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時間があいたので前回までのあらすじ。
体育祭が終わった。
不幸男、怪我した。
不幸男、告白した。
不幸男、何故か翼の家に泊まる。
不幸男、裸見られた。
不幸男、翼の弟君に出会った。
不幸男、憧れの俳優が翼の父だと知った。
なんだか不幸男が主人公になりかけてますが、主人公は翼です!
では、どうぞ。
※後書きの『ミント黄門』について内容変更。12/24
道着から水浴びをして着物に着替えたので、朝食の膳を持って歩いていると、何やら叫び声が聞こえた。
先ほどとは違い恐怖の叫び声ではなかったので、大地と話が盛り上がっているのかもしれない。
弟は少し人見知りのある所があるから、仲良くなれたようでよかった、よかった。
部屋の前につくと、大地が気付いて襖を開けてくれた。
「あ、姉さん僕がやるよ」
「大丈夫だ」
すぐそこに置くだけだ。しかし、大地は膳を取り中へ持って行った。
気遣いのできる弟だ。
大地の後に部屋に入ると、彼は空中を見上げてポカンとしていた。
大地に視線で問いかけると、大地は肩をすくめた。
「あー、父さんのファンらしくて……。で、今気づいたんだって。父さんが『本多剋将』だって。――ファンなのに」
「っ、だ、だって、き、緊張してたし、『本多剋将』っていうよりも、本田さんのお父様っていう意識が強すぎて、気付かなかっただけで……う、ううううううぅぅぅっ、オレはファン失格だ~~~~っ!!」
我に返った彼は頭を抱えてうずくまってしまった。
どうやら彼は、相当お父様――本多剋将が好きらしい。
父様は時代劇俳優として有名だ。伝説の殺陣師として若いころ活躍していた。しかし、十六年もの前に引退した人のファンなんて、彼はもしかして……。
「時代劇……好き?」
「え?」
彼の前に座ると、顔を上げた。
「っ姉さん、そいつにそんな近づいちゃ――」
「す、好き……です……」
彼は何故か真っ赤になって答えた。
「ドラマといえば」
「時代劇」
「今一番行きたい場所は」
「京都時代劇撮影所」
「……瞬殺――」
「仕事人」
「暴れん坊――」
「商人」
「……旅と言えば――」
「ミント黄門」
「……」
「……」
ガシッ
「……何やってんの、二人とも」
同志と堅く手を握り合っているのだ。
どうやら彼も私と同じ時代劇好きのようだ。
私は前世で病院にいたころ、よく暇でテレビを見ていた。昼にやるドラマは再放送か、時代劇。私はよくわからない恋愛ごとよりも、勧善懲悪で芯のしっかりした時代劇のほうをよく見ていた。
あんなにかっこよく、まるで舞のように剣が閃き、己の信念を持って行動し悪を懲らしめ、時には広い心で受け入れる――。そんな時代劇が大好きになった。
転生して、こうして今動きまわり、憧れ以上のことを実現できているが、今まで友達がいなかったために、語りあう人がいなかった。
もっと語り合おうと身を乗り出したが、話す前に手が顔の前に突き出された。
「ストップ、姉さん」
大地は、彼の顔を押しのける形で割って入ってきた。
「大地」
「姉さん。話すのは食事が終わってからでいいんじゃないかな。ほら、冷めちゃうよ」
大地に言われ、膳に置かれたお粥を見た。
「そうか……」
「あ、も、もしよかったら一緒に食べませんか?そこで話なんか……」
……うむ。それもいいだろう。
それに彼は一人だ。彼をここに呼んだ者として一緒に食べるべきだろう。
「ちょっと、何を言って――――」
「そうだな。では私の膳を持ってくる。少し待っていろ」
「え?姉さん!?」
素早く立ち上がり部屋を出た私に、大地がついてきた。
「ぼ、僕も!」
大地も一緒に食べるようだ。
そういえば大地も時代劇が好きだったな。もっと小さいころは兄様も一緒に時代劇を見ていた。兄様は学校ですぐに一緒に見れなくなったが、大地はよく録画をしそれを一緒に見ている。
「(こんな嬉しそうな姉さん、初めて見た……)」
時代劇について語り合えると思って久々に浮かれていた私は、弟が洩らした言葉が聞こえていなかった。
・『瞬殺仕事人』……憎き人に仇を打ってくれと依頼すると、次の瞬間その人物が瞬殺される、正義の暗殺者集団の話。
・『暴れん坊商人』……色んな大名の屋敷に変装して侵入し、その悪事を暴いては商業を持ち込ませる、荷馬車で暴れる商人の話。
・『ミント黄門』……ミントの香りを漂わせたえらい人が、二人のお供を連れてミントに会う食材を探しながら諸国の美味しいものを食べ歩き、たまに見つけた悪事を成敗する老人のお話。
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