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エピローグ:「ブラックホーク‐アライヴ」

クルジシタン基準表示時刻02月10日 午前06時07分 PKF陸上自衛隊サンドワール基地


 夜が明け、そして日は前日と変わらない烈しさで大地にその光を投げ掛ける――――――


 だが、その下では前日とは全く違った光景が広がっていた。装備を解かないままに、宿営地傍のモータープールに居並ぶ武装した車両、その何れもが例外なく弾痕を宿し、そして爆風やら飛散した破片やらでその各所に裂傷やへこみを生じていた。被弾を想定したコンバットタイヤは、混迷を極めた戦場の只中で遺憾なくその機能を発揮したものの、被弾した全てを交換するには基地のストックでは完全に賄うことが出来なかった。従ってサンドワール基地の車両整備班は、エンジンや駆動系に被弾し大破と見做された車両を集め、それらから比較的完調なタイヤを取り外してなお稼働可能な車両に装着するという「共食い整備」で、急場を凌ぐしかなかったのである。それでも、かなりの数の車両が中小破の状態からある程度の「復活」を遂げることができた。


 それら車両の傍で野営し新たな出動命令を待つ自衛隊員たち―――――前日まで死闘の只中に在りながらも、楽園にも似た平穏さに包まれていたPKFサンドワール基地は、その最大の作戦を終えながらも未だ臨戦態勢下に在った。

帰還した隊員たちは即座に装備を解き、四時間の休養を命ぜられた。温水のシャワーを浴び人心地を取り戻したものの、夜食という名目で配られた戦闘糧食に積極的な食欲を誇示する者は、今やさすがにいなかった。戦闘時の緊張で収縮した胃を、出撃前に普通の状態に戻すには、まだ多くの時間が必要だったのだ。


 短い仮眠を終えた後には、警戒任務が待っていた。彼らの戦争は終わったが、かつて彼ら自衛隊員が駆け抜け、死闘を繰り広げた旧都アーミッドでは未だ国王軍と武装勢力との間で戦闘が続いている。その余波が及んで来ないという保証は、この基地の誰にも出来なかった。命令により、または自発的に隊員たちは再び武装して集合し、交替で基地周辺の警戒に当たったのである……そうした緊張状態のまま、基地の隊員たちは再び朝を迎えることとなった。

 その裏側―――――サンドワール基地の医療区画は、作戦が終了した夜半に続々と流入した負傷者を死の淵から救いあげるべく、その創設以来初めてのフル稼働を強いられている。医官や看護士の他、手空きの隊員の支援も仰ぎ、その努力は夜が明けてもなお継続中だった。

 本土の基地とサンドワール基地とを繋ぐ衛星通信回線は、ここでも威力を発揮した。負傷者の治療の様子、負傷者の状態は専用機器を通じリアルタイムで東京の陸上自衛隊中央病院に送信され、サンドワール基地では詳細を把握した本土から直接に指示と助言を受けながらに負傷者の治療を行うことができたのである。しかし設備こそ充実してはいても前線の野戦病院よりややまし(・・・・)という程度の水準でしかないサンドワールの医療区画では数が多く、傷の程度も思い負傷者への対処にはさすがに限界があった。そこでサンドワールでは負傷者でも特に傷の重い者は応急処置を施された後、CH-47輸送ヘリを使い設備の整った隣国の病院まで後送するという方法を取ることとなったのである。隣国に展開する航空自衛隊が、すでに現地で住民と良好な関係を築いていたこともあって、打診とそれに続く受け入れ準備はスムーズに進んだ。


 ―――――自らもヘリコプター作戦の専門家として、先頭に立ち負傷者の空輸任務の指揮を執っていた筧陸将補の元に、今や一番話をしたくない人物から再び電話が入って来たのは、紅い朝日がクルジシタンの荒涼として地平線にその頭を覗かせかけた時のことであった。

 『――――筧司令、すぐにアーミッドにヘリを出してくれ! 王国軍を救援しなければならない!』

 前日はあまりにも居丈高であった鏑木大使の声は、もはや哀願に近い口調になっていたが、それに心から憐れみを覚える筧陸将補ではなかった。

 「では、東京を通じて命令を出して頂きたい。閣下にそのような権限は無いはずです」

 『――――それでは時間がかかり過ぎるのだよ筧君、ここは前線指揮官たる君の裁量で何とか……』

 「事前の折衝と計画による行動ならば兎も角、小官個人の独断で、部下を死地に晒すような命令は、小官には出来かねますな」

 『――――私は君とは日本の現在と将来に対する責任が段違いに違うのだよ! それが理解できない君ではあるまい!?』

 「――――――――!」

 地位を傘に着た言葉―――――それも彼の口調からして地位を傘に着ていることに無頓着であること――――が、筧陸将補の柔和な目元の奥で、感情の火花を走らせた。

 「責任云々は別として!……前日の強襲作戦の結果!……現在我が方には作戦に堪え得るヘリは一機もありません!!」

 『――――――!!?』

 受話器の向こうで、打ちのめされたように言葉を失う大使に貸す耳を、筧陸将補はもはや持っていなかった。叩き付ける様にして受話器を置くのと、補給を終え発進準備の成ったCH-47が始動を始めるのとほぼ同時だった。

 「司令、重傷者の搬送を終え次第、ヘリはすぐに発進させます!」

 「御苦労。そうしてくれ」

 幕僚の報告に頷き、筧陸将補は小休止に足を踏み入れた仮設の本部建物の一室の窓から、飛行場を見下ろした。その先ではすでに、ローターを回転させ始めたCH-47の開け放たれたキャビンへ向け、応急処置を終えた負傷者を乗せた担架が続々と向かい始めていた。担架を運ぶ者には飛行隊の整備員も加え武装した普通科隊員も混じり、その光景は筧陸将補には、戦場で培われた同志的一体感を、文字通りに体現している光景のように思われた。

 先刻、作戦に使えるヘリはないと筧陸将補は言った。彼の言葉は正しい。何故ならサンドワールには、前日の戦闘の結果整備や補修等でアーミッド方面に投入できるヘリなど、現時点ではもはや一機のCH-47しかなかったのだから……

 ……そして唯一飛べるCH-47の使い道は、困難な情勢下でベストを尽くした末に傷を負った勇者たちを、一刻も早くこの忌々しい土地から引き離し、彼らの傷を癒すこと以外に、筧陸将補には考えられなかったから。

 「…………」

 嘆息――――――

 もうすぐ日が昇る――――――窓から朱に染まり切った地平線に目を凝らし、そして筧陸将補は眼を瞑った。

 前日、そして今日に至るまで大量に流された彼我兵士たちの血と汗の結晶――――――赤い朝日が、筧陸将補にはそう思われてならなかった。



クルジシタン基準表示時刻02月10日 午前07時38分 PKF陸上自衛隊サンドワール基地


 日は、すでに高かった。寝台から眼を開けるや、堰を切ったように光が眼前に溢れ出し、それが却って寝床を離れて起き出す意欲を削いでしまう。

 「…………」

 三河 真一二等陸曹は、自分の寝台の上で目を開けた。

 自分はこれまで夢を見ていたのだ―――――少なくとも彼にはそう思えた。

 それまでの夢の中での刻は、闇夜の中、眩しい弾幕の縦横無尽に飛び交う中を、彼自身応戦していたところに至近距離で何者かに銃で撃たれたところで終わり、その後の暫くを静寂と闇が続いた……静寂に取り残されたまま過ごした夢の世界―――――それから彼は、柔らかな陽光と温かい風の舞う中で、それも彼の寝台で目を開けた。

