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37 従






 「大地?」


 「何?姉さん」


 母様似の優しい笑顔の弟の大地が、鬼の仮面をかぶっているのは何故だろう。


 「何で鬼?」


 「あぁ、これですか?」


 大地は鬼のお面を軽く振り、ちらりとチェリー……いや、武藤旭の方を見た。


 「姉さんの(図々しく家に泊まる)初めてのお客様なので、挨拶(警告)しようと思って」


 だからって、起きぬけに鬼のお面はやりすぎだろう。

 先ほどの悲鳴といい、今の青を通り越して白くなっている顔を見れば、鬼が相当怖いのかもしれない。


 「やりすぎ」


 「うん、そうだね。ごめんなさいお客様にっこり


 「(ひっ!)い、いえ!とんでもごじゃりません!!」


 笑顔で謝る大地に、正座をして首をふる彼。


 うんうん。大地も、よく謝れるようになった。小さいころは家族以外に頑として謝らなかったからな。弟の成長が見れて本当に嬉しい限りだ。


 ところで……


 「武藤旭」


 「はい!……え……」


 何故か目を見開いて私を見た彼は、次の瞬間真っ赤になった。


 もしかして、熱を出してしまったのだろうか。

 確認のために近寄り、額に手を当てる。


 「なっ!」


 「姉さん!?」


 大地が何か言いたそうだが、後で聞く。今は熱があるかどうかだ。


 「少し熱がある」


 「へ?あ……え?」


 うちに泊まってもらって、本当によかった。もしあのまま帰っていたら、彼は誰もいない家で一人熱に浮かされていたのだろう。

 熱だけでも、肺炎になり……取り返しのつかないことになるかもしれないのだ。

 病気を侮ってないけない。


 「大地」


 「な、何?」


 「着替えを手伝ってやってくれ」


 「え?」


 私は食べ物と薬と氷、それから足の包帯を変えを持ってこよう。


 額から手を放し、まず台所へ向かう。

 母様に何か食べやすいモノを作ってもらおう。









 「母様」


 台所へ行くと、母様が朝食の準備をしていた。

 ご飯の炊けた香りと、出汁からとっている味噌汁のいい香りで、食欲が湧いてくる。


 「あら、翼ちゃん。稽古はもういいの?」


 「終わった。それより、何か食べやすいモノを」


 「あ、やっぱり熱でちゃった?よかった、あのまま彼を帰さなくて」


 本当にそうだ、と頷くと、母様は大根を持ったままズイッと顔を近づけてきた。


 「ね、心配してるのは病気?それとも旭君?」


 「?」


 意味が分からない。熱を出しているのは彼だろうに……それ以外何か答えがあるのか?


 相変わらず、母様の言葉は難しい。


 「(脈なしか……)ま、いいわ。それじゃあ御粥作っちゃうから持って行って」


 その前に、と母様は私に大根を突きつけた。何やら、怒っている様子。


 「女の子が道着のまま男の子の前に出ちゃダメでしょ?お風呂入って、着替えてから運んでね」


 有無を言わせぬ様子に、私は頷く。


 母様の言葉は難しいが、従わないと後が怖いので、素直に従うことにしている。


 小さいころ、転ばずに動けるようになり、それが嬉しくていろんなところに行っていたら怒られたことがある。そのときはもう……。


 初めて笑顔が怖いと思った……。














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