4 転
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あれ?……意外と重圧が……。
まぁ、それより本日二話目。
明るい話です!
あのあと、泣き疲れては眠り、また起きて動けることに泣き、また疲れて眠り……繰り返した。
すると、泣き声を聞きつけたのか男の人が部屋の襖を開けて入ってきた。
その男性を見て、私はぴたりと泣き止んだ。
うわ~っ、侍!
道着に袴、手には木刀。長い黒髪を後ろで束ね、頬には傷痕。鋭い目は鷹を思わせた。
「またあなたが来たら泣き止んだ~っ。本当に翼ちゃんはパパが好きね~」
「パパはやめろ……」
拗ねたように美人さんが言うと、侍に私を渡した。
侍の腕の中に包まれた私は、道着の上からでもわかる筋肉質な硬さと少し汗の混じった匂いに安心し、そのまま眠ってしまった――――――。
そして、あっという間に月日は経ち、現在三歳になりました。
改めまして自己紹介。
私の名前は本田翼。
どうやら私、転生したようです。
※※※※※※※※※※
ちなみに、転生したことには今気づきました。
歩けると分かってからは、それはもう歩きまわりました。
部屋の中はもちろん、襖の隙間を抜けて廊下を歩きまわり、時には庭へも下り泥だらけになりながら歩き回った。
そのたびに美人さんが悲鳴を上げ、その悲鳴を聞きつけた侍が真剣持って駆け付けていたが……。
私が転生したことに気付いたのと同時に、美人さんが新しい母親で、侍が父親ということが分かりました。
自分のことながら、美人の母とかっこいい父からかわいい赤ちゃんが産まれたことに納得です。
明るい母に無愛想な父。しかし、二人ははた目から見てもラブラブです。
母が悲鳴を上げて駆け付けた父の顔はそれは恐ろしく、鬼のようでした。思わず固まって動けなくなってしまうくらい怖いです。
しかし、昼間にいつも駆け付けるが、仕事はいったい何をやっているのだろうか?
その答えはすぐに分かった。
ある日私は母に手を引かれ、おにぎりを大量に詰め込んだ箱を父へと差し入れました。
父がいた場所は広い板の間の道場で、そこでは、袴をはいた武士たちが木刀で稽古していた。
正確に言うと、父は殺陣道場の師範でした。
しかも、父は元俳優、しかも時代劇専門の俳優で若いながらも伝説の殺陣師と呼ばれていたらしい(母が三歳の子どもに出会いを自慢していたが、割愛)。なので、ときどき時代劇を演じる俳優が父に教えを乞いにやってきます。
私は稽古する人たちに見入った。
前世でテレビしか見るものがなかった私は、日中よく時代劇を見ていた。
華麗な剣捌きで悪をバッサバッサと切り倒し、人を救う。そんな彼らが好きだった(庶民にまぎれて悪事を暴く将軍も、お供をつれて旅するおじいさんも、雪の中を歩く浪士たちも、幕末の田舎侍の集まりも好きだ)。
(ちなみに、私が初めて話した言葉は、父を見て「あむあい!(さむらい)」だった。二人とも苦笑いだった。)
私の理想がここに!
気づいたら父の袴をぎゅっと握っていた。
「……なんだ」
「……」
「……やりたいのか」
「(コクン)」
「……ダメだ。まだ早い」
「(じー)」
「ダメだ……」
「(じー)」
「……」
「……だめ?」
コテンと首を傾げると、周りから「ヴッ……」という声がするも、必死にお願いする私には聞こえない。
「……」
「……」
「……」
「……」
このあと、しびれを切らした母により、五歳になったら剣道を習い、十歳で殺陣を習うことを許された。
この勝負、私の勝ち!!
父の腕の中で眠ったあと――――
「……(ぐいっ)」
「あら、この子また木刀握って離さなくなったわ」
「……(ぐいっ、ぐっ、ぐっ)」
「無駄よあなた。このこ剣関係は梃子でも話さないから。赤ん坊でこの握力……。将来あなたのあとを継げそうね」
「(ぐいっ、ぐいっ、ぐい~~~~っ!)くっ……」
「す~、す~、す~」