 『起きなくては―――――』

 動こうと思い半身を上げ掛けたところで、彼は首の後ろに違和感を覚えた。酷い疼痛は、その直後に襲ってきた。

 「――――――!」

 首元を抑え、そのまま蹲る――――――そのときに首筋に充てられた分厚い湿布と包帯の存在に漸く気が付く……痛みが大部退いたところで、意を決して寝台の床に足を下ろし、立ち上がった。

 「おー……」

 漫然と歩き、宿舎を出たところで、眠りから覚めたばかりの意識は急速に明晰さを増す―――――その眼差しの先に居並ぶ車両、そして武装を解かない隊員たちの姿を目前にして。

 「おっ」

 上にシャツ一枚の軽装姿の三河二曹の姿を認め、高津 憲次一等陸士は立ち上がった。片や昨日以来待機を続けている重武装、片や病み上がりの軽装―――――そんな両者の眼差しが交差した時、最初に口を開いたのは三河二曹の方だった。

 「何だ。新入りじゃないか。お前も戦ってたのか?」

 「戦ったも何も、命の恩人ですよ。自分は」

 「ああ……そうだったな。礼を言うよ」

 頭を掻き、三河二曹は言った。同じく帰還を果たした高津一士たちが、前線で被弾した三河二曹をヘリのキャビンに担ぎこんだ上に、基地に帰還を果たした際、負傷し治療を受けた自分を寝台に運び込んだことを三河二曹はその時初めて知った。搬送された重傷者が余りに多く、治療用の寝台を開けるために、比較的軽度の負傷者は速やかに宿舎の寝台に戻されたのだ……事実、振り返ってみれば、他の寝台ではすでに起き出していた軽傷者が談笑していたり、あるいはそのまま疲れ切った身体を寝台に横たえているのが見えた。

 三河二曹は言った。

 「……おれ、死んでなかったんだな」

 「死んだ方が良かったですか?」

 「うう……満更でもないかもな」

 「…………」

 三河二曹はズボンのポケットをまさぐり、潰れた煙草の箱を取り出した。一本を出して火を点け、紫煙を勢いよく吸い込む―――――神妙な表情でその様を見詰める隊員たちの視線に気付き、気拙い表情もそのままに未だ本数の残っている煙草の箱を差し出すようにした。

 「やるか……?」

 「いえ……勤務中ですから」

 再び紫煙を吐出し、三河二曹は聞いた。

 「戦闘、未だ続くのか?」

 「少なくとも、おれ達の戦闘は終わった……と思いますけど」

 「自信なさげな言い方だな」

 「すんません……」

 「いい加減……もう止めにしてもらいたいぜ」

 三河二曹は呟くように言った。それはまた、未だ待機を続ける他の隊員も同じ気持ちであるのに違いなかった。

 「そうですね……」

 三河二曹に応じつつ、高津一士は宿舎の一隅へ目を細める。その先では補給班の手により、待機を続ける部隊の一部に朝食の戦闘糧食の配給が始まっていた。その中の複数、否が応にも目立つ特戦群の軍装をした人影を見出し、高津一士はさらに目を細める――――

 「あ……」

 戦闘糧食の配給を受ける一群の中で、特戦群の鷲津一曹の姿を見出した時、大友 拓也一等陸士は我が目を疑う。その大友一士の眼前で、鷲津一曹は温めたレトルトの鶏飯を、袋のまま口に頬張っていた。首から無造作に提げたM4カービンが、陽光を吸い込み刃のように瞬いていた。

 最初に鷲津一曹を見出したのは大友一士だったが、先に声を掛けて来たのは鷲津一曹だった。

 「おう、新入りじゃないか。メシは食ったか?」

 「今からですけど……」

 「昼夜と食ってないんだろ? 一杯食え。今日はもう出撃は無いだろうからな」

 と言いつつも、鷲津一曹の素振りに、休養とか停戦を窺わせる素振りが見えないことに気付き、大友一士は聞いてみた。

 「鷲津一曹は、これからどうするんですか?」

 「おれ達はまた出撃さ。南に行く」

 「南……!?」

 「敵の残存勢力を追撃さ。どうしても抑えて置きたいんでね」

 「自分も連れて行って下さい!」

 「今度のは正真正銘の秘密任務だ。お前たちを連れては行けない」

 「…………」

 言葉を失う大友一士、それに目で笑い掛け、鷲津一曹は最後の鶏飯を口に押し込んだ。

 「いいから休めよ。寝てろって……」

 そのとき、負傷者の後送が一段落しつつも再び発進準備にかかっていた一機のCH-47に、複数の人影が歩いていくのを二人は見た。周囲を基地の警備要員に固められた「神の子ら」の主要幹部たち……その中でただ独り、女性と思しき紫のヴェール姿を見出した鷲津一曹の表情が、驚愕に曇るのを高津一士は見た。

 「あれが……教祖?」

 「そうですけど……何か?」

 「ああ……そうなのか」

 力無く、鷲津一曹は言った。突入の前日、旅行者を装いマウンテンバイクで駆け抜けた下町……そこで出会い、そして擦れ違った女性に、眼前から離れゆく教主はよく似ていた。否……全くの同一人物と言ってもよかった。機上整備員に先導されその姿をチヌークの機内へと運んでいく一団を、神妙な眼差しで見送る内、鷲津一曹の困惑にも似た表情から、次第に明るさが戻っていく。

 「まあ……終わりよければ全てよし……か」

 チヌークのローター回転が忙しさを増し、金属的な爆音が飛行場を圧し始める。「重要な乗客」を乗せたCH-47は、慎重なまでにゆっくりと浮上を始め、そして巨大な機体を西へ翻しつつ飛行場を離れていくのだった。そのとき二人は、そのCH-47に、二機の武装したOH-6Dが随伴する形で上昇、接近してくるのを見逃さなかった。そして三機は編隊を形成し、速度を上げて飛行場から遠ざかっていく。

 鷲津一曹は言った。

 「うちの司令も、東京も、もうこの国を信用してないってことさ……」

 飛行場のもう一方では、一機のUH-60JAがエンジンを轟かせつつ特戦群の搭乗を待っている。十分な弾薬の補充と僅かな休養を経た特戦群の隊員が、飛行場のアスファルトを駆け続々とキャビンへと身を滑らせていく。待機を続けるヘリがそろそろ定員に近付いてきたのを確認するように見、鷲津一曹はスポーツドリンクのパックを握り潰すようにしてドリンクを飲み干した。

