38 弟
間が空いてすみません。
週末で忘れた人のための前回までのあらすじ
不幸男が翼の家にやってきた。
翼の母めぐみに強制的に泊ることにされる。
お風呂に入る。
翼に裸を見られる(涙)
弟に変態扱いされる。
朝起きたら鬼がいた。
では、どうぞ!
武藤視点
ひ、ひぃぃぃ~~っ、本田さん、置いてかないで~~~~!
心の叫びもむなしく、本田さんは去ってしまった。伸ばした腕がむなしく宙を泳ぐ。
鬼を一人残して――――。
「ねぇ」
「は、はい!!」
油が切れたロボットのような音を立ててそちらを向くと、ニコニコ顔の鬼――――いや、彼女の弟がいた。
「あ、あの、あの!」
オレは素早く正座に座り直し、頭を畳に擦り付ける。
「武藤旭と言います。翼さんとはクラスメイトで、先日告白をさせていただきました!」
視界に移る指がピクリと動いた。
「(ひぃぃっ)……ま、まだ返事はもらっていないですが、どんな結果になろうとも、受け入れるつもりです」
と、本田さんのお父様(弟の父でもあるのか)に言ったようなことも言い直した。最後に、
「それと!昨日の夜はお風呂場で大変失礼しまいた!」
と言って言葉を切った。
沈黙が場を包む。
き、気まずい……。
「……あんたさぁ」
「はい!」
「馬鹿?」
グサッ
「あ、もしかして今の、父さんの前でも言った?うわっ、本当に馬鹿じゃないの?」
グサッ グサッ
「プロポーズじゃないんだから。そんな告白僕たちにされてもどうしたらいいか分からないし。むしろまだ返事ももらってないのにこんなことされて迷惑だし」
「うっ……」
こ、これはきつい。
めぐみさんにからかわれた時より傷が深い。
弟くん……可愛い顔してなかなか毒舌――――。
「あ゛ぁ゛?」
申し訳ありません。
勘も鋭いようです。
「……はぁ。で、いつまでそんな姿勢でいるつもり?」
「え?」
顔を上げると、呆れたような弟くんの顔。
「足、怪我してるんでしょ?正座して痛くないの?」
あ、そういえば……。
まぁ、正座くらいならそんなに痛くない。うまく体重移動しているし、負担は少ないはずだ。
……心配、してくれたんだろうか。
「あ、ありがとう。心配してくれて。えっと……」
「大地。本田大地。中学三年。十五歳。……それから、今度女とか、女顔とか言ったり思ったら捻りつぶすから」
な、何を――――とか思ってないです。はい。
「い、以後気を付けます」
大地くんはふん、と鼻で返事をし、着替えの着物を放ってよこした。
「……そういえば、オレが倒れたあと運んでくれたのは大地くん?」
「当たり前だろ。父さんの手を煩わせるわけにはいかないし……なにあんた、もしかして姉さんにやってもらいたかったんじゃ」
「あ、いや!いや、そんな願望なかったわけじゃないけど!流石にそれはないと思ったよ!」
疑いの眼差しで見られたが、本当にそう思っていない。
だって……だって……倒れる前にオレは……オレは……
裸を見られているのだ!しかも正面から!!
年頃の女の子に、好きな子に裸!○○○も見られたのだ!
思い出したことで四つん這いになって落ち込んでいるのを、大地くんは憐みを持って見下ろしていた。
うぅ。それも傷つく……。
本田さんの弟大地くんは、ずいぶんと裏表のある性格のようだ。
本田さんの前ではあんなにいい弟で、かわい……い、いえ!思ってません!思ってませんから!!
不幸男の一人称が一番書きやすい、今日此の頃。




