、長年鍛えてはいない。すぐに持ち直す。キリリとした表情を作り、親友に向き直る。


「で、今度はどんな美味しいネタなの?」

「これよ……」


 スッ……と提出されたのは服が淫らに乱れた火媛ひえん晴翔はるとという男子のものだった。つい先日の生徒会選挙で見事副会長に当選という快挙を成し遂げた。まぁ、会長には遠く及ばなかったが、副会長に当選したのは凄い事だ。まぁ、木下透が副会長に立候補していたら、確実に跳ね除けられていただろうが、実際は副会長に立候補しなかった。至って地味な事務補佐の役目を買って出ていた。その勤勉さや真面目さがさらなる人気を博しているのだが……まぁ、これは言うまでもないか。

 そして、ついこの前は女生徒を庇って助けたという。彼女はどこまで極めれば気が済むのだろうか。もはや彼女が女性というだけで排除する事は叶わない。

 むしろ「女でもイイジャナイ」という完全に極める者まで出てきている。女が女に恋をしている状態だ。なんとも罪作りなものである。

 しかしまぁ、今は木下透の話ではない。火媛晴翔の話だ。


「こ、こいつぁ……くっ!」


 その写真を見た瞬間……もう、込み上げてくる情熱というか、パッションというか、愛が鼻から溢れ出しそうだった。

 この火媛と言う男、こう……色気が半端ないのだ。気だるさやスッと通った瞳、男気が溢れてきそうな雰囲気。彼が副会長の座におさまれたのも、その容姿が大いに関係するかもしれない。

 そう、彼はとても恰好良いのだ。誰がどう見てもイケメンである。だからなのか、彼は私達の新しいご飯となっているのは言うまでもないのだが。

 だがこの写真はなんだろうか。半裸で、ズボンが今にも落ちてしまいそうで、でも必死に前を向いて走る懸命さ。やっている事は変態チックでマヌケなのに、彼が見せる真剣な眼差しや容姿の素晴らしさで、とても良い写真に出来上がっている。

 やはり新聞部部長は素晴らしい。来年卒業するのが非常に惜しい人材だった。どうやら新人教育にも力を入れているらしいので、後輩の成長に期待したい所。

 スッと恵梨香が別の写真を机に差し出す。


「はうっ……!」


 胸を貫かれた気分になった。

 レジェンドだ。

 さすがレジェンド木下。

 その身に纏った執事服、綺麗にポットを持つ姿。やんわり微笑んだ表情。穏やかな雰囲気、これは―――完璧な執事。

 恵梨香は赤いハンカチを鼻に抑えつけながら、次の写真を置く。

 ―――おう。

 これは、うん。これを撮った新聞部に賞賛を与えよう。

 憂いを帯びた表情、少し潤んだ、その切なげな瞳。

 連射したのだろう、動作が次々にわかる。手袋に手をかけ、片方を口にくわえる。その際、整った唇が開けられ、僅かに舌が見えている。手袋をくわえながら、もう片方を着用する姿。

 そこで目が合ったのだろう、こちらに向く綺麗な瞳が柔らかくなり、微笑を浮かべる。僅かに頬を染め、照れくさそうに顔を僅かに隠すその動作が全て連射されている。


「……高かった。だけど、買う価値はあると思ったわ」


 確かに。これは買わねばいけない代物だろう。もはや伝説と言っても過言ではなかろう。私は食い入るように写真を見つめていたが、はっとして顔を上げた。


「高かったのに、良いの?私に見せて……」

「私と貴方の仲じゃないの」


 ふ、と柔らかく微笑む親友えりかを見て、涙が溢れだしそうだった。大切なアイテムが涙で汚されないように、そっと机に戻す。


「少しだけど、払うわ……」

「いいのよ、共に地獄まで歩んでくれたら、ね」


 にこりと爽やかに笑う恵梨香。それに私も全開の笑顔で答えるしかあるまい。


「ええ、共に墜ちましょう」


 しばらく写真鑑賞をする。他にも、なかなか良い逸材がいるようだ。それは金城翼という男だ。何故今まで気付かなかったのか……視野狭窄に陥っていたらしい。こんなに美味しそうな素材が木下と同じクラスにゴロゴロと。

 金城翼は人懐っこい笑みを浮かべる、ワンコ系アイドルのようなものだろうか。木下や火媛のような大人の色気はあまり感じない。その代り、守ってあげたくなるような、母性本能をくすぐられるような男であった。これは総受けだろう、常識的に考えて。


「豊作ね、これは……」


 エリカの言葉に重々しく頷く。恐らく今世紀最大の幸福な学園に入学したと言えるだろう。こんなに幸せで、残りの人生の色褪せた空気に耐えられるだろうか。否、今の内に堪能して、写真を収集しなければならないだろう。

 私は今全力でバイトしている。恵梨香の家はそれなりに金持ちなのでホイホイ買えているが、私はそうはいかない。恵梨香が代わりに出そうか?と言ってくれることがあるが、もし返せなかった場合や忘れてしまった場合、親友との絆に傷が付きかねない。私はそういうのは好きじゃないのだ。

 今は文化祭や体育祭の写真を大量に収穫しようと貯めている最中である。あんな美味しいイベント、逃す手はない。

 しかも今は、なんだか知らないが会長と副会長が頻繁に熱い瞳で見つめあう事があるという。これはもしかしたらもしかするかもしれない、ともっぱらの噂である。なんという入れ食い状態。これはどれを応援してしまえば良いのか分からない。

 裏取引される漫画も様々なジャンルになっている、まさに混沌。カオスだ。だが、こんなに素晴らしい事もない。誰もが狂喜乱舞し、目を赤くして書き綴る漫画。


「会長の所は劇をするようね」

「なにそれ美味しい」


 白雪姫という劇をするらしい。1日1回、文化祭は3日間開催されるので、計3回。魔女は鏡に話しかけ、最も美しいのは誰かと尋ねる。いつもは魔女と答える鏡がある日「白雪姫」と答えるようになる。魔女はその白雪姫を殺そうと毒りんごを食べさせる。

 なんやかんやで王子がキスして復活するのだが……これはもうキスさせたいだけだろう、とは誰もが考える事である。

 しかも相手役は2年の日向ひゅうがという青年らしい。病弱な感じで、いつも保健室にいる色の白い男だ。あの人ならまぁ、確かに相手役に申し分なかろう。病弱なので、イメージとも合う。

 もうこれ完全に誰かが趣味に走ってんだろ、と思わなくもない。何故男同士なのか。姫はどこ行った。そんな馬鹿な事は誰も喋らない。

 むしろ魔女すら男という噂だ、魔男まだん?いいや、間男まおとこにしよう。と言いだし、間男と白雪姫(男)と王子の話になっているそうな。なんだこのカオス。

 この魔窟とも呼べる文化祭で、果たして無事に生還できるか謎である。だが、行かねばならないだろう。行かねばきっと。死ぬより後悔するのだから。


「やるわよ、まどか」

「ええ、行きましょう」


 友と駆ける、戦場という名の文化祭を。

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