 「またな、新入り」

 疾走―――――鷲津一曹は駈け出した。まる一日に及ぶ激戦を経たとは思えない、軽々とした走りであった。次の瞬間にはヘリの傍に達し、そのまま舞い上がるようにキャビンに飛び乗った。ヘリが地上から飛び上がるのとほぼ同時だった。大友一士といえば、その様を呆然と見届け、そして見上げることしかできなかった。

 「…………」

 (かな)わないな……

 驚愕するというより、大友一士は呆れた。モチベーションとそれを維持するバイタリティからして、彼らは違う。

 急激なジェットエンジンの咆哮――――――

 それは空を切り裂き、精鋭を乗せた機体を再び戦闘の地へと導いていく――――――



クルジシタン基準表示時刻02月10日 午前09時43分 PKF陸上自衛隊サンドワール基地


 『――――――武装勢力幹部移送の件は了解した。幹部たちはランビトンの空自基地にしばらく勾留させ、今後の件は十分に検討する』

 「無理なことばかり押し付けて、申し訳ありません。幕僚長」

 『―――――いや、いいんだ。筧君こそ御苦労だった。引き続き幾下隊員の掌握に努めてくれ』

 「では、小官はここで……」

 『―――――待った。筧君にこの場で紹介して置きたい人物がいる。ちょっと話をしてくれ』

 画像音声通信回線を通じた報告、敬令し報告を終えようとした筧陸将補を、松岡陸上幕僚長は呼び止めるように言った。直後に画像が切り替わり、折り目正しい背広姿の壮年男性を映し出した。

 『―――――この度平和維持軍折衝局、クルジシタン担当官を拝命した外務省の西原聡です。任務、ご苦労さまです』

 「筧です。宜しく……」

 西原という名の外務官僚は言った。地位を感じさせない柔和な眼差しと、丁重な口調が、内心で身構えた筧陸将補には対象への警戒を解かせるに十分な好印象をもたらしていた。

 『―――――早速ですが、現地の情勢はどうですか?』

 「アーミッドにおける叛乱勢力と政府軍との戦闘は、未だ続いています……というより早期に終息する見込みは殆どありません」

 『―――――というと?』

 「『神の子ら』は戦争のアマチュアですが、政府軍はそれ以上にアマチュアです。それが却って戦火を拡大させております。もはや介入のしようもありません」

 『―――――わかりました。クルジシタン政府は過ちを犯した……というわけですね?』

 「御明察、傷み入ります」

 喧嘩を知らぬ者同士の喧嘩は、双方が限度を知らぬが故に思わぬ展開を引き起こす……画面の向こうで、西原という人物は現地の情勢をそう察したのに違いなかった。

 西原担当官は言った。

 『―――――実は来週、クルジシタンに行きます。その際筧司令には現地視察の先導をお願いしたいのですが』

 「―――――そうですか、ではすぐに準備させて頂きます」

 『―――――なお視察は、在クルジシタン大使館には事前の通告なしで行いますのでそのつもりで……』

 「ハッ……!」

 驚愕――――――筧陸将補は、それがこの場で圧し殺すに足るものであることを即座に理解した。

 ――――――クルジシタン平和維持軍に参加している諸国間の協議の末、アルデム‐リュラ‐ドルコロイを始めとする「神の子ら」幹部の取り調べと裁判が、紛争には関与していない、比較的法律と被告人の保護意識の進んだ第三国で行われるという方針が公表されたのは、それから一週間後のことだった。当然クルジシタン正統政府はこれに抗議したが、それが被告たちがとうに国外に移送されてしまっている段階で為されていては、もはや「後の祭り」というものだ。

 ―――――報告を終えると、筧陸将補の足はそのまま司令部の外から航空機用の格納庫へと向かう。昨夜以来、そこの主はヘリコプターでは無くなっていた。


 「…………」

 空調の効いた広大な空間に整然と並べられ、本土への空輸を待つ濃緑色の袋……完全に閉ざされ、照明を抑えられた格納庫でそれらを眼前に、思わず背が伸びるのを覚える。

 袋の数は一七……それが電撃的な突入作戦、そしてその後に続く苛烈な撤退戦の最中に生命を散らした自衛隊員の亡骸であることは今更思い返すべくもなかった。

 視線を落としたその中の一つ――――――ロケット弾の不発弾を腹部に受けた状態で搬送されてきた斎藤二尉は、今日の午前二時に、二度と意識を回復しないまま息を引き取った。ロケット弾に貫通された身体の損傷があまりに酷く、搬送された時点でもはや手のつけられない状態だった。基地の医務室で、彼の冷たくなった手を握ったまま、斎藤二尉を前線に送り出した筧陸将補は彼の死を間近に見、そして手を強く握った。任期を終え来月本土に戻れば、母校たる防衛大学校の教官という、自衛官人生の新しい舞台が彼を待っていた筈であった。

 そして視線を巡らせた先のもう一つ――――――筧陸将補が、墜落した友軍を救うべく降下し、集まって来た民兵の大群を前に、絶望的な抗戦の末に絶命した石川二等空曹の変わり果てた姿と対面したのは、今日の午前〇時を回ったところだった。意を決し飛び込んだ戦場……しかし彼は誰も救えず、彼自身の生命もまた、救われることはなかったのである。

 全て自分が送り出したのだ――――――――筧陸将補は眼を瞑り、そして頭を下げた。それがこの場の彼に出来る、精一杯の謝意であり、そして償いであった。結果的に作戦は成功したが、それが何だというのか――――――作戦の過程で傷付き、生命を失った者たちのことを考えれば、結果だけが全てと言ってしまっては、割り切れないものが残るのもまた、事実であった。

 背後に立った部下が、報告した。

 「……司令、本土より入電、特別便がたった今発進したようです」

 「……わかった」

 本土の空自はこれら戦死者の「帰国」に、専用機の派遣を約束してくれている。彼ら「名誉の戦死者」が無言の帰還を果たした時、筧陸将補自身と本土の自衛隊が、彼ら戦死者の名誉をどこまで守ることができるか、それが彼にとって身命を賭すに足る使命になりつつあった。

 踵を翻し、元来た道を戻りながら筧陸将補は思った――――――

 ―――――彼らの戦いは終わった。

 ―――――そして彼らのための(・・・)戦いは、これからも続く。



クルジシタン基準表示時刻02月10日 午前10時24分 旧都アーミッド


 侵入者は去り、その次に侵略者がやって来た。


 新たな侵略者たる国王軍との戦いは夜通しに亘り続き、その過程で「神の子ら」の多くが旧都の各所に離散し、各個に包囲され、文字通りに虐殺された。朝からのニホン人との戦いで、武器弾薬と兵士を蕩尽し尽くしたのが大きく響いた。結果として防戦に必要な武器弾薬は乏しく、それを扱う兵士の数もまたそれまでの戦闘で著しく減っていた。それも、数百人単位で―――――

