表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/49

34 服






 怪我人を待たせてはいけないのでシャワーだけですまし、急いで着替えた。


 客間に行くと、母様と彼の楽しそうに話す声が聞こえてきた。

 母様はいつも笑顔で人と接するから、みんな母様を好きになる。彼も、親しみをもってくれたようで、ほっとした。


 障子の前に座り、「失礼します」と声をかける。すると、「入れ」という父様の声が聞こえた。どうやら、父様も来ているらしい。


 障子を開けて中に入ると、胡坐をかいて座る父様と、隣に座る母様。そして、足を水の入った袋(氷じゃないのか?)で足を冷やしている彼と順に視線を巡らせる。


 彼は私と目が合うと、大きく目を見開き、次いで顔が赤くなった。熱がでたのだろうか。


 「えっ、ほ、ほほ、本田さん!?」


 「?」


 「えっと、そ、その、あ……に、似合ってるよ!」


 いったい何のことだろう。分からなくて首を傾げると、母様が「うふふふ」と笑った。


 「うふふ。旭君はね、翼ちゃんの着物姿が似合うよ、と言ってるのよ」


 「め、めぐみさん!?」



 着物?着物はいつも着ているのだが……。



 「学校では制服姿かジャージでしょ?」



 なるほど。私服が珍しいということか。


 そもそもこの家にいるときは洋服は着ない。出かける時以外は和服が基本だ。というか、小学校以来、洋服を着た事ないな……。


 「あ、あの、何で着物……」


 「この家ではね、基本着物なのよ」


 「そうなんですか……」


 彼はひどく関心したようだった。そんなに着物が珍しいのだろうか。


 「あ、そうだ旭君。今日泊まっていかない?」


 「「え?」」


 私と彼の声が重なった。いきなり何を言いだすのか。


 「めぐみ……」


 「だって、捻挫で歩けないでしょ?もう遅いし、病院もやってないし、明日から学校も休みだし、泊まっていけばいいじゃない」


 「え、でも……」


 「親御さんにも説明しておくから。電話番号教えて?」


 「あ、それは大丈夫です」


 「ん?」


 「オ……ボ、ボクの両親、今ボランティアで海外なので……」


 「あら、素敵!どんなボランティアを?」


 「カンボジアで学校に行けない子ども達に勉強を教えているんです」


 「まぁ!素敵なご両親なのね!」


 「い、いえ。あ、ありがとうございます」


 彼は照れて頭を掻いていたが、内心両親を褒められて嬉しそうだ。両親を尊敬し、誇りに思っているのだろう。



 私と同じだ。



 「あら?じゃぁ、家に帰っても一人なのね?」


 「(しまった!)あ、は、はい……」


 「じゃ、お泊り決定ね!」


 半ば強引のような気がしたが、母様の決定には逆らえない。父様も何も言わないので納得しているのだろう。

 それなら、私が反対する要素は何もない。


 「部屋はこのままこの客間を使ってね。待ってて。今お夕食の支度をしてくるから」


 母さんは鼻歌を歌いながら部屋から出て行った。父さんも母さんに続き、何も言わず出て行った。




 残されたのは、私と彼。


 「……」


 「……」


 「あ、あの、本当にいいのかな」


 「問題ない」


 「そ、そう?」


 彼はどこか居心地が悪そうだった。



 あぁ、そういえば……。


 「忘れていた……」


 「えっ!?」


 彼は調子はずれの声を上げた。急に声をかけて驚かせたか?そんな急でもなかった気がするのだが……。


 彼は真剣な表情で私を見ている。まるで、一言一句聞き漏らすまいとしているようだった。



 そんな彼に、私ははっきりと言葉を口にした。




 「風呂に入るといい《・・・・・・・・》」




 なぜか彼はパタリと畳に突っ伏した。










お風呂でバッタリを期待した方。残念。不幸男にはそんな幸運はめぐってきません。

当分……ね?


評価、感想、誤字脱字、よろしければお願いいたします。やる気でます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