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腐女子達の話。

女の子が暴走してます、ご注意下さい。

「とんでもない事よ、これは……」

「ええ、そうね……」


 越前恵梨香、二宮まどかはとても真剣な表情で斜め下の机をじっと見つめている。その机の上には噂の木下透の写真。穏やかな微笑みはどこか女性的と言っても過言ではない。だからこそ、男だという事にかなりの興奮を覚えたものだった。なのに、木下は、木下は……綺麗な女性でしかなかった。


 お互い、木下が男だからこそ争っていた。だが今はどうだろう?同士、いや、親友と言っても過言ではなくなった。互いの傷をなめ合い、心を癒した。きっと傷付いたのは彼女達だけではないはずだ。


「私たちはなんて空虚な争いをしていたのかしら」


 どこか遠くを見る目で呟く二宮に、越前は扇子で顔を半分隠しながら頷く。木下が女だという事に、何故だか納得する気持ちもある。あれだけ綺麗なんだから女でも不思議じゃねぇよ、と。しかし腐った彼女達の脳内はそれを拒絶していた。


「問題はこれよ」


 ス……と越前が写真を取り出す。その写真には、木下と会長が「相合い傘」を

している姿だった。どう見ても目の保養。真っ直ぐに会長を見据える木下。それに狼狽えて少し目元が赤くなっている会長の姿が激写されている。正直、このシーンを撮った新聞部部長に尊敬の念すら感じる程素敵シーンだ。だが、それは男同士だったらの話だ。男同士だと思っていたなら丼ぶりで飯が3杯ほど進むだろう。

 だがしかし、駄菓子菓子!!

 木下はただの女性。この相合い傘シーンは普通のカップルだ。


 だがどうだろう、二宮の心は何処か凪いでいる。


 その瞳はさながら赤子を抱き上げる母のようではないか。


「私はここに女体化を入れてみようと思う」

「馬鹿な……!」


 二宮の宣言に越前が戦慄を覚える。ついに、二宮が狂ってしまったのだと確信した。越前は扇子を持つ手を痛い程握りしめる。


「心は男、体は女……戸惑う木下、惹かれる会長……」

「……」


 完全に悟りの境地に至った二宮の瞳は穏やかだった。二宮が狂ったのではない。この世界こそが狂っているのだ。木下が女だというこの世界こそ間違っているのだ。


「でも、女なんて……!」


 越前には許容できない。あの薔薇の空間に女など邪道。震える越前の唇にスッと人差し指を添える二宮。そして糸に括りつけた5円玉を揺らす。


「女体化にみえーるみえーる」

「……女に……はっ!あ、危ないわ!危うく引きずり込まれるところだったわ!」

「ちぃっ!」


 越前は背筋が凍る思いがした。まさか二宮が禁術を使ってまで自分の心を取り込もうとするとは思っていなかった。しかし越前は気付いた。二宮の目が腐ィルターによって腐っている事に。


(ふっ……なるほどね。まどか、貴方の気持ち、受け取ったわ!)

(ようやく心得たようね、恵梨香)


 2人は目と目を交わすだけで通じ合った。もはや心と心を分かち合った無二の親友。口ではあんな事を言っていたが、本当の所、二宮の根本は変わっていなかった。


「あ……二宮さん……」


 丁度木下が廊下に通りかかった。伸ばしている途中の短い髪は、今だに少年っぽさが抜け切れていない。そしてその少し伸びた髪が、何故か色香を主張しているのだ。それこそが真の木下の恐ろしい所だった。木下は、二宮を認めた途端頬を赤らめて、目を少し潤ませる。申し訳なさそうに眉を下げて、唇を震わせている。その女性の母性をくすぐる不安そうな表情、仕草……その全てが正義。


「すみません……ずっと謝ろうと思っていたの、ですが……」

「くっ……!」


 その木下の攻撃に膝を付いたのは隣にいた越前だった。まさか木下の色気攻撃がここまでとは。告白した時に知っていた二宮は頬を染める程度に済ませている。


「えっ……!?あ、あの、大丈夫ですか!?」


 二宮ばかり見ていた木下は、隣で膝を付いた越前に狼狽える。そりゃそうだ、いきなり膝を付かれたら誰だって驚く。二宮はスッと木下を手で制する。介抱しようと近づこうとしていた木下は止められてまた狼狽える。これはどういう状況なのかサッパリ分からない、という顔だった。

 二宮はスッと越前の耳元に顔を近づけ、囁きかける。


「分かったかしら?」

「え、ええ……バッチリよ……」


 冷や汗を流している越前は不敵に笑う。木下の真骨頂を間近で見て確信した。


 木下は木下なんだから性別なんてどうだっていいじゃない。


 答えは出た。彼女達はまた裏で暗躍するであろう。2人は高らかに笑いあう。

深刻な突っ込み不足。


不敵に笑いあう少女2人を見た木下「どういう事なんですか……?」

告白の件に関して謝ろうと思っていたら変な反応をされて困っている。

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