―――――さらに、ニホン人のとった戦法が、国王軍と戦うにあたり「神の子ら」の立場を著しく不利にしていた。

 「神の子ら」は、ニホン人の空飛ぶ乗物を二機、地上から仕留めることに成功した。それは望外の戦果と言ってもよかった。そのまま墜落した乗物の生存者の回収を企図せず、ニホン人がそのまま纏まった戦力のまま「神の子ら」と交戦を続けていれば、神の子らは旧都を利用した市街戦にニホン人を引き込み、あるいは釘付けにして消耗を強いることができたであろう。あるいは彼らをそのまま「時間切れ」とでも言うべき撤退に持ち込めたかもしれない。


 ……だがニホン人は、敵中に陥ちた仲間を見捨てなかった。

 ニホン人は同胞を救うべく墜落地点に兵力を分散し、拠点すら移動した。それに対応する形で、「神の子ら」の兵力もまた分散した―――――そこに、戦時の意思統一に関し時差と齟齬とが生じた。「神の子ら」主力が旧都北部のニホン軍主力を攻めあぐねている間に、彼らの別動隊が市中に逃れた教主を抑え、同時に同胞救出という目的を達成したニホン人は主力との合流を図り、結果として「神の子ら」は彼らの重装備と機動力に対応できず、ニホン人による彼らの本拠地の「蹂躙」を許す形となったのだ。ニホン人の動きは速く、旧都の隅々を熟知している筈の「神の子ら」は、彼らを翻弄するはずが逆にニホン人の動きに引き摺られ、そこをニホン人の反撃で損害を蓄積させていったのだった。

 そして目的を達したニホン人は速やかに旧都から去った。こちらが唖然とするような、鮮やかな退きぶりだった。

 ニホン人がその仕事を終え、潮が引くように去った後に、彼ら「神の子ら」にとっても最も唾棄すべき敵――――国王軍――――は現れた。それはまるで、衰弱しきった行き倒れの旅人の死期を待ち構えていた野犬の群れ、あるいは禿鷹の群れに見えた。旧都各所に散った兵力の再集結を図れぬまま、「神の子ら」は彼らの全面攻勢を正面から受ける形となった。そして国王軍は、「神の子ら」に負けず劣らず、およそ慈悲というものを知らなかった―――――「神の子ら」、その他住民の別なく、この街に住んでいるというだけで、誰もが国王軍による「討伐」の対象となった。

 その上に、国王軍に内応する者たちの呼応――――――ニホン人との戦闘の最中、ダキたちが与り知らぬところでそれは旧都各所で発生し、おそらくはニホン人に殺されたのと同数の同志が、予期せぬ反乱の巻き添えとなって死んだ。


 ―――――つまりは、この街に生ある者誰もが、一夜にして殺され、奪われ、住処を失った。

 ―――――それが、クルジシタンで後に「ニホン人の日」と呼ばれることとなった忌まわしく、苛烈な戦いの一日の一部始終

 ――――どれくらい、この街を彷徨ったか判らない。

 ――――ただ、自分の生きる意味をのみ考えてきた。

 ――――そして、青年は自分が生きる価値の無いことに気付いた。

 ――――自分の属する組織を滅ぼし、そしてこの街を滅ぼした自分の生きる意味―――――

 ――――熱病に浮かされたかのようなダキの眼差しが、烈光に灼かれ、揺らぎを放ち始めた街道の遥か向こうで止まった。

 荒れ果て、完全に崩れた街路に沿う家々……敗残の身をあちこちに彷徨わせた揚句、ダキはニホン人と戦った最後の場所に戻って来ざるを得なかった。それ以外の場所は、今や完全に国王軍という名の強盗どもの制圧するところとなっている。もはや帰る場所など無かった。

 「車……」

 昨夜の戦闘で派手にひっくり返った無反動砲車、それにあることを思い出し、ダキは歩を早めてそれに近付いた。

 「アル‐ティラ……!」

 半壊した助手席に、誰かの気配を感じ、意を決して開けた扉――――――

 「…………!」

 「ダキ……」

 アル‐ティラ……ダキの忠実な参謀にして、そして身体の一部と言ってもよい少年は、弱々しい笑顔から白い歯を覗かせて笑い掛けてきた。それでも手で押さえた胸の真ん中からは、鮮血が溢れんばかりに滲み出していた。

 「ダキ……生きていたか」

 「アル……お前もな」

 「これを見ろ。ぼくはもう駄目だ」

 頬から急速に失われゆく血色……それを手繰り寄さんとするかのように、ダキは声を荒げる。

 「ばか……これから街を出るぞ。さっさと此処から出て来い」

 ダキの言葉を拒否するかのように、アル‐ティラは視線を逸らした。追い縋るように、ダキは言葉を荒げた。

 「各地に散った連中を糾合すれば、未だ反撃の芽はある! 諦めるな!」

 「……らしくないな。ダキ」

 「なに……?」

 アルティラは笑った。少年らしくない、皮肉っぽい笑みだった。

 「感情を顕わにするなんて……ダキらしくない」

 「…………」

 「……でもぼくは、そんなダキが好きだ」

 「馬鹿やろう……!」

 アル‐ティラの呼吸が荒くなり、その間隔は狭まっていく。それが何を意味するのか判らないほど、ダキは戦馴れしていない訳ではなかった。そしてダキは、この忠実な少年が、いままで自分を待っていたことを悟った。

 「…………」

 思わず延びた手が、死に瀕した少年の頭を抱く。

 腕と胸の中で、少年から生気が次第に抜けていくのを感じる。

 そして―――――ダキの胸の中で、少年は微笑みながらに死んだ。

 「アル‐ティラ!……すまない」

 それに対し感情をぶつける意志を、ダキは持たなかった。

 ―――――さらにどれ位歩いただろうか。

 「…………」

 半壊し、空洞のようなその内部を露わにしたかつての邸宅……そこに折り重なる様にして横たわる人々の骸を目にしたとき、腹心の死を見届けたダキの足はそこへ向かう。だが尋常ならざる体力と精神の損耗は、彼の歩みをその半ばで止め、そしてダキは膝から崩れるようにして、前へと倒れた。

 「…………」

 みんな死んだ―――――

 死んだ―――――

 涙が流れ、汚れた頬に筋を作った。それを拭うこともできず、かつては民兵の首領であった青年は死の淵へと赴こうとしている―――――

 「リュラ……生きるがいい……生きて、俺たちを精一杯呪うがいい―――――」

 声にならない声を、最期の言葉と決め、ダキは眠りに就くことを決めた―――――永遠に目覚めることの無い眠りへと―――――

 「…………」

 薄れゆく意識の中で見出す地平――――

 陽炎に揺られ、ゆっくりと迫り来る影――――

 人影を、その時ダキは見出した――――

 ゆっくりと迫り来るそれに、以前に来た南の港で見覚えのある、あの忘れようもない姿を見出した瞬間―――――

 「―――――――!」

 何かを叫びかけたところで、ダキの意識は完全に消えた。

 「……こいつです」

 現地人の護衛に言われても、(あるじ)は無反応を保っているように護衛の人間には思われた。おそらくは主の顔全体を覆う仮面が、感情を勘繰らせない役割を果たしていたのかも知れなかった。

