7 拐
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一日でこんなに多くの方が読んでくださって感激です!
ヒロインが高校生になるまでスピード出して行こうと思っています。
ということで、誘拐された翼ちゃん。
犯人は誰だ!?
「こんにちは、お嬢さん」
誘拐犯のボスは、母の小説の編集担当の女性だった。
……ひねりないなぁ。
「あんたたち。外を見張ってなさい」
「へいへい」
「人使いの荒いばばぁだな(ボソ)」
「ちょっと!聞こえてるわよ!」
二人はやる気なさそうに部屋の外へ出て行った。
「何であんたを連れてきたか理解できていないだろうから、教えてあげるわ」
二人が出て行ったあと、頼んでもいないのに話し出した。まぁ、ガムテープで口を塞がれて離せないのだが。
話したかったのだろうか……。
「あたなはね、あの方たちにとって邪魔な存在でしかないの」
あの方たちとは、十中八九、父と母だろう。なんせ、家に来るたびに邪魔そうに私を睨んでいたのだから。
しかし、それだけで誘拐なんてことをしでかすのだろうか。
「あなたが居なければ先生はもっと小説を書けた。あなたが居なければ、勝正さんは俳優に復帰できた」
……どうやら二人の狂信者らしい。
全く、八つ当たりもいいところだ。
そもそも、父の引退は頬の矢を受けたからで(現代でどうやって矢を受けるのかという疑問は残るが)私のせいではないし、母は今も執筆している。まぁ、私を生む前はもう少し頻繁に執筆していたらしいが。
そんなことを言っても、この狂信者には通じないのだろう。
この類は自分が絶対的に正しいとしか思えない人種なのだ。意見をしたところで逆上されて終わりだ。
――しゃべれないけど。
といったことを考えている間に、私への文句は言い終わったようだ。
「存分に苦しみを与えて始末してやるわ」と言って、私の髪の毛を掴み、工事機材の置かれた場所まで引きずり、放り投げた。
顔面から倒れるのを防ぐために空中で反転し、何とか背中から落ちた。
金属が背中を打ったが、我慢できない痛みではない。
編集の女性はにやりと笑い、そばに転がった鉄パイプを拾い、振り上げた。
私はその光景をじっと見つめた。
――――大丈夫。痛い事には慣れている。
しかし、それが振り下ろされることはなかった。
叫び声とともに、銃声が轟いたのだ。
「ちっ、あの馬鹿ども。何やってんのよ」
編集の女性は悪態をつくと部屋から出て行ってしまった。その際、しっかりと鍵をかけて行った。
当分の間、危機は脱したらしい。
小さく息を吐いてよっこらせっと両手をついて立ち上がる。
ドアに外から鍵がかかっているので、逃げ出せない。窓も、ここは三階なので逃げ出せない。
となると、少しでも時間を稼がなければ……。
私は部屋を見渡し、工事用の資材を見て頷いた。
マイペース翼ちゃん(笑)。
もう一話続きます。
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