 仮面―――――それは禍々しく、そして息を呑むほどに美しい。

 陽光を吸い込んで輝くそれが身を屈め、そして倒れたまま動かない青年を凝視する。

 銃を構え、護衛が言った。

 「まだ息があります……ひと思いに殺しますか?」

 「…………」

 沈黙―――――それを訝しんだ護衛がさらに口を開こうとしたとき―――――

 「……買おう」

 「え……?」

 「買う……幾らだ?」

 「旦那……奴隷じゃないものに値段は付けられませんぜ?」

 「……じゃあ、私が値段を付けることにしよう」

 不意に鳴り出した断続的な電子音―――――その源は仮面の男の懐。

 無言で男は懐に手を伸ばし、そして護衛にとって見慣れぬものを取り出した。

 通話スウィッチを入れ、耳許に充てた「携帯電話」―――――男が何処とも知れぬ異国より廻ってきたそれを「商売用」に使い始めて、まだ時はそれほど過ぎてはいなかった。

 「私だ……」

 『主席商館長(ヘル‐カピタン)、港の爆破準備が整って御座います。脱出の用意を……』

 「我らの関与を匂わせる全ては、消したのであろうな?」

 『ハッ……全て処分して御座います』

 「ならばいい……すぐ行く」

 受話器の向こうで、微かに聞こえた一発の銃声―――――それが仮面の男の鼻を哂わせた。

 スウィッチを切り、護衛に青年の身柄を回収するよう命じる。それから護衛を従え暫く歩いた先に、一台のトラックと武装した一団とが待っていた。トラックの長らしき男が、仮面の男に言った。強い顎鬚に目鼻立ちの整ったその容貌は、明らかに現地クルジシタン人のそれではなかった。

 「どうします? 主席商館長(ヘル‐カピタン)?」

 「引き上げだ。飛行場に向かうぞ」

 全員の搭乗を確かめ、いざ自身が助手席に乗り込む段になり、仮面の男は顧みる―――――

 仮面に覆われた眼差しの先―――――

 荒涼―――――

 生命や文明の存在など、もはや欠片も感じさせない廃墟の連なり―――――

 「―――――此処も、『失われた世界(ロストウェルト)』へと変わり果てたか……偽りの神しか信じられぬ者どもには当然の末路だな……」

 「は……?」

 「何でもない……行くぞ」

 動き出し、悪路に揺れるトラックの車内で、仮面の男の思索は廻る――――

この国からは、絞れるだけ絞り取った。もはや用は無い―――――

 植民地にする価値もない、辺境の最果ての地―――――

 そして(てい)のいい顧客――――「神の子ら」の瓦解もまた、以前から予想できたことだ。


 だが――――――

 彼らが内より崩れるより前に外から崩れたのは、やや想定外だった。

その一因―――――

 旧都に乗り込むや、わずか一日で「神の子ら」を粉砕した武装勢力―――――

陸空より柔軟な機動を以て暴徒の攻勢に対処し、最後には見事な撤退すら演じて見せた謎の武装勢力――――

運転手が言った。

 「主席商館長(ヘル‐カピタン)、ガロスたちの件ですが……」

 「見付かったのか?」

 「それが……死んでおりました。全員」

 「フム……」

 顎を摘み、考え込む仕草をしてみせる。それを、発言を促す仕草と取った運転手は、続けた。

 「見事な射撃ですよ。全員奇襲を受け、反撃する間もなく斃されたようです」

 「ガロスたちを殺した連中が、教主を連れ去ったとでもいうのか?」

 「おそらくは……」

 どうします?……と言いたげに、運転手は横目で仮面の男を見た。旧都での戦闘の混乱に乗じて教主を拉致し、こちらの傀儡とする計画はこれで水泡に帰した。これがもし上手くいっていれば、我々は「神の子ら」を乗っ取って植民地化の尖兵とし、さらには辺境の植民地化を渋る「本国」より本格的な支援を引き出せた筈なのだが……「神の子ら」の壊滅により、今後のクルジシタン情勢は今や完全に混迷を極めている。

 仮面の男は思った―――――

 ニホン人―――――やつらは……何者だ?

 「興味深いな……」

 「何か……?」

 ハンドルを握る部下の問いかけに、仮面の男は不気味なまでの沈黙で応じた。

 トラックの向う先―――――峻嶮な山地帯。

 巧妙に隠蔽された飛行場では、彼の「本国」よりの召喚命令に応じた彼を迎えるために差し向けられた輸送機が、仮面の男を待っている。



クルジシタン基準表示時刻02月10日 午前10時30分 PKF陸上自衛隊サンドワール基地


 「はぁーあ……」

 早朝のフライトを終え、村上士郎二等陸尉はパイロットの待機室に足を踏み入れた。

 隣国の国境線まで、およそ一時間のフライト―――――だが重要人物を乗せた輸送ヘリの護衛任務というその種類は、想像以上に操縦士の神経を擦り減らす。特に、前夜の激戦から幾許もなく、急速すらまともに取れなかったあの状況では。

 手に提げたヘルメット入れをロッカーに仕舞う。村上二尉が、人の気配に乏しい待機室の雰囲気に気付いたのは、その時のことだった。

 「そうか……」

 思い当たる節はあった。先日の作戦でヘリを撃墜され、飛行隊は四名の操縦士、同数の機上整備員を失った。彼らの内一人たる操縦士の嘉津山二等陸尉は救出され、さらには機上整備員として作戦に参加し、別の操縦士救出を期して地上に降下した空自の救難員が、激闘の末一名救出されたものの、二人何れもが瀕死の重傷で、朝の内に隣国へと後送されてしまっている。お陰で唯でさえ余裕があるとは言い難い搭乗員と機材のローテーションは、些か手狭になってしまっていたのだった。

 「仕方がないよな……」

 事実、彼自身一時間後に新たなフライトを控えている。旧都アーミッド方面まで進出しての偵察監視飛行。それまで短い仮眠こそ取れるが、シャワーを浴びて着替えをするにはあまりに短い時間であった。

 さらに歩を進めた先、応接室のソファーに、濁った寝息を聞く。恐らくは自分と同じく、何処かへのフライトを終えた操縦士なのだろう……思考を廻らせつつ、村上二尉は寝息の主を起こさないよう、冷蔵庫の扉を開けた。ドーナツが三つ、紙皿に盛られた状態で網棚に収まっていた。それを取り出しつつ、目でコーヒーを探す。流し台の片隅で、ケトルに満たされたコーヒーを見付けるのに、まる十秒程の時間が必要だった。

 「…………」

 保温状態にされたコーヒーを、コップに満たしたところで、ソファーの方向で何かが蠢く気配を感じる。毛布を肩に纏ったまま半身を起こした飛行服姿の女性には、見覚えがあり過ぎる程にあった。

 「何だ……谷水さんじゃないか」

 髪こそ乱れてはいたが、ソファー越しに村上二尉を見詰めたのは、紛れもないミラーグラスの輝き―――――思えば、その向こう側の目を、村上二尉はこれまで見たことがなかった。そして村上二尉は、彼女が眠るときにすらミラーグラスを外さないことに、内心で驚愕した。

 ニヤリと笑い、谷水二尉は言った。

 「護衛任務、ご苦労様。コーヒー、淹れてくれる?」

 「畏まりました。機長殿」

 おどけた口調で応じつつ、ケトルのコーヒーを別のコップに並々と注ぐ。手ずから渡されたそれを、両手で庇い様に持ち、少し口を付けて谷水二尉は言った。

 「戦況、どうなってるの?」

 「武装勢力はもう終わりみたいだ。政府軍の攻撃で、連中の生き残りが三々五々アーミッドから抜け出し始めているらしい」

 「最初からそうしてくれりゃあ、みんな死なずに済んだのにね」

 「酷い話だよ……まったく」

 彼らの批判の対象は武装勢力ではない。それまで軍事作戦に亘る全てを彼ら平和維持軍に依存し、終いには漁夫の利を狙って独断で兵を動かした国王軍にあった。

 「村上、あんたの次のフライトは?」

 「一時間後」

 「ふぅーん……」

 納得したように頷き、谷水二尉は立ち上がった。

 「さてと……行かなくちゃ」

 「何処へ?」

 「アーミッド」

 「本当か?」

 村上二尉の表情に、驚愕の色が浮かぶのを見て取り、谷水二尉は言った。

 「政府軍のお偉方を、向こうまで乗せていけって……」

 「拒否できないのか?」

 「負傷者の後送はあらかた終わっちゃったから、上としては放置するわけにも行かなくなったみたいね」

 「馬鹿な……向こうには、未だ敵がいるっていうのに……!」

 「心配してくれるのね。ありがとう」

 ロッカーから装具を引き出しながら、谷水二尉は言った。

 「いや……そういうわけじゃ……」

 「気持ちだけ、もらっとくわ」

 困惑する村上二尉に、谷水二尉は笑い掛けた。間近に接した者を安心させる、それは不思議なまでの不敵さを漂わせていた。

 ――――不意に、ヘリの爆音が待機所の直上を航過していくのを感じた。



クルジシタン基準表示時刻02月10日 午前10時32分 クルジシタン南部。沿海部上空


 『目標視認! あれは……火災発生の模様!』

 操縦席からの報告に、機上の男たちの視線が一斉に外の海岸線へと集中する。コバルトブルーと砂色のコントラストを辿った先では、何処から生じたとも知れぬ黒煙が、蒼空へ向けどす黒い柱を突き立てていた。

 「…………」

 無言のまま、鷲津一曹は双眼鏡を覗いた。最大倍率に設定した双眼鏡のレンズの向こうでは、炎の渦に絡め取られ、そして崩れゆく倉庫や家屋の様子を、手に取る様に窺うことができた。

 それまで、鷲津一曹たちの搭乗するUH-60JAに合わせる様にして横を飛んでいたもう一機のUH-60JAが、不意に増速し、そして黒煙の麓へ向け高度を下げていくのが見えた。分隊指揮官の一等陸尉が、操縦士に言った。

 『隊長機を追ってくれ』

 『――――了解。降下する』

 機体が下方へ傾き、そして速度が上がるのを身体で感じる。それから完全に地上の海岸線の、波の動きすら鮮明に見出せる低空まで降下するのに、あっという間の出来事だった。

 向かう先は、未だ「神の子ら」の支配下にあるクルジシタン南部の港湾。

目標は、すでに身柄を確保した教主と並び、最重要の確保対象とされた謎の「仮面の男」―――――アーミッドにはいなかった彼が、未だそこに潜伏している可能性こそが、PKF陸上自衛隊の司令部をして特戦群を急派せしめる動機となった。そしてこの「仮面の男」を抑えたときにはじめて、PKFは「神の子ら」の謎に包まれた背後を洗い出すことができるであろう。

 直下に影を従え、低空を駆ける濃緑色の機影―――――

 黒煙を縫い、前方に延びる道路―――――

 その路上に湧く、無数の砂煙―――――

 『―――――こちらコアファイター、港湾北部に不審な車両三台を視認。兵員輸送トラックと思われる』

 『―――――ホワイトベース了解。直ちに停止させ、乗員及び積荷を確保せよ』

 『―――――了解!』

 海上を舐めるように、二機は飛ぶ。二機のUH-60JAはそのまま接近し、互いの機に搭乗する兵員の顔すら、容易に窺える距離にまで迫っていた。

 『―――――リーダーより各員へ、突入準備。突入準備』

 一番機に搭乗する御子柴三佐の声を聞く。隊員たちは無言のままM4カービン、あるいは狙撃仕様の64式小銃に弾倉を差し込み、そして膏管を引いた。ミニガンに取り付いた機上整備員がドアから身を乗り出し、そして下方に睨みを利かせる。

 『―――――突入一分前』

 それまで開けっ放しの機内に吹き込んでいた湿っぽい潮風の匂いが消え、乾いた空気の匂いに取って代わられたそのとき――――――

 上昇―――――

 急降下―――――

 あたかもジェットコースターを彷彿とさせる縦列編隊でそれを為した直後、二機のUH-60JAは編隊を解き、車列の前方と後方を遮る様にして空中に止まった。

 メインローターがその獰猛な回転で脆い地表を掻き混ぜ、期せずして湧き上がる砂の嵐―――――

 車列が止まり、そして運転席と荷台から続々と武装した人影を吐き出す――――――

 人影が、ヘリに銃を向けた。

 銃?――――――否、ロケット弾!

 ―――――その瞬間的な判断が、自らもM4カービンを構えた御子柴三佐に引鉄を引かせた。

 「――――――!」

 火を吐く銃口――――――睨んだダットサイトの真ん中で昏倒する人影。

 倒れ際に放たれたロケット弾が、歪な白煙を引き天を突く。

 一斉射撃―――――

 咆哮するミニガン――――――

 正確極まる狙撃――――――

 もはや遠慮や逡巡などない――――――

 敵の反撃は、完全に沈黙する――――――

 『降下!』

 御子柴三佐の指示が通信回線に飛ぶ―――――

 動揺するヘリから、比高3メートルの差をものともせず飛び降り、そして二人一組で駆け出す特戦群―――――

 一人はM4カービンを構え前方に展開。応戦してくる障害を排除。

 もう一人は武器をUSP自動拳銃に持ち換え、昏倒している敵兵に止めを刺しつつ駆ける。

 軽快な射撃音の度に、反撃の(いとま)すら掴めず倒されゆく敵、また敵。

 鷲津一曹は二人を倒した。その二人目をM4カービンの一閃で倒すのと同時に訪れる完全な沈黙……制圧を終えた特戦群隊員が、なおも警戒を解かず四方へ向け銃を構えている。

 「全目標排除完了グラウンドオールグリーン!」

 三台目の、分厚い幌に覆われた荷台を、一人の隊員が指差した。御子柴三佐が手信号で状況報告を促す。

 『―――――人間の気配がする』

 『―――――了解』

 御子柴三佐が、無言のまま鷲津一曹を指差した。御子柴三佐が何を意図しているかぐらい、鷲津一曹にはそれだけで判る。

 閃光手榴弾を取り出し、鷲津一曹は慎重にトラックへ歩み寄った。

 「―――――!」

 ピンを抜き―――――

 隙間から荷台に放る―――――

 一瞬の間―――――

 烈光―――――そして破裂音。

 パァンッ!!!――――――――

 幌が剥がされ、鷲津一曹は一瞬で荷台へと飛び上がった―――――

 「―――――――!」

 両手で顔を抑え、身を屈める人影―――――

 突進する鷲津―――――

 その気配を察した人影が、ナイフを抜いた――――

 大きい――――彼我の体格差に絶句するのも一瞬。

 乱雑に振り回され、鷲津一曹自身に向けられたそれを、懐に飛び込むことで無力化し、腕を掴んで投げ、そして抑え込む―――――

 床に落ち転がるナイフ―――――

 「確保!」

 うつ伏せに抑え込んだ人体に力を籠め、鷲津一曹は叫んだ。

 髭面の、大柄な男だった。

そして神の色は勿論、肌の色も身体つきもクルジシタンの人間とは明らかに違った。

 クルジシタン人とは、明らかに違う―――――それが、特戦群に制圧された車列を構成していた男たちからから見出せた全てであった。つまりは、特戦群はそれ以上を得ることが出来なかった。

 

 特戦群にとって、この場の、唯一の収穫―――――後ろ手に縛られ、その場に座らされた男は、彼の仲間を殺し、彼を捕えた奇怪な連中を無言のまま見上げた。人間的な温かみに欠けた、敵意に溢れたその眼差しは、同贔屓目に見たところで隠しようがなかった。

 一方、捉えた男を冷厳に見下ろし、御子柴三佐は言った。

 「お前は誰だ?」

 「…………!」

 黙秘――――それも攻撃的な。しかしそれに気圧されるような人間は、特戦群にはいない。

 「お前は、誰だ?」

 一言一言を噛み締めるように、御子柴三佐は聞いた。相手の沈黙を噛み締めるように相手を睨み、そして御子柴三佐はこれ以上の尋問を止めた。

 「まあいい……素性を聞くのは基地に戻ってからだ。時間は十分にある」

 『――――ホワイトベースより入電、武装勢力の大部隊が接近中。離脱の要あり』

 「…………」

 ヘリからの報告に嘆息し、御子柴三佐は離脱を命じた。引っ立てられていく男の収容と部下全員の搭乗を見届け、最後に御子柴三佐が搭乗する。直後に二機のヘリはほぼ同時に上昇し、そのまま北方へと針路を転じた。

 『―――――コアファイター、任務終了。帰還する!』

 そのとき―――――――

 気の緩みか、捕虜となった男に対する全員の注意が薄らいだ瞬間―――――

 「…………!?」

 「共和国にキズラサの神の恩寵あれ!!」

 絶叫――――――

 体当たりで監視の特戦群隊員を内壁に弾き飛ばし、そして男はキャビンから外界へと跳んだ―――――

 

 「――――――!」

 絶句――――――

 ヘリから飛んだ人影は、紛れもなく先刻に自分が制圧した男だった。

 上空から500メートル下方の地面へ向かい脱出を試みた人間の運命を知らない者は、この世界に一人としていない。並行して飛ぶヘリから飛び出し、下界へと落ちていく男を、鷲津一曹たちはヘリの機上から唖然として見送った。正確に言えば、見送ることしかできなかった。

 なんて奴だ……!

愕然とし、鷲津一曹は男の姿を呑みこんだ地上を見下ろした。男の姿は空から完全に消え、あとは機内に吹き込む熱い気流が、荒天下の海原のように機内に充満していた。それでも地上で男を待つ運命を悟ることのできない者は、この場には一人としていなかった。

 『―――――コアファイターよりホワイトベースへ……捕虜は自殺、自殺を図った模様』

 操縦士の、基地へ向けた苦渋に満ちた報告を聞きながら、鷲津一曹は呆然として空を仰いだ。

 そのとき―――――

 「――――――!?」

 すでに中天に達した太陽を背に、通過する影が一つ――――――

 此方を睥睨するかのような爆音―――――

 あれは……何だ?

 飛行機だった。双発のプロペラ機……過剰なまでに太い胴体から、大型の輸送機だと思った。

 だが――――――何処から?

 「御子柴三佐、上空―――――」

 『―――――こちらも視認した。あれは……』

 「あれは……?」

 『―――――奴だ。行き違ったか……』

 「仮面の男」か……遠ざかりゆく機影を目で追いながら、鷲津一曹はその名を脳裏で反芻する。だが……反芻する度に高まっていく胸騒ぎは、一体どうしたことだろう? 特戦群の隊員とて万能ではない。特に、来るべき未来を正確に予知することにかけてはそうであった。

 その未来――――――

 「仮面の男」――――その固有名詞が、不気味な響きを以て彼ら特戦群に再び迫って来るまで、残された時間は決して多くは無かった。あるいは、陸上自衛隊特殊作戦群(SFGp)と、異世界を揺るがし、支配しようと企む「影なる者たち」との戦いは、この時点ですでに始まっていたのかも知れない。



クルジシタン基準表示時刻02月10日 午前10時37分 PKF陸上自衛隊サンドワール基地


 ――――本土への無言の帰還を前に、基地の隊員たちは、17名の死者に最後の別れを告げる機会を与えられた。手空きの者だけという条件こそ付いてはいたが、結果的に基地の全員が格納庫前に列を為し、彼ら戦死者に別れを告げたことになる。

 「大友 拓也一等陸士、入ります!」

 かつては航空機用の格納庫だった広漠たる空間は、この基地にしては異例なまでに空調が効いていた。それこそ、肌寒さすら感じられる冷たさだった。だが整然と並べられた遺体の列を前にして、それは一瞬で感じられなくなった。

 敬礼――――――その姿勢のまま、大友一士の眼に、次第に湿ったものが滲み始める。

 肩が、そして足もとが震えた。

 みんな死んだ。

 しかし自分はこうして生きている。

 その理由を、自分はこれから問い続けることになるのだと、大友一士は思った。

 それも、生ある限り―――――

 生き続ける――――――確信とも決意とも付かぬ意識に促されるがまま大友一士の足は死者たちの列から離れ、そして遠ざかって行った。


 「高津 憲次一等陸士、入ります!」

 前の人間と同じように、彼は敬礼しようとして、やめた。そして彼は、死者たちの列をまじまじと見つめた。

 生還して初めて、彼は自分の生きる意味が判らなくなった。だがそれが、一過性の逡巡であることを、彼は知っていた。

 だが……その逡巡を超えた先に待っているものが何か、彼は図れずにいた。

 もう、前日の自分には戻れない―――――そういう経験を自分たちはした。

 言い換えれば、今の自分は、前にしか進めないのだ。

 前に進む―――――

 その先で待っている何かを、手に入れるために―――――でなければ、もう前へ進めなくなった仲間たちに、失礼じゃないか。

 突き動かされるように上がる手―――――

 敬礼―――――それから踵を返し元来た道を戻る足取りは、早かった。



 クルジシタン基準表示時刻03月28日―――――


 クルジシタン王国政府は、「独力による」国土全土の「平定完了」を宣言―――――


 「神の子ら」は解体され、アーミッド戦の結果捕縛され国外に移送された幹部たちは、そのまま無期限の国外追放処分とされる。国内法制度の不備を理由とした幹部層の国外移送で失墜した体面を取繕い、長年に亘り煮え湯を飲まされた叛逆者どもへの復讐心を満足するにあたり、王国の保守勢力が打ち出せる手は、結局のところこれだけでしかなかったとも言えた。だが、内通の功績により一時は内務副大臣の位を与えられたグラデス‐ロード‐ドルコロイが、それからわずか三ヶ月後に謀反の嫌疑を掛けられ、位を剥奪され処刑されたのは、旧支配層の、「神の子ら」に対する復讐への意欲が満たされていなかったことの、何よりの現れではなかったか?


 そして―――――

 クルジシタンPKFはその役割を終え、土木事業、民生向上、教育環境整備等の本格的な戦後復興事業を担う民間企業及び非営利組織に、その国土復興の主力の座を譲ることとなった。


 後に、復興を遂げ再び王国の首都に返り咲いたアーミッドの街角―――――

 その唄が、何時誰によって唄われ始めたのかは判らない。

 だが、何処で唄われるようになったのか、すぐに判った。

 復興に取り残された街の片隅―――――

 今は使われなくなった街道に、未だその身を横たえるヘリの残骸―――――

 その奇妙な唄は、そこを遊び場とする貧民街の子供たちの間で生まれ―――――そして時を置き、街中の子供たちの間に広まった。








 五年後―――――




クルジシタン基準表示時刻02月09日 午後12時37分 王国首都アーミッド 「茶店街(チャイロン)



 ブラックホーク落ちた

 ブラックホーク落ちた

 街の真ん中に落ちた

 神の子の街に落ちた



 唄が、聞こえて来た。それは幼い唄声の反響だった。


 小路の左右を天空まで塞がんとするかのような高楼が、壁の様に続いている場所では、道自体が複雑に入り組んでいることもあって歌の源すら判然とし難くなっている。それでも歌は続き、その上に何処かで戯れる子供たちの嬌声が重なってきた。今自分が歩いている場所に近い何処か――――男は、何気なく空を見上げた。空は濁り、街の各所から上がる濃い煙が、晴天である筈の素顔を覆い隠してしまっている。あるいは小路から見上げる街の全容すらも……


 干し煉瓦の平屋、あるいは二階建ての上に、さらに上層へ建て増しされた高層住居の連なりによってその一角は形成されていた。単に一軒だけならば崩壊の危険が濃厚なそれは、その同類が隙間なく横に、それも区画を跨いでまでも広域に居並んでいるが故に、横同士の支えによって辛うじて均衡を保っていると言っても良かった。


 すその長い上衣にズボン、頭全体を覆う白い巻布――――およそこの国クルジシタンの、一般的な成人男子の衣装をしたその男は、只所在無げに小路を歩いているように見える。だが注意深く見れば彼の履いている靴が現地特有の草履ではなく、より文明の進んだ地で広く履かれるような紐靴――――言い換えれば、シューズー――――であることに気付く筈だ。それは、表面上は全土を平定し、漸く異国の文物を広く受け入れ始めたこの国では未だ未だ市井に膾炙していない風俗ではあった。

 この国の場合、考えようによってはそれは危険な行為とも言える。何故なら、つい四年ほど前までこの国を支配していた暴力と殺戮の嵐の余韻として、「上等な」靴を履いている奴がいる。あの靴が欲しい、というただそれだけの理由で人殺しをすることに躊躇を覚えないような心根の人間が、この街角には少なからずいるのだから……だが男にとってこのトレッキングシューズは、この街で自由に走り回る上で、決して妥協できない「装備」であった。極力目立たない色柄を択んではいるのだが……



 ニホン人死んだ

 神の子もたくさん死んだ



 儚げな唄声を背に歩を進める内、それまで二階以上で棚引く程度であった煙が、まるで燻製炉の中のような勢いで階下まで達し、濃厚な臭いを以て男の前方に広がり始めた。炊事用の薪、茶葉を煎る鍋、水煙草の炭火、乳木や蛇香を煮詰めた炉……それら以上に危険なウラートや阿片を煎じる炉……それらの織り成す、生活と退廃の交差した濃厚な匂いが、砂埃と煙に乗って男の前に立ち塞がる。頭上で蜘蛛の巣のように交差する渡り板や洗濯物を掛けた紐、干物を淹れた籠すら、見えない程の埃の壁――――それらからも超然として歩を進める男の傍――――

 「…………?」

 煙の棚引く街角の一点に認めた人影に、男はそれまで厳つく細めていた眼を見開くようにした。頭の天辺から爪先までを緩やかに覆う紫のヴェール姿……それに男は見覚えがあった。紫のヴェールは、上空より微かに注がれる陽光を透かし、成熟した女性の曲線美すら男の眼前に浮かび上がらせている。しかしその美観に、男が感銘を覚えたのはそこまでのことであった。


 誰だったかな?……紫のヴェールと擦れ違い、歩を進めつつ男は考える……煙の完全に霧散した先、牛や驢馬の曳く荷車や老若男女の行き交う大通りに面した茶店から、男の姿を見出した現地人姿の一人が手を上げた。男は安堵の息を吐き、皮を張り合わせた天蓋の下、彼と同じ卓に腰を下すのだった。卓の下に目を転じれば、その男もまた衆目に付かぬようトレッキングシューズを履いているのが判るかもしれない。

 「奴は何処だ?」

 「三十分前にあの店に入って行った。向かいのあの建物だ」

 「女か……」

 大通りの向かい、二階より掲げられた「売春宿」を意味する赤い看板に、二人は同時に苦笑した。老人の店主が、注文を取りにやって来た。

 「甘茶(チャイ)を――――」

 それだけを、白い巻布の男は言った。注文……とは言っても此処で飲めるものはそれぐらいなものだ。注文を待つ間、街角を注視していた仲間が言った。

 「鷲津、奴だ」

 白い巻布の男は首筋を抑え、声を潜めた。汚れたスカーフの下に目立たぬように巻かれた喉頭式のマイク――――

 「俊二、聞いての通りだ。準備はどうだ?」

 『――――こちら高良。目標を視認。準備よし』

 「…………」


 さり気無く、二人は卓の上に銅貨を置き、立ち上がった。「売春宿」から背を屈めて出た人影が、遠方の人混みに向かうのを見る。それはアーミッド郊外に抜ける南門とそれに付随する市の方向だった。さらに言えば「王立国際空港」にも近い。つい四年前まではサンドワール基地と呼ばれていた場所――――

 「行くか―――――」

 二人は天蓋の下から出、灼熱の支配する大通りへ歩き出した。


 路地裏から一転、燃え上がる様な烈日の下――――



 それでもブラックホークは生きている

 それでもブラックホークは生きている

 ブラックホークはまだ生きている


 ――――唄が、また聞こえて来た。




ブラックホーク‐アライヴ 